あの日の詳細②亡霊狩り
さて、亡霊相手に、どうでるか?
総長は、俺に「お前ならどう出る?」と尋ねてきた。
俺は咄嗟に「俺たち特攻隊がまず出ます!」と言った。
総長は「組織を使って相手を制圧することは合ってる。模範的だ。…でもな、俺たちみたいな新興の小さな族は、まず、インパクトが必要だ。」
「と、言いますと?」
「俺、1人で潰してくる。」
「へっ?…お一人で、ですか?」
「ああ、お一人様でだ。相馬も山下も、俺の一対多数の戦いをはっきりとは見た時ないだろよ?
源田もそうだが、はっきりとした実力差を教えた方が吉の場合がある。つまり、亡霊の戦力を傘下においておきたい。亡霊の頭、藤原道山を引き入れかつ、亡霊の人員を屈服させるのさ。」
総長のやり方は、まさにオーソドックスだ。
クールに次から次へとブッ飛ばす、漫画やドラマのようにスマートな喧嘩じゃない。
殴り、殴られ、叫び、時には吹っ飛ばされながら、でも、じわじわと相手を押していく。
じわじわと押してると思うと、いつの間にか、相手の頭と一騎討ちになる。
野生味溢れて、相手の奴らも、やられて気が付いても、再び参戦するのではなく、総長に魅入ってしまう。
何故だか、応援したくなる…そんな不思議な闘いだ。
なんだかんだで、頭を残して相手は全滅、もちろん、総長は息も絶え絶えだ。
「はあ、はあ、はあ、なかなかキツいじゃねーか、この野郎。」
「泥臭い喧嘩だ、悪くないな、お前、名前は?」
「はあ、はあ、、馬鹿野郎が。名前を聞くなら 自分が、名乗りやがれ…」
「…おう。俺は相模亡霊、藤原道山だ。」
「お前が、藤原、どうざ…んか、はあ、はあ、俺は皇丸3代目総長、世古公士だ!行くぞおら。」
…30分も経ったころ、ようやく勝負がつく。
藤原は大の字に転がっている。総長は何とか立ったままだ。
「…ぷ…っくっ、くっ、くっ…何だそのツラは。」倒れている藤原の方が笑っている。
髪の毛は乱れ、鼻血だか鼻水だかは垂れ、顔が腫れ上がった総長を見て笑っているのだ。そして…
「てめえ、人が必死こいて、頑張ってた勇姿を笑いやがって…ふははは、ひでえツラだぜ、確かによ、あはははは。」
割れたミラーに映った自分の顔を見て総長も笑っている。
その場にいる皆が何故か笑顔になり、笑いの大合唱。敵も味方もなく、肩を組んで。
「ああ、まいったよ。オメーの勝ちだ。好きにしやがれ。」と藤原が言う。
「じゃあ、うちの五番隊隊長やってもらうぞ。」
「…隊長…だ?今の今まで敵だった俺にか?」
「へっ、自分で言ってんじゃねーか、「だった」ってよ。ちなみに隊員はゼロだぜ、まだ。」
「小賢しいヤツだぜ、あーあーわかったよ、隊長でも総長でも、やってやるよ。ただし亡霊のメンバーはそれぞれの意思に任させてもらうぜ。」
「当たり前だろ。強制なんてできねーし、イヤイヤ仲間になるやつなんていらねーよ。」
「あとな、亡霊は俺たちだけじゃねーよ?全国組織は伊達じゃない。あちこちに亡霊はいて、俺たちもそのうちの一つに過ぎない。」
「…藤原よ、で、お前は亡霊の中で何番目に強いんだ?ビリか?ビリビリか?」
「はっ!知るかよ。ただよ、新宿亡霊には一度ボコられた事がある。まあ、勝てねーとも思わないが、数が半端ねー。タイマンなら亡霊の中で負けたことはねーな。」
「自慢だか、自慢じゃないんだかわからんね。」
「違いねーな、ふふふ」
…この戦いのあと、俺たちの皇丸は、五番隊隊長 藤原道山以下、150名の隊員を迎える事になる。




