第7章 湖上の都に眠る魔剣
ガルドを仲間に加え、一行が次に訪れたのは、美しい水路が街中を巡る湖上の都だった。「うわあ、綺麗!ゴンドラがたくさん浮かんでるわ!」。リリアーナが歓声を上げる。だが、その華やかな景観とは裏腹に、街全体には重く淀んだ空気が漂っていた。「ハッ、見かけ倒しだな。活気がまるでねえ」。ガルドが退屈そうに鼻を鳴らした。
街の酒場で話を聞くと、原因はすぐに判明した。悪徳領事のダリウスが、水を自在に操る『水魔の剣』を手に、街の水路を牛耳っているという。「逆らう者は、水路に引きずり込まれて二度と上がってこねえ……」。住民たちは恐怖に顔を曇らせる。クライヴは静かに拳を握りしめた。彼の剣が、またしても民を苦しめる枷となっていた。
「作戦はこうだ」。宿屋の一室で、クライヴが地図を広げた。「俺とリリィが館に潜入し、魔剣を奪う」「おいおい、俺を忘れてもらっちゃ困るぜ」。ガルドがニヤリと笑う。「俺が街の広場で派手に暴れて、兵士どもの注意を引いてやる。俺の咆哮を合図に、お前らはさっさと仕事を済ませろ!」。なんとも彼らしい、豪快な陽動役の申し出だった。
翌日、作戦は決行された。突如、街の中央広場から大地を揺るがすほどの轟音が響き渡る。ガルドの咆哮だ。その挑発に、領事の館から兵士たちが面白いように飛び出してくる。街中が騒然となる中、クライヴとリリアーナは水路の影に身を潜め、手漕ぎの小舟で水門をくぐり、厳重な警備網を抜けて館の裏手へと向かった。
領事の館は、不気味なほど静まり返っていた。湿った廊下を進むと、広間で一人の男が待ち構えていた。派手な衣装をまとった、肥満体の男。悪徳領事のダリウスだ。「わざわざ死にに来るとは、愚かなネズミどもめ」。彼が手に持つ剣こそ、青い宝玉が埋め込まれた『水魔の剣』だった。「我が水魔の剣の力、その身に刻んで水底に沈むがよい!」
ダリウスが剣を振るうと、足元の水路から巨大な水蛇が鎌首をもたげ、二人に襲いかかってきた。「くっ……!」。クライヴは『無銘ノ剣』で斬りかかるが、水でできた体に刃は空しく通り抜けるだけだ。「無駄だ無駄だ!物理攻撃など、我が水魔の前では意味をなさぬわ!」。高笑いする領事の周りを、無数の水蛇が渦を巻き始めた。
「クライヴ、下がって!ここは私の出番よ!」。リリアーナが前に出て、弓を構えた。彼女の周りに、優しい風が渦を巻き始める。「水の形を保っていられるのも、魔力のおかげよ!」。彼女が放った風の矢が、水蛇に命中する。すると、水の体を維持していた魔力が乱され、形を保てなくなり霧散した。
「な、小娘が……!ならばこれでどうだ!」。ダリウスが剣を水路に突き立てると、凄まじい激流が発生し、二人を押し流そうとする。「クライヴ、しっかり掴まってて!」。リリアーナがさらに強い風魔法を放つ。逆巻く風が激流とぶつかり合い、凄まじい水蒸気を発生させた。一瞬、ダリウスの周りから水が完全に消え去る。
その好機を、クライヴが見逃すはずもなかった。彼は水蒸気の中を駆け抜け、無防備になったダリウスの懐に飛び込む。「ひっ……!」。悲鳴を上げる領事の手から、クライヴは水魔の剣を奪い取った。「眠れ」。彼がそう囁くと、剣から放たれていた禍々しい魔力の光が消え、館を包んでいた水の力が霧散していく。
館の外では、ガルドが兵士たちをのし終えたところだった。「おう、終わったか。なかなかやるじゃねえか、お前ら」。クライヴとリリアーナは、顔を見合わせて頷いた。「ガルドの陽動がなければ、こうはいかなかった」「えへへ、チームワークの勝利ね!」。初めて試された三人の連携。それは確かな手応えとなって、彼らの絆をより一層強く結びつけた。
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