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第四章 第二話 ともだち

第二章 第五話の


「一週間後に控えた、一・二年合同演習での『選抜合同模擬戦』の~」を

「二週間後に控えた、一・二年合同演習での『選抜合同模擬戦』の~」に変更いたしました。


申し訳ございません。



「おっじゃましま~す……っと、お姉さまの隣とっぴー!」


 音葉が、勝手知ったるように予備の座布団を二つ押入れの中から取り出し、一つを静音へ、そしてもう一つをカオルの傍に置いて自分のモノとし、その上にチョコンと鎮座した。


 突然押しかけてきた二人の女子生徒により、室内の雰囲気は一変。

 落ち着いた空気の赤坂千早のプライベートルームは、かしましさ溢れる、本来あるべき中学生の女の子の部屋へと変貌するのだった。


「よう、二人とも。ツーか、お前等4人、結構つるんでるな……仲良いのか?」

「まぁそこそそこはね。元々同じ疎開先の中学にいたの」


 千早が、二人が持参したスナック菓子を開きつつ答える。


「へぇ。エリーとは小学校から、静音と音葉は現実世界の中学からの付き合いか」

「そうなのお姉さま。さらに付け加えると、私と静音は『おな小』からの付き合いだよ」

「そうなんだ。の割には仲良さそうには見えないな」


 少々茶化し気味にいうカオルの言葉に、


「そんなことないよ。時々こうしてみんな寄り合って、お茶したりしてるんだから」


 エリーが、ニコニコと嬉しそうに語るのだった。


『これはアレかな? 生徒に寂しい思いをさせないための配慮かな……あのババァの考えそうなこった』


 カオルは一人、「フフ」と笑みを見せる。

 それは学園長である向町京子の、昔と変わらぬ気遣いの精神に、小さな安堵感を覚えた「笑み」だった。


「そうそう、聞いたよ~鬼首ヶ原さん。なんでも千早のチームに入ったんだって?」


 一人だけクラスの違う稲垣静音が、どこからか仕入れた情報の真偽をカオル本人へと尋ねる。


「ああ。落ち着くならここがいいかな? と感じてさ」

「あ~あ、私もお姉さまと一緒のチームになりたかったなー」


 少しはにかんで答えるカオルに、音葉が残念無念を湛えた表情で言うのだった。


「音葉はちゃんとチーム持ってるでしょ? しかもあなた、チームリーダーなんだから」

「うぇ~い。ったく、千早は小言ばっかりだなー。ってゆーか、リーダーなんかになるんじゃなかったよ……とほほ」


 チーム「トゥインクルスターズ」のリーダーを務める郡山音葉。

 こちらの世界に来て、新たに仲良くなった4人とチームを結成し、「はいは~い! 私、リーダーやりたーい」と、自ら志願して就いた地位である。

 「まぁいいんじゃない?」と、そんなノリで決まったあたり、チームメイトにも、当の音葉にも、「リーダー選び」に確たる信念があった訳ではない様子だった。


 だが、そんな少々頼りないリーダーを盛り立てるべく、周囲がベストを尽くすというスタイルが功を奏し、彼女等トゥインクルスターズは学年でも結構注目される位置にいる。


「でもさ、お姉さま。カーリーと戦って、勝つ自信はあるのは分かるけど……あの子をお姉さま達のチームに入れるのは至難の業だと思うよ?」

「え、何!? 千早、()()カーリーをチームに誘うの?」


 寝耳に水とばかりに、静音が驚きの声を上げる。


「うんまぁ、鬼首ヶ原さんが入れる自信があるって言うから……」


 千早が、カオルをチラリと見やり答えた。


「ああ。アイツの入隊で、ウチは一気に戦闘力が跳ね上がるぜ?」

「跳ね上がる……ってのはまぁ分かるけど、問題はあの子が――カーリーがソレを承諾するかどうかよ」


 「それは無理」とばかりに、音葉もうんうんと頷いた。


「だいたいさー、あの子。こないだのフリーバトルのとき、またあたしたちの獲物を横取りしようとしたんだよ」


 「ぷりぷり」という擬音が良く似合うほど、コミカルな怒りを表現する音葉。

 と、そんな彼女に、カオルは優しく諭すように言うのだった。


「あの時、カーリーが毒サンタを急襲していなければ、お前達どうしていた?」

「え? そんなの決まってるよ。戦って勝ぁーつ! 以上」


 予想通りのお気楽な答えだった事に、カオルは小さな吐息を零した。


「じゃあ、ヤツの――毒サンタの攻撃の特徴を知ってるか?」

「えーっと……実はよくしんないのでした。てへへ」

「音葉。索敵者が居て、なんでヤツの特徴を調べさせない? ヤツは毒霧を広範囲に散布するタイプで、あのままダラダラと戦ってたら、お前等敵が放つ毒の餌食になってたんだぞ」

「そ、それは……愛と勇気で切り抜けるよ、うん!」

「……あのなぁ。カーリーは、そんなお前の戦いぶりを熟知しているからこそ、あえてお前達に気が向いている毒サンタの隙を突いて急襲したんだ」

「えーと……どういうこと?」

「ふーん。つまり、カーリーは味方を気遣いつつも、憎まれ役を買って出てたって訳?」

「ああ。ASPを要らないと言ったのがその証拠だ」

「で、でも……でもだよ、お姉さま! それならそうと、最初ッからそう言えばいいじゃない――」


「恥ずかしいんだよ。だから言えなかったんだよ」


 エリーが、音葉の疑問に小さく答えた。


「は、恥ずかしい?」

「たぶん、人にはいろいろあるから……対人関係で、思った事を面と向かって言えない人や、素直になれない人。いろいろいると思うんだ」


 エリオット・ヴァルゴの言葉には、重さがあった。

 そこには、自分自身がそうだから……という同種の人間だから分かる「何か」が見え隠れしているように、カオルには感じ取れた。


「ふぅん。だからこそ、鬼首ヶ原さんは『カーリーは誘えば来てくれる』と思ってる訳ね」

「まぁな。と、あとヤツの逃げ口として、『負けた方が何でも言う事を聞く』という条件をつけたんだ」

「逃げ口? それはどういう事」

「そう条件付ければ、『約束だから』というテレ隠しも出来るだろ?」

「そっか。かおりんあったま良いー!」

「ただ漠然と言う事を聞けという条件を出したワケじゃなかったのね」

「まぁ、一応」

「お姉さまってやっぱすごいよ! そこまでいろいろと考えてるんだね」

「ふふん。私の凄さが分かったか?」


 わざとらしいドヤ顔で、音葉へと返すカオル。

 だが、心の内では――


『そう簡単にいかないのは分かってるけどな』


 と、先ほどから送られてきている、千早の「それで本当に大丈夫なの?」という視線に返答していたのだった。


 

最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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