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異常と正常の境界  作者: Rile
序章 受験編
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第1話 受験始めます

 「あ~、極楽、極楽~」

 温泉にでも入っていなければ、聞かれないセリフだが、声の主は温泉に入っている訳ではなく、どこかの学校の制服を着てただ日向ぼっこをしているだけの少年だった。

 「八代(やしろ)うるさい……見つかるぞ」

 「大丈夫だって!(れい)。受験前に俺達のような問題児を探す暇人なんている訳ないだろ!」

 日向ぼっこをしている少年――八代は声のボリュームを落とすことなく少し離れた所で読書をしている少年――玲に応えた。

 「読書の邪魔だ。」

 「玲の読書はもう趣味じゃなくて仕事じゃないのか?そんなに頭使ってるとあっという間にハゲ……うぉ!?」

 言い終わる前に八代の上から水が降ってきた。

 「こんな事に象術(しょうじゅつ)使うんじゃねえ!」

 紙一重で水をよけた八代は水を降らせた張本人、玲に向けて叫んだ。



   象術(しょうじゅつ)


 かつては観測すらままならなかったダークエネルギーとダークマターを媒体として発動させる、大昔から魔法や超能力などと呼ばれていたもので、ダークエネルギーを熱や光に変換したり、ダークマターを鉄に変換したりするもので、現在でもそのメカニズムの解析が進められている。



 「水無月(みなづき)!うるさいぞ!」

 教室の窓から顔を出し、怒鳴っているのは、去年まで2人の担任で、現在は1年生のクラスの担任をしている権藤晃(ごんどうあきら)だった。

 「ほら見つかった~」

 してやったりといった感じ玲だったが、

 「久桐(ひさきり)!お前もだ!」

 どうやら玲の声も聞こえていたらしい。

 「「すいませ~ん!」」

 聞きなれた怒鳴り声に2人は慣れた様子で応えた。



 「あの2人は誰なんですか?」

 授業に戻った権藤先生への最初の質問は授業とは全く関係ないのもだった。

 「あの2人は去年まで担任をしていたクラスの問題児だ。」

 「ほんとにそれだけですか?」

 権藤の答えでは納得しなかった生徒達のさらなる質問に彼はさらに付け加えた。

 「あの2人、水無月八代と久桐玲は象術士だ。」

 象術士、という単語に生徒達の中からどよめきが起こった。

 「じゃあ、この学校に象術士がいるっていう噂は本当だったんだ!」

 生徒達の中には授業そっちのけで話している者もいた。



 「これで明日からまた騒がしくなるね~」

 楽しそうに言った水無月八代に対し、

 「これからは屋上にも行けなくなったな……」

 久桐玲は面倒臭そうに言った。

 象術士とは文字通り象術を扱う者の事で、現在その数は極めて少ない。そもそも象術の才能は遺伝性のものであり、訓練により開花するものではない。 たとえ身内に象術士がいなくても象術の才能を持った子供が生まれることも、両親共に象術士であっても象術の才能が無い子供が生まれるといった事も珍しくない。その上、象術のメカニズムは未だ解明されておらず、ほぼ独学で象術を学んでいかなければならない。

 才能と努力。この2つを持ってして初めて象術士が誕生するのである。したがって、象術士とは騒がれるには十分な条件なのである。

 「そろそろ飯にするか?」

 いまだに楽しそうな八代に、

 「いや、今日はもう帰る」

 そう言って読んでいた本を鞄にしまった玲は、

 「そういえば八代はどこの高校受験するんだ?」

 強引な話題のすり替えではあったが八代は気にする事もなく、

 「なにいってんだ?玲。象術士が行く高校なんて決まってるだろ!」

 そう言い切った。

 「…………」

 玲は何も言えなかった。

 確かにこの国には象術士育成のための高校が一カ所だけある。しかし、当然試験もあれば、不合格の可能性のある。そんな簡単に行ける高校ではない。

 「合格できると思っているのか?」

 玲は真っ先に思いついた質問をぶつけてみた。

 「俺は文系ダメだからそこしか行けそうにない」

 至極納得のいく解答だった。八代はとにかく文系、特に国語の成績が酷い。小学校高学年で習うであろう漢字にさえ悩んでしまうレベルだ。万が一普通科高校に合格できたとしても卒業できる見込みは無い。そう考えれば、八代の選択は正しい、といえる。

 「そうか。応援するからがんばれ~」

 完全に他人事のようにエールを送り帰ろうとするが、

 「玲も受けるんだから一緒に頑張るぞ!」

 覚悟していたとはいえ改めて言われるとつらいものがある。なぜなら彼も八代と同じ高校を受けなければならないからだ。

 玲は趣味は読書、と言い切るように成績はかなりいい。というより学年主席である。普通科高校であるならばまず不合格になることはない。八代も文系は壊滅的だが、理系の成績は玲に匹敵するほどの好成績を修めている。文系さえ勉強すれば、普通科高校にも十分合格できる……内申点というものがなければ……

 授業中であるにもかかわらず、屋上でのんびりしている学生の内申点がいいとはとても思えない。もはや成績云々の問題ではなかった。

 「了解。明日からやるか!試験は実技試験と筆記試験が1つだけだから今からでもなんとかなる。」

 もはや逃げ道はない。ならば罠があろうと進むしかない。

 「あそこって筆記試験もあるのか?」

 さっそく罠にひっかかってしまった。

とりあえず第1話投稿~

これからもがんばっていきたいのですが、なにぶん勝手が分からないため、かなりの不定期更新になってしまうかと思いますが、長い目で見てやってください。

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