第18章 世界を懸けた戦い
「……諦めるな……クライヴ」。仲間たちの声が、遠くで聞こえる。だが、クライヴの体は鉛のように重く、立ち上がることができない。目の前には、かつて尊敬した師の姿。その男が、全ての絶望の元凶だったという事実。そのあまりにも残酷な現実が、彼の心を完全に折っていた。「無駄なことだ」。ゼルギウスは、杖を静かにクライヴへと向けた。
「お前はもう終わりだ、クライヴ。その心も、その剣も、全て私のものとなる」。ゼルギウスの杖から、底なしの闇が溢れ出す。それは、これまでのどんな魔力とも比較にならない、純粋な破壊の意思そのものだった。クライヴは、ただ死を覚悟した。自分のせいで、仲間たちまで巻き込んでしまった。その罪だけを、胸に抱いて。
「させるかよっ!」。その時、クライヴの前に巨大な影が立ちはだかった。血だらけのガルドだった。彼はボロボロの体で、それでも仁王立ちになり、クライヴを守っていた。「クライヴ!てめえは一人じゃねえだろうが!俺たちがいることを忘れたのか!」。その背中は、どんな盾よりも頼もしく見えた。
「ハッ、虫ケラが……。まだ動けたとはな」。ゼルギウスが放った闇の槍が、ガルドの体を容赦なく貫く。「ぐあっ……!」。それでも、ガルドは倒れない。「クライヴ……お前の剣は……人を傷つけるためだけのモンじゃねえ……。俺たちを、未来を守るためのもんだろうが……!」。彼の魂の叫びが、クライヴの心の奥底に突き刺さった。
「そうよ、クライヴ!」。影に縛られたリリアーナもまた、最後の力を振り絞って叫んでいた。「あなたの剣は、たくさんの人を救ってきたじゃない!私だって、あなたに救われた一人なんだから!」。二人の声が、厚い絶望の壁に閉ざされたクライヴの心に、ようやく光を届けた。そうだ、俺は、一人じゃなかった。
(俺は、なんて馬鹿だったんだ……)。クライヴは、ゆっくりと立ち上がった。手には、仲間との絆の証である『無銘ノ剣』が握られている。(俺は、こいつらを守ると誓ったじゃないか)。彼の瞳に、再び闘志の光が宿る。「ほう、まだ立ち上がるか。しぶとい奴め」。ゼルギウスは、心底楽しそうに笑っていた。
「師匠、あんたは間違っている」。クライヴは、静かに剣を構えた。「俺の剣は、あんたのオモチャじゃない。俺と、仲間たちとの、魂そのものだ!」。彼の言葉に呼応するように、『無銘ノ剣』がまばゆい光を放ち始める。それは、ゼルギウスの闇とは対極にある、温かく、そして力強い光だった。
「面白い!ならば、その魂ごと砕いてくれるわ!」。ゼルギウスの闇と、クライヴの光が激しく衝突する。遺跡全体が揺れ、凄まじい魔力の嵐が吹き荒れた。クライヴは、師の圧倒的な力の前に、何度も吹き飛ばされ、傷を負う。だが、彼の心は、もう折れることはなかった。
「クライヴ、今よ!」。リリアーナが最後の力を振り絞り、ゼルギウスの足元に風の渦を巻き起こす。ほんの一瞬、彼の体勢が崩れた。「オラァッ!」。ガルドがその隙を見逃さず、渾身の力で地面を殴りつけ、ゼルギウスの注意を引いた。仲間たちが、命懸けで作り出してくれた、たった一度の好機。
「うおおおおおっ!」。クライヴは、その一瞬に全てを懸けた。彼は仲間たちの想いを乗せた『無銘ノ剣』を、力強く握りしめる。ゼルギウスの闇の鎧に、初めて確かな亀裂が入った。絶望的な戦いの中で、三人の絆が生み出した一筋の光。それは、この世界を懸けた戦いの、反撃の狼煙だった。
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