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俺の作った武器が世を乱すので、絶対に折れない剣で全部取り戻す  作者: 酸欠ペン工場


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第2章 無銘ノ剣と風の少女

あの惨劇の夜から、クライヴは鍛冶場の闇に溶けていた。燃え盛る炎と人々の絶叫が、瞼の裏に焼き付いて離れない。自責の念が、鉛のように彼の心を蝕んでいく。「二度と、あんな業物は作らない」。彼は己の魂を削るように、ただひたすらに槌を振るい続けた。目指すは誰にも悪用されぬ、絶対の剣。その理想のため、彼は全てを捧げると決めていた。


特別な鉱石を炉で熱し、自らの魔力を惜しみなく注ぎ込む。カン、カン、と響く音は、もはや祈りの域に達していた。「折れず、欠けず、砕けない」。その絶対の特性を剣に宿すため、食事も睡眠も忘れ去り槌を打つ。意識が朦朧とし、全身の骨が悲鳴を上げる。それでも、彼は手を止めなかった。これは彼自身に課した、あまりにも重い贖罪なのだから。


幾日経っただろうか。ついに、その剣は産声を上げた。華美な装飾は何一つない、ただそこにあるだけの無骨な剣。しかし、その刀身は静謐ながらも絶対的な存在感を放っていた。クライヴはよろめきながらも、その剣を手に取る。「……『無銘ノ剣』」。それが、彼の魂の結晶に与えた名だった。その瞬間、彼は限界を超えた疲労から、その場に崩れ落ちそうになった。


その時だった。静寂を破り、鍛冶場の扉が轟音と共に砕け散った。黒いローブを纏った男たちが、殺気を撒き散らしながらなだれ込んでくる。「ここにいたか、腕利きの鍛冶師め!」。リーダー格の男が、歪んだ笑みを浮かべた。「その剣、そしてお前のその腕、我らが『組織』のために貰い受ける!」。クライヴは剣を杖代わりに、かろうじて身を起こした。


「……断る」。地の底から響くような声で、クライヴは答えた。だが、今の彼にまともに戦う力は残されていない。「口の利き方を知らんようだな。まあいい、すぐに分からせてやる」。男たちがじりじりと距離を詰めてくる。絶体絶命。クライヴが『無銘ノ剣』を握りしめ、最後の気力を振り絞ろうとした、まさにその刹那だった。


ヒュン、と風を切る鋭い音が響き、クライヴの耳元を銀色の閃光が掠めていった。次の瞬間、先頭にいた男の肩口に矢が突き立ち、その勢いで壁に縫い付けられる。「なっ……!?」。驚愕する賊たちの前に、一陣の風と共に、一人の少女が舞い降りる。月光を浴びて輝く銀の髪、尖った耳、そして蒼く澄んだ瞳。まさしく森の民、エルフの少女だった。


「そこまでよ!」。鈴を転がすような、しかし凛とした声が響く。少女は流れるような動きで弓を構え、矢を番えた。「邪魔をするな、小娘!」「邪魔をしてるのは、そっちでしょ!」。彼女が指を離すと、矢は唸りを上げて飛翔し、次々と賊たちの武器を弾き飛ばしていく。それはまるで風の精霊が舞い踊るかのような、美しくも苛烈な戦闘だった。


あっという間に賊たちを無力化した少女は、くるりと振り返り、クライヴに微笑みかけた。「大丈夫?ひどい顔よ」。その屈託のない笑顔に、クライヴは言葉を失う。「君は……一体……」「私はリリアーナ。あなたに会うために、ここまで来たの」。彼女はそう言うと、クライヴが手にする『無銘ノ剣』に、真剣な眼差しを向けた。


「その剣……すごい力を感じるわ。でも、あなたのその力は、今、世界中で悲劇を生んでいるの」。リリアーナの言葉が、クライヴの胸に深く突き刺さる。「あなたのせいじゃない。でも、その力を悪用する者たちがいる。私はそれを止めたいの」「……」「だから、あなたの力が必要なの。私と一緒に来て」。彼女はまっすぐにクライヴの瞳を見つめて言った。その蒼い瞳に、嘘や偽りは微塵も感じられなかった。


クライヴは、手の中にある『無銘ノ剣』に視線を落とした。これこそが、彼の覚悟の証。そして目の前には、彼の力を必要だと言ってくれる少女がいる。自らが作り出した業は、自らの手で清算しなければならない。「……わかった」。彼は短く、だが鋼のような意志を込めて答えた。「行こう」。リリアーナは、その言葉に陽だまりのような笑顔を見せた。世界に散った自らの罪を拾い集める旅が、今、始まったのである。

お読みいただき、ありがとうございました!

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酸欠ペン工場(@lofiink) [https://x.com/lofiink]

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― 新着の感想 ―
最近はあまり見ないくらいに密度が高い文章で、少し驚きました。 続き、頑張って下さい。
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