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異常と正常の境界  作者: Rile
序章 受験編
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第10話 エピローグ

やっと序章完結。

次からはやっと学園が登場します。


 「まさか全員殺してるなんて思わなかったわ」

 「「…………」」

 八代と玲がテロリスト達を全員殺してしまった事で碧はご立腹であった。2人も悪いと思っているためか反論できないでいる。

 「だれが始末書を書くと思ってるのかしら」

 碧の機嫌は一向に直りそうにない。

 実際、協力者である八代と玲がテロリストを殺したとしても後始末は協力を依頼した碧が全て行わなければならない。殺した相手がテロリストだからまだ何とかなるのかもしれないが、面倒な事に変わりは無かった。

 「話は変わりますが、乱胴ってこれからどうなるんです?」

 あからさまな話題を変えようとする玲ではあったが、玲にとってもこれから乱胴がどうなるのかは興味があった。

 「今は麻酔でぐっすり眠っているけど、収容施設に着いたらたくさんの象術士に囲まれての尋問が行われるでしょうね。それで聞く事聞いたらすぐに処刑されるわ」

 「まぁ、それが妥当だろうな」

 「政府も酷い事するねぇ……」

 確かに尋問して処刑。聞けばかなり酷いように思えるが仕方ないともいえる。

 象術士を封じる手段は象術士を使ってダークエネルギーやダークマターを制御しないといけない。簡単に言うなれば「目には目を、象術には象術を」という訳である。

 乱胴を封じるには乱胴の象術をさらに上回る象術で押さえつけなければならない。そうなればかなりの人数の象術士を揃えなければならない。

 尋問ならば可能かもしれないが、実際に刑務所で服役させるには四六時中多くの象術士に見張らせないといけない。そんな事をすれば莫大な人件費がかかるのでそれならばさっさと殺してしまおう、というのが政府の考え方なのだろう。

 (いくら酷いといってもそれが一番効率的なのには変わりないからなぁ……)

 多くの人の安全を確保するためには多少の犠牲はやむを得ない。

 乱胴の処遇はまさにこの理念に沿ったものであった。

 「で、俺達はこれからどうなるんだ?」

 乱胴の事に話題が向いていたが現在八代と玲は警察の取調室、言うまでもなく2人は初めて碧と会った場所にいた。

 「俺達を拘束する理由はもう無いんじゃないんですか?

 それとも他に何か理由があるんですか?」

 「もちろんあるわよ。そうじゃなきゃ私もとっくに東京に帰ってるわよ」

 (どうやら嫌な予感的中か……)

 玲には碧の考えがある程度見えていた。

 「2人には内閣府特殊案件交渉室に来てもらうわ。

 簡単に言うとスカウトね」

 「いやだ!」

 「いいですよ」

 2人共即答ではあったのだがその内容は見事に分かれていた。

 「なんでだよ玲!?」

 否定した八代と肯定した玲。八代には玲の考えが全く理解できない。

 (組織とか集団が苦手な玲がなんでOKしたんだ?)

 「納得いかないって感じだな八代。

 お前も知っての通り俺は組織や集団が苦手だ。でもそれに頼ってでも成したい事がある。

 今回の申し出は俺にとってもありがたいものだった。だから俺はこのスカウトを受けるよ」

 どうやら玲の心は決まっているらしい。

 (別にこの先ずっと玲と一緒にいる訳じゃないしここらで袂を分かつっていうのもアリなのかもな……)

 7歳の頃から同じ施設の同じ部屋で一緒に暮らしてきた。

 一緒に神楽流で学んだ。

 (ここまで一緒なら先に進むのも一緒の方がいいか……)

 「了解だ。俺もそこに行く」

 とうとう八代も折れた。

 「ありがとう!交渉室ってまだ人手不足だから助かるわ~

 さっそくだけどいろいろな手続きや訓練があるから東京に来てもらうわ」

 「えっ……!?」

 東京に来てもらう。つまりは施設を離れないといけないという事である。

 「弥生さんをどうやって誤魔化そう……」

 「大丈夫よ!啓莱高校の受験のための身体検査とかで適当に誤魔化しとくわ」

 啓莱高校も国の機関の一つである。内閣府の所属である碧にとっては啓莱高校に口裏を合わせてもらう事くらいは簡単だった。

 「じゃあ、お願いします」

 玲としても碧に任せるしかなかった。

 「任されたわ。

 訓練だけじゃなくて啓莱高校の今年の試験問題を見せてあげる事も出来るわよ?」

 「「お願いします!!」」

 見事に2人の声がハモッた。


   * * * * * * * * * * * * * * *


 2カ月後……

 「結局受験生らしい事あんましなかったな……」

 「でもおもしろい経験をさせてもらったけどな……」

 事件が解決してから2カ月もの間、2人は内閣府特殊案件交渉室のメンバーとして訓練漬けの日々を送っていた。

 訓練自体は1カ月ほどで済み、残りの1カ月は実際に交渉室の仕事をする羽目になってしまった。

 (そもそも体術や銃火器の扱いなんて神楽流で飽きるほどやったからな……)

 本来は半年の訓練プログラムなのだがその中には神楽流で学んでいた事も含まれており、学んでいない事だけを訓練するだけであったのだがそれも1カ月で終わった。

 そのせいで計画を前倒しにして事件の捜査や海外での調査任務などをこなしていた。

 おかげで受験前日まで啓莱高校の事を忘れていた。

 (まぁ、試験問題自体はそんなに難しくなかったし、受験者のレベルもそんなに高くなかった……)

 そこで玲は碧に言われた事を思い出していた。

 「啓莱高校受かるかどうかっていうレベルの子をスカウトする訳がないでしょう?

 あなた達をスカウトしたのはあなた達の象術のレベルがこの国でもトップクラスだったからよ。

 啓莱高校なんてどうとでもなるわ。」

 言われてみればその通りなのだが実際にこの目で確認しなければ信じる事が出来なかった。

 (俺達の知ってる象術士なんて神楽流の人達くらいなものか……)

 無論神楽流に自分達と同世代の奴はいなかった。

 「玲!はやく合格発表見に行くぞ!」

 「オーケー。今行く」



 「おーし!俺は合格だぜ。玲は?」

 「右に同じだ」

 結果から言うと2人は啓莱高校に合格した。

 周りの受験者のレベルを見て力をセーブしたのだが不合格になるような失敗はしなかった。

 あちこちから歓声が湧きおこる。自分の受験番号を見つけて喜びを爆発させている者もいる。

 「そろそろ行くぞ八代。

 合格の確認は済んだんだ。これ以上ここにいても意味ないぞ」

 「分かった今行く……」

 そう言って2人は啓莱高校を後にした。

 「これからは高校生と内閣府特殊案件交渉室の職員。この二つを同時にやっていかないといけないんだからな。ハードになるぞ」

 「望むところだ。俺達ならなんとかなるでしょ!」

 「何とかしてもらわないとこっちが困るわ。あなた達はもうこの国の戦力なんだから存分に働いてもらうわよ」

 校門の前で待っていたのは現在は同僚となった河崎碧であった。

 「何でこんな所にいるんですか?」

 「あなた達の受験結果が気になって仕方がなかったから、じゃダメかしら?」

 そう言って碧は小首を傾げてみせる。

 「ダメだな・・・かわいいと思えない」

 「賛成だ。その歳でしても魅力に欠ける」

 「あーーー!!せっかく可愛くアピールしてるのにもっと反応してよ!」

 (はた)から見れば彼等も合格の喜びに浸っている受験生にしか見えない。

 「とにかくはやく行くわよ!」

 「行くってどこに?」

 確か2人共今日は仕事の予定は無い。

 「行くってもちろん合格祝いによ♪2人共合格したんでしょ?」

 彼女にとっては2人の合格は確定事項だったらしい。

 「もしかして裏取引とかした?」

 こうも当たり前に確信されていると自分達の合格が実力ではないのでは?と疑ってしまう。

 無論そんな事ないとは思うのだが疑い出せばきりがない。

 「そんな事しなくても2人共合格するに決まってるじゃない。

 そんな不要な裏取引なんてするだけ無駄でしょ。

 それよりも合格祝いにいきましょ♪」

 「「了解!」」

 どうせこれから忙しくなるのだ。ならば今くらいゆっくりしても罰は当たらない。

 「そう言えば忘れてた」

 「何をだ?」

 八代は何かを思い出したかのようだったが玲には特に思い当たる節は無い。

 「これから3年間よろしく!」

 「こちらこそ」

 今更ながらなあいさつだがお互い悪い気はしなかった。


   <<序章 完>>

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