頑丈な男
俺の名前は、山下…山下為五郎だ。
俺が幼い頃、親父は俺を交通事故から守って死んだ。
親父は死の間際、「大丈夫か?よかった。お前を守れて、強く生きろ」と言い残して死んだと聞いた。
俺が生まれた時、お袋はひどい難産で死んだ。親父はその時、お袋を守れなかったと酷く落ち込んだが、お前だけは守ると生まれたばかりの俺を抱きしめていたとも、これもばあちゃんから聞いた。
俺のせいで、親父もお袋も死んだんだ。中学までは、ばあちゃんが育ててくれた。でも、ばあちゃんも俺が中学に入った年に死んだ。
俺は、守られてばかりだ。そして、俺のせいで家族は死んだのに、誰も責めなかった。責めてくれる身内もいなかったせいかもしれないが。
俺はどう生きて行けばいいんだ?
俺はずっと考えていた。
俺は、何かを守ろうと必死だった。だが、そうしようとすればするほど、みんな死んでいく。花も、動物も、そして人間も。
俺は自分が守る側の人間じゃなく、壊す側人間なのだと思い始めた。そして、俺は狩りを始めた。自分が守れないなら、何かを、誰かを踏み躙る奴らを壊すしかないと思ったからだ。
今日も、俺の足元には、善良な人々を傷付ける奴らが転がっている。だというのに、人は俺を化け物のように扱う。モンスター為五郎だと罵っている。
自分が守るべきは他人、だから他人を傷付ける奴を壊す。他人を傷付けるのは自分自身。だから俺は俺を壊すため、俺を壊せる奴を明日も探すだろう。




