あの日の詳細④恐怖と狂気
道化師…どの連合にも属さず、時折現れては、集団走行を繰り返す。しかし、無駄な音は立てず、ただただ単車の、それも消音器をいじっていない、純粋な単車の音を奏でる。
そう言う意味では、決して暴走族ではない。しかし、神出鬼没、他のチームが絡んで行っても、いつの間にか全滅させるような凶暴さは兼ね備えている。そして、今までいくつものチームを再起不能にしてきた、ただやるのではない、徹底的に執拗に、殺す寸前まで、おそらく死んだ方がマシだと思わせるぐらいの恐怖を植え付けた上で、潰すのだ。心を殺すのだ。
いまやあの黒帝すらも、道化師には手を出さない。おそらく黒帝の方が圧倒的に戦力は上だが、それでも、敢えてぶつかるのを避けるかのように。
道化師自体も、何かを支配しようという気配はない、あるのはただ、不気味な狂気だけだ。何をしたいのかわからない、ただその道を塞ぐものには容赦せず、ハサミで髪を刈られ、特服を引き裂かれ、運が悪ければバイクの後輪に顔面を押し付けられそのままアクセルをふかされ、顔面の凹凸をなくさせられる。無言で爪を剥がし、指を折り、目玉をハサミで突き刺す、まさに殺すことも躊躇わない、その狂気だけだ。
集団のトップは不明で、特徴的なのは全員が上から下まで全部黒の装い、フルフェイスも真っ黒だということ。武器にハサミを使うことぐらい。
ここからは噂に過ぎないが、そのフルフェイスを脱いだ時、金やら銀やら、紫やら、赤やら、ピンクやら派手な髪色で派手な化粧をした連中が現れるらしい。
よっぽど頭が、いろんな意味で切れてるトップがいなければ、こんなことまでして、この世界で生き残れないはず。
何かあるはず、そして、危険であるが、かなり危険ではあるが、この俺の計画には、今も、そして最後まで必要な人材だと、俺の本能が言っている。
・・・・なんてことを考えながら、俺は床屋に行こうとしている。俺のオシャレなツーブロックは、ここで生まれる………定休日だと、迂闊。
もう、頭は刈られる頭になっていて、ダメだと言われると余計に欲望は高まる。切りたい、切りたい、もとい、切られたい、切られたいのだ。
悶々とする俺の目の前に、こ洒落た美容院がある。。いやいやまさか、この俺が、び、び、び、美容院だなんてな、仮にも総長だよ?強いんだよ?あんな美容院なんか行って、相馬や山下はもちろん、源田と藤原の脳筋コンビに何を言われるか分かったもんじゃ…いらっしゃいませ…入ってしもうた。




