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皇丸…その船の名は  作者: おみき
第1章 それぞれの邂逅
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昔の俺

Only 1でいいだって?負け犬の歌だな。なれるなれないじゃねー、No1を目指さない時点でダメダメだな。

俺は施設育ち、御多分に洩れず「グレマシタ」。

そりゃグレるに決まっているさ、両親はいない、兄弟姉妹もいない学校や近所でも差別される。自分の身を守るためにもグレるしかない。

挿絵(By みてみん)

中学なんかじゃ「喧嘩」しかした覚えがない。施設長が学校やら喧嘩相手にやら、警察にやら何度も謝ってくれたが当時の俺はそれが余計に腹が立った。こうでもしなきゃ俺は俺を守れない、それなのに何故、謝るのか。


自分の強さを利用しようとする人間は増えていくが、本当の意味で仲間なんかじゃない、俺はどんどん孤立していった。喧嘩喧嘩に明け暮れ、俺はそれなりに強くなり、この辺りではある程度名前を知られるようになった。そんな俺は少しずつ天狗になっていった。


中学を卒業というか放校というか、追い出されるような形で近隣で一番治安が悪いといわれる高校に進学することになった。本当なら中学を出たら働くつもりでいたが、施設長が俺の両親が高校の費用として貯めていた通帳を見せられ、行く気になった。間違っても「ありがとう」とかそんな殊勝な考えでなく、働かなくても良いし、また暴れられることの方が大きかった。どうせなら本職にでもなってやるか?とにかく高校の不良どもを全部締めて回ることにした。



あっという間に新入生を締め、2年を締め、3年も締めあげた。本当に大したことないやつばかりで肩透かしを食らった気分だった。


入学して1か月が過ぎ、俺は既に飽き始めていた。喧嘩喧嘩、勝ったところで何にもならない…なんて思っていた頃だ。下校中、俺は大勢の族に囲まれた。その集団の中には、最近俺が締め上げたやつらの顔もチラホラ…なるほどね。こりゃあ、ちょっとやばいかもね。


10人位までは何とでもなったが、細かい路地もないだだっ広い工場空き地での争いは、人数が少ない方が圧倒的に不利だ。相手は思っていたよりなかなか一人一人が強い。挙句に数が多すぎる。


…こりゃ、死ぬかな…覚悟を決め始めていた。足を取られ、押さえつけられ、いよいよ頭を勝ち割られそうになった。「お前の金髪ツンツン頭を栗のようにぱっかと割ってやるよ」と相手のデブが言う、と同時にそのデブが白目を向いて俺の目の前にぶっ倒れた…????「何だ?何があったんだ?」俺は正直意識も途絶え途絶えで何が何だかわからなかったが、周りの奴らが騒ぎ散らしているのが分かった。


つむじ風が吹くかのような、恐ろしく素早い何かが、周りの不良どもを蹴散らしている。50か100か分からなかったが、とにかく俺がまともに立てる頃には、俺以外にはただ一人が立っていた。


何故だか知らないが、ひどく安心した覚えがある。

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