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王子さまと委員長   作者: 塚原 蒔絵
3/15

Side ―委員長―



 最初はかっこいいなぁって、遠くから眺めてそう思えた人だった。

 木島 蓮くん。

 身長は高くて、スタイルもよくて、女の子の中では少し有名な人。

 きちんと話をしたのは、木島くんが空から降ってきたとき。



「アイ・キャン・フライ!」

「飛べるだろうけどヤバイって、下に人が――」

 嬉しそうな声と、あせった声が両方聞こえて、見上げると誰かがこちらに落ちてきているのが見えた。

 それは見間違いじゃなくて、落ちてきているのは木島くんで、あのときは木島くんの背中には翼があるんじゃないかって、本気で考えた。

 だって翼があったら空も飛べるから。

 近くで顔を見て、声を聞いて、息がとまるかと……や、あのときは息とまってたよ、うん。

 で、わたしのメガネが壊れて、直せそうにないほどに壊れて、怒り狂った亜子ちゃんのこともあり、木島くんがわたしを家まで送ってくれることになった。

 初対面の人に送ってもらうことに申し訳ない気持ちでいっぱいで、自転車もこぎにくそうにしてる。

「木島くん、わたし、降りるよ」

 坂道だし、降りればこぎやすくなるはず。

 でも木島くんはペダルを踏むだけで、とまる気配をみせない。

「乗ってろ、大丈夫!」

「重いから」

「重く、ない!」

「でも、しんどそうだし、汗だって」

 わたしが重いからしんどいんだ。

 昔、男の子にデブ! って言われたことあるし。

 だから――

「委員長!」

「はっ、はい!」

「しっかり捕まって。下るぞ」

 嬉しそうな声が耳に届いて、風が頬に当たる。

 上り坂が終わったんだ。

 下り坂をタイヤが回る音が聞こえる。

 太陽が暖かくて、周囲のざわめきが新鮮で、目の前に木島くんがいるのが信じられなくて、自転車を降りるなって言ってくれたことがとても、嬉しかった。

 ジョンが壊れていてよかったと思う。

 だってもしきちんと見えてたら、逃げ出してたよ。


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