第16章 敵の本拠地へ
親友アレンをその手にかけた悲しみは、クライヴの心に深い傷として刻まれた。だが、彼はもう立ち止まらない。アレンが残した組織の機密文書には、黒幕の本拠地を示す地図が記されていた。「……行くぞ」。彼の短い言葉には、全てを終わらせるという、鋼のような決意が込められていた。仲間たちもまた、黙って力強く頷いた。
本拠地は、荒れ狂う海に浮かぶ孤島にあった。常に暗雲が立ち込め、雷が轟くその島は、まるで世界から拒絶されているかのようだ。「すげえ魔力だな……。島全体が、要塞ってわけか」。ガルドが唸る。リリアーナもまた、険しい表情で島を睨んでいた。「島全体に、強力な結界が張られているわ。普通のやり方じゃ入れない」
「結界の歪みは一箇所だけだ。嵐に紛れて、あの断崖から侵入する」。クライヴの的確な指示のもと、三人は小舟で島へと接近した。ガルドが持ち前の腕力で崖をこじ開け、リリアーナが風の魔法で三人の体を浮かせる。そして、クライヴが先導し、要塞の内部へと潜入した。これまでの旅で培った、完璧な連携だった。
要塞の内部は、不気味なほど静まり返っていた。だが、至る所に巧妙な罠が仕掛けられている。「クライヴ、右の通路、魔力の流れがおかしいわ!」。リリアーナの警告と同時に、壁から無数の矢が放たれる。「ハッ、こんなもん!」。ガルドが分厚い鉄の扉を盾にして防ぐ。三人は互いを補い合いながら、慎重に奥へと進んでいった。
いくつもの罠を突破し、屈強な番人たちを打ち破り、一行はついに要塞の最深部へとたどり着いた。そこは、異様にだだっ広い玉座の間だった。そして、玉座には一人の老人が静かに腰掛けていた。その姿を見た瞬間、クライヴの全身から血の気が引いていく。手足が震え、呼吸が止まった。
「……師匠?」。クライヴの口から、か細い声が漏れた。そこにいたのは、彼に鍛冶の全てを教え、親代わりでもあった、誰よりも尊敬していた師、ゼルギウスだったのだ。「どうして……師匠が、ここに……」。信じられない光景に、クライヴの思考は完全に停止した。
「よく来たな、クライヴ」。ゼルギウスは、昔と変わらない穏やかな笑みを浮かべて立ち上がった。「お前がここまでたどり着くことは、全て計算通りだ」。その言葉に、クライヴは何も答えることができない。「どういうことだ、じいさん!てめえが、全ての元凶だってのか!」。ガルドが怒りを露わに叫んだ。
「いかにも」。ゼルギウスはあっさりと認めた。「私はね、クライヴ。お前のその才能が、羨ましくて、そして妬ましかったのだよ」。彼は恍惚とした表情で語り始めた。「お前の作る武器は、世界を混沌に陥れるのに丁度いい。お前が苦しむ姿を見るのは、何よりの愉悦だった」。その歪んだ本性に、リリアーナは絶句した。
信じていた師の、あまりにも残酷な裏切り。アレンとの戦いで負った傷よりも、遥かに深く、そして痛い絶望が、クライヴの心を蝕んでいく。「そんな……嘘だ……」。彼は力なくその場に膝をついた。自分の全てが、尊敬する師の手によって、弄ばれていたという事実。それは、彼の心を砕くのに十分すぎた。
「さあ、最後の授業を始めようか、私の愛弟子よ」。ゼルギウスは、その手に禍々しいオーラを放つ杖を構えた。「お前のその『最高傑作』が、生みの親であるお前自身を滅ぼすのだ。これ以上の皮肉はないだろう?」。絶望に沈むクライヴの前で、全ての元凶である黒幕が、ついにその牙を剥いた。
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