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第九章 第十二話 実技テスト・個人編 10

 その後。

 ヴィクトリア・ボルクシュタインとカーリー――パールバティ・牧坂がテストを受ける。


『敵確認。マルコ、転・戦闘特化式魔法少女形態』

『イエス、マイマスター』


 ヴィクトリアが、敵の目視を告げると同時に、お供の使い魔――燕尾服を着た狐の「マルコ」へと変身を指示。


 ヴィクトリアは、ダイアナ率いるホーリー・ワルキューレの防御(B-)を担当。シンボルカラーはライトグリーンだ。

 そんな彼女が得意とするのは、仲間単体チームメイトへと施法せほうする、防御系魔法のの「守備強化ディフェンス・アップ」。

 そして、己自身の体に掛ける強力なシールド魔法・聖なる守人ホーリー・ガーディアンがある。


 これにより、一定の時間自らの防御力を最大限まで高め、少々無茶な戦いを繰り広げる事が可能となるのだ。


 しかしながら。


「防御にステ振り全部回した結果、攻撃が弱いのか」


 感じたままを、カオルは一人零した。


「うん。ヴィクトリアって、悪魔獣を一体倒すのに手間が掛かるのよね」


 と、千早がカオルの零した言葉に答えた。

 そう。彼女の攻撃は、手にする小剣ダガーから射出される基本攻撃魔法のみ。

 これでは、敵を倒すのに少々時間がかかってしまう。

 故に、彼女は個人戦闘のテストでB-という成績に甘んじて来た。


 その間カーリーとシヴァが、難なく火球のベストショットを決め、テスト終了を果たす。

 誰もが、「ヴィクトリアさんが悪魔獣を倒すまでトイレタイム」と席を立とうとしたその時――


『マルコ、ホーリー・ガーディアンを翡翠小剣ジェイド・ダガーへ! 守護者の一撃ガーディアン・アタック発動』

『イエス・マイマスター』


 途端!

 彼女の右手に握られていたダガーの刀身が、一気に数倍へと変化。

 いや、刀身が伸びたのではなく、


「あれって……己の身を守っていた魔法の一部を刃へと送り――刀身へと変えやがった!」


 驚きの攻撃方法に、カオルが興奮気味で語る。

 そして、初めて見るヴィクトリアの攻撃手法に、生徒達も息を飲み、見入るだけとなっていた。


「防御魔法なのに……あんな使い方、アリ?」


 千早にそう呟かせる程、ヴィクトリアは、敵・悪魔獣を見事な一刀両断で仕留めたのだった。


(なるほどな。防御魔法の硬質さを鋼に見立てて、切れ味鋭い刃に変化させたって事か)


 カオルは一人、心の中で納得する。

 けれどその納得も、新たな疑問を生み出す土壌にしかならなかった。


(14歳の少女が、そんな戦い方思いつくか? フツー)


 カオルにとって納得がいかない、新たな謎。

 不安に思い悩むカオルを、ふと平常な気持ちに誘ったのは――アヤちゃんのすこぶる機嫌の良さそうな言葉だった。


「はい、そこまで! 二人ともお疲れさま」


 一つ大きく頷き、綾乃先生は二人の実技テストの終了を告げた。

 それはやはり、ヴィクトリアの「秘めた技」の披露に、些か興奮を隠せないでいるのだろう。


『『ありがとうございました』』


 モニターの中で礼を見せる二人。

 が、カーリーは一瞬、頭にハテナを浮かべたような表情を作る。


 それもそのハズ。いつもなら、暫く待たされる事になる相手だ。

 それが今回、ほぼ同時に終了となるとは……些か驚きがあって当然だろう。


 けれど――その驚きの意味は、他の生徒が抱くソレとは、意味が違っている。


「鬼首ヶ原、何があった?」


 テストを終え、仲間たちの元へと歩み寄るカーリーが、開口一番カオルに尋ねた。


「ヴィクトリア、か?」

「そう、ヤツの戦いは守備重視。それ故、敵を倒すのに手間が掛かる筈」

「その守備魔法を、攻撃技に転換しやがった」

「……へぇ」


 カーリーの、元々目つきの悪い視線が、ギッと睨むようにヴィクトリアを捉える。


「手の内を見せる必要性にかられた、という訳か」

「それってどういう意味だ? カーリー」

「今までの戦いでも、十分だったバトルスタイル。が、誰かさんの参入で、路線変更を強いられた……かな?」

「……誰かさん?」


 カオルを見やり、カーリーは続けた。


「お前の事だ、鬼首ヶ原。さっきのワルキューレチームの二人の闘い振りは、お前を意識したものだった……」

「あ、ああ。けど、それなら音葉も、だろ?」

「確かに。そこが解せない……けど、お前が学園ここに来て以降、あいつらは変わった。お前の影響が何かしらあった、というのは間違いない」

「路線変更って事か。だが何のため?」

「わかんない。けど、これで確信が持てた……やはりダイアナ達は信用できない……やはり敵……いや、なんでもない」


 信用できない。それ以上の言葉を言いかけて、喉元に留めおくカーリー。

 その事から、カオルはカーリーの心の中に、ダイアナ達への不信感――いや、それ以上の敵愾心を抱いていると感じたのだった。


(敵ってなんだよ。敵は悪魔獣だろ?)


 カオルはこれまで、そいつはカーリーがダイアナに抱く「ライバル視」の類だろうと感じていた。

 が、どうやら今回の件で、「敵」として警戒するレベルの域に達していると感じるに至る。


「やれやれ。このクラス……そしてこの学園。本当に前途多難だな」


 カオルはため息交じりに零す。

 だが、この時はまだ軽い気持ち――そう。危機感の無い、ただのおふざけの一言でしかなかった。


 後に、カオルはこの時の言葉を、苦々しく思い返す事となる。


最後まで目を通していただき、誠にありがとうございました!


もうちょい先になりますが……私的に一息つきましたら、最初から見直し作業を行います。

その際はどうかよろしくお願い申し上げます。

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