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異常と正常の境界  作者: Rile
第1章 入学編
26/44

第26話 エピローグ

これで第1章は終了です。

「結局、2人だけで片付けちまったんだな……」

 任務終了後玲は誠司に連絡し隔離しておいたみんなを開放してもらった。

 今は警察が現場検証をしているところであるが、現場から俺達に繋がる証拠が出てくる事は無いだろう。万が一出てきたとしても握りつぶされる事だろうが……

 「元々俺達だけで片付ける予定だったのであまり感心されても困りますが……」

 事件が解決した後、俺達4人は屋上で後片付けが済むまで待機しているところであった。事後処理が終わらない限り俺達が解放される事はない。

 別に目立つ所でなければどこでもよかったのだが誠司のタバコを吸いたいという要望もあり屋上で待機する事となった。

 「それにしても全員殺しちゃって良かった訳? 少なくとも一人は残して情報聞き出すべきだと思ったんだが……」

 八代の言う通りなのだが今更言っても後の祭りである。

 「別に問題ないよ。今回に任務についてはかなりの情報があったから敵を捕虜にしてまで聞き出したい情報は無かったんだよ。

 だから今回の任務を君達の試験にさせてもらったんだけどね……」

 達樹によれば今回の任務はほとんど出来レースみたいな物だったらしい。

 「それはそうとして2人共事後処理は任せたよ。」

 「「はい?」」

 達樹の言葉に玲と八代は揃って疑問の声を上げた。

 「まぁ、仕方ないわな……あの子達からしてみれば2人だけでスタコラサッサと逃げた様にしか見えんかったからな。

 かなり恨まれてるぞ。」

 2人は誠司の説明でようやく理解した。

 要はちゃんと謝っとけ、という事だろう。

 「了解……ちゃんと謝っときます。」

 気が進まないが自業自得として諦めるしかないだろう。


   * * * * * * * * * * * * * * *


 「ごめんなさい!!」

 八代は寮の自室にて莉々に謝っていた。

 すでに真琴と恵美の地学部コンビには謝罪済みだったので八代の残りの担当は莉々だけだった。

 ミキと玲奈を担当する玲には合掌するしかない。

 正直どんな文句を言われるか分かったものではない。

 とにかく莉々への謝罪が終われば今度こそ任務達成(ミッションコンプリート)である。

 「まぁ、八代にも事情があっただろうからあまり怒ってないけど……」

 と言いつつも彼女の後ろから炎が見えているのだが幻覚だと信じたい……まぁ、最近忙しかったし幻覚ぐらい見るよね?

 「その代わり今度のゴールデンウィーク、友達の前で彼氏のフリをしてもらいます。」

 「うそ……」

 予想外の提案に八代は絶句してしまった。

 (俺達が並んで歩いても兄妹に思われるのが関の山なのでは……?)

 少なくとも恋人同士には絶対見えないが友達の前だけでいいならそれもありだろう。

 八代としてはすぐに済む物欲的な要求の方が良かったのだがここで断ってしまっても後味が悪い。

 「分かりました……」

 色々考えた末、莉々の要求を全面的に受け入れる事にした。

 「じゃあ、詳しい予定はまた後でね!」

 そう言うと莉々は上機嫌で部屋を出ていった。

 おそらく食堂に行くのだろうが今の気分では行く気になれなかった。

 しかもよくよく考えれば玲が考案した作戦の結果こうして自分が謝っているのはどうしても納得いかなかった。

 (自分で考えたなら自分で責任とれっての……)

 八代はそのままベッドに横になる。

 少なくとも今は寝る事で現実逃避する事にしたのだった。


   * * * * * * * * * * * * * * *


 「なんであの時逃げたんだよ!!」

 「あの後あたし達がどれだけ苦労したか分かってる?」

 玲も寮の自室にてミキと玲奈の文句を聞いていた。

 「逃げたのは助けを呼びに行くため。苦労はしたのは自業自得だ。」

 本来なら謝るべき所なのだろうが玲はそんな事せずに悪びれる事なく2人に言い返した。

 「そもそも、素人の俺達がテロリストを捕まえようなんて無茶なんだよ。

 変な義侠心を出さずにそのまま逃げてればこんな事にはならなかったんだから俺に文句を言われても困る。」

 「う~~ん……」

 「ぐぐぐ……」

 玲が言った事は正論なのだがミキと玲奈は腑に落ちないようだった。

 「だが確かにみんなが捕まる中で逃げた事に関しては俺にもいくらかの責任はあるだろう……すまなかった。」

 いきなりの玲の謝罪に2人は面食らっていた。

 「いや、別に……悪いと思っているならそれでいいよ。」

 「そうだね……あたし達にも悪い所はあったんだしそれでおあいこだよ。」

 玲の予想通り2人はこれ以上追及して来なかった。

 八代みたいにストレートに謝ったりする愚直さを玲は持ち合わせていない。

 今回のように先に相手を責めてから謝罪を口にすれば相手もそれ以上責めにくい。

 「お詫びと言っては変だが今日の晩御飯くらいはおごるよ。」

 相手に指定される前に自分からお詫びを決める。

 これによって玲は特に責められる事もなくミキと玲奈を言いくるめた。

 正直2食分おごるだけで解決するなら安いものだ。

 これでミキと玲奈への謝罪は済んだ。

 後一人だけ謝罪ではないが話をしておかなければならない相手いるのだがそれは明日でもいいだろう。


   * * * * * * * * * * * * * * *


 八代と玲は指定されたホテルの一室にて相手を待っていた。

 「そろそろ来るんじゃねぇか?」

 備え付けのベッドに横になりながら八代は相手の登場を待っていた。

 「そうだな。時間的に考えてそろそろだろう。」

 そういう玲は椅子に座って小難しそうな本を読んでいた。(現在では電子書籍がメインなので紙媒体の書籍を読む玲はかなりの少数派である。)

 2人がそんなやり取りをしている内に部屋のドアが開き2人を呼び出した張本人が入ってきた。

 「10分前に来たつもりだったがまさか先に来ていたとはな……」

 2人を呼び出した張本人、乱胴涼子は先に来ていた2人を見て多少の驚きを感じているようだった。

 「事件のせいで終日休みでヒマだったんだよ。

 それで話ってのは?」

 大体の予想はできているが一応マナーとして聞いておく。

 「お前達の所属についてだ。

 内閣府特殊案件交渉室……私もかつてスカウトされたがなぜお前達がそんな組織に所属している?」

 「それを知ってどうするつもりですか?

 とても脅しに使えるような内容ではないと思うのですが……」

 もし交渉室の事で脅そうというのであればとても幼稚な考えとしか思えない。

 そんな事をしようものなら社会的に抹殺されるのが関の山である。

 「そんなつもりは無い。ただお前達の担任としてお前達を守る義務がある!」

 彼女からすれば決意の表れなのかもしれないが逆に俺達からすれば余計なお世話でしかない。

 「そっちには義務があるかもしんねーけど俺達はそんな事望んじゃいない。少なくとも俺はただ守られるのが嫌だから強さを求めた! 義務だろうが何だろうが勝手にすんじゃねぇ!!」

 いつになく八代が語気を荒げているがこのままではいらぬ方向へ話が逸れてしまいかねない。

 「そこまでにしとけ、八代。

 乱胴先生……俺達は守られなければならない程弱くありませんよ。 もし弱ければ交渉室にスカウトされる訳が無い。

 もしこれから交渉室の邪魔をすると言うのならここで物言わぬ(むくろ)になりますか?」

 軽い脅しも込めておいたが彼女が怯んだ様子はなかった。 それどころかどこか安心した様子だった。

 「自分で選んだ道ならば何も言わない。

 それよりも聞きたい事がある……私の兄である乱胴雅次について何か知っている事はないか?」

 なるほど。 それが聞きたかった訳か……

 「乱胴雅次は俺達が捕まえたよ。 たぶんもう処刑されてるだろうな……

 それを聞いてどうする?」

 正確な事は分からないが希望を持たせるような事は言いたくなかった。

 「なら、いい……兄がテロリストになってから私は象術警官の職を辞した。

 私自身責任を感じていたし、啓莱高校の教師をしている事だって心苦しいくらいだ。

 だからお前達がおかしな事に巻き込まれているなら助けてやりたいと思っていたが杞憂だったようだな。」

 俺達が兄のように間違った道へ行って欲しくなかったという訳か……

 「少なくとも俺達は神楽流に入門した時点で助けられる資格なんか無くなってるんだけどな。」

 「そうだな……司法取引で恩赦を受けたとはいえその事については言い訳するつもりは無い。」

 交渉室の事を知られてしまった以上神楽流の事も話しておいた方が納得してもらいやすいだろう。

 「だからスカウトされた訳か……分かった。 これからできるだけお前達に協力しよう。

 お前達の仕事に協力はできないが教師が味方というのは何かと便利だぞ。」

 「それは願ってもない。 ぜひお願いします。」

 事情を知る協力者がいるというのはありがたい存在であるため断る理由は無い。

 「私が言いたいのはそれだけだ。

 それじゃ私はこれで失礼する。」

 そう言って彼女は部屋を出て行ってしまった。

 案外マイペースな人なんだな……

 「そんで玲、これからどうするんだ?」

 ベッドに横になったまま八代が聞いてくるが答えは決まっている。

 「決まってる……指令があるまで自由行動だ。」

 隣のベッドに倒れこみながらそう言っておく。

 「なぁ、玲。 俺達の戦いにゴールなんてあるのかな……」

 「ねぇよ……あるのは負けてリタイアか、途中で止めてドロップアウトのどちらかだ。 どんなに強くてもその運命からは逃げられない。」

 逃げられない運命だからこそ目を逸らさずに真正面から挑んでいく。

 「なら勝負だ。

 どちらが運命に挑み続けられるかの……な。」

 「いいぜ。 八代が相手でも負けやしないよ。」

 八代と玲は互いの顔を見て笑い合った。


  <<第1章 完>>

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