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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

公園の幽霊

作者: 柊 海原

初投稿です。

温かい目でみてやってください。

私は幽霊だ。


公園に住み着いている。


肝試しにやってきた命知らずな少年少女に様々ないたずらをして恐怖の感情を糧とする


幽霊が恐怖の感情を得ることが出来なくなる時、それが幽霊としての死を意味するのだ。


・・・そのはずなんだが

すっかり肝試しのシーズンも終わり真冬。

私の脳裏に成仏という二文字が浮かぶ


1丁目の空き家に住みついていた地縛霊のおっさんも肝試しシーズンが終わってから

「恐怖」満足に得られなくなり成仏してしまったという


志半ばで死んでいくなんて幽霊にとっては屈辱でしかないのだ

頼むから私に新鮮な恐怖心を恵んでください・・・


そんなことを考えていると私の「獲物センサー」に反応があった。

やっと獲物のお出ましか


根城にしているタコの滑り台からひっそりと顔をのぞかせる

そこにいたのは小学校低学年くらいの男の子

ブランコに座って暗い顔をしている。


「こんな時間に一人かよ、家出か?」

まぁ幽霊の私にとっては純粋な心を持つ子供が一番新鮮で大きな恐怖心を採集できるから好都合☆


まずはステップ一、背後から物音

少年はキョロキョロ周りを見渡すと一つため息をつき、また暗い顔をして下を向く

思ったほど恐怖が得られなかった。


仕方ない、気を取り直して次いってみよう

ステップ二、背後からささやき声

そっと少年の背後へ周り一言

「助けて・・・」

少年はまたもやばっと振り返るが私はさっと物陰に隠れる


フッこれは怖いだろ・・・私の経験を結集させたスーパー恐怖ワードこそがこれだ!

思う存分怖がるがよい・・・

と、思ったが対して恐怖心が浮かんでこない


何故だ・・・何故なにも感じない?

今まではこれだけで1週間分の恐怖心、下手したら1か月分が手に入ったというのに

ええいしかたないッ、この私の恐ろしい姿を見せ、この命知らずな少年の恐怖心もぎ取ってやろうじゃないか


スッテプ三、奥義謎の少女

少年の目の前にしれっと姿を現す

どうだ?これこそが奥義・・・と思ったが少年の反応はない

何か様子がおかしい・・・

しゃがみ込み少年の顔を覗くと少年は大粒の涙をぽろぽろと流しているではありませんか‼


「だ、大丈夫か?」


あ、しまった

びっくりして普通に声かけちゃった。


少年がゆっくりと顔を上げる

「おねーさんも追い出されたの?」


あ、どうやら服がボロボロで髪の毛もボサボサだから勘違いしてるっぽい


「う、うん。そうだよ」

適当に話聞いてあげてタイミング見計らって渾身のこわーい顔でも披露してやるか・・・

そう、これは策略、決して心配になって声をかけたわけではない・・・ハズ


「僕ね、おかーさんに家追い出されちゃった」


どうやら少年は親に虐待をうけて家を追い出されてしまったらしい


なんだか自分の生前の事を聞いているような気分になった、父親が亡くなってから優しかったはずのお母さんが一変、日常的に私は暴力を振るわれ真冬に薄着で放り出され私はそのまま凍死した。


少年は母への恐怖心に取りつかれているように見えた。

私を見ても驚かなかったのもそのせいだろうか


違和感があった。

少年の母親の行動がまるで・・・

「幽霊に取りつかれている?」


風のうわさで聞いたことがある。

人間は深い悲しみや強いストレスを感じているとき

幽霊による憑依を受けやすいと・・・


「それほんと?」

少年は身を乗り出して私のほうを見る。


「確証はないがな」

なんてひどい幽霊なんだ

私渾身の恐怖体験を上回る恐怖をコイツに植え付けそのおかげで私は十分に恐怖心を得られないなんて


「おねーさんならおかーさん元に戻せる?」


少年がキラキラした目でこっちを見てくる

だが、断る‼

霊が人助けなんてそんなことするわけがないだろ


・・・だが

このままこの少年を家に返してしまうと本格的にマズイ

本当にこのまま成仏してしまう


「仕方がないな・・・」

別に情に流された訳では決してないのだ

今のところ本当に憑かれているとも限らないし

決して自分と生前と似た境遇のコイツを助けてやろうと思ったわけでもないさ

調査だけなら・・・ね?


「ホント?」

少年は目をキラキラ輝かせている

「こっちだよ」

少年が私の手を引いて家へ案内する


そこは小さなアパートだった


「‼」

扉を開かなくてもわかる、これは「ヤバイ」

扉の隙間から幽霊の気配がムンムン漂っている


仕方ないせっかくここまで来たし

こいつの母親に憑いてる幽霊からため込んだ恐怖心骨の髄まで吸い取ってやるか

久しぶりの同胞狩りだぜ‼

ヒャッハー‼


少年がそろりとドアノブに手をかける

「あ、開いてる」

少年は扉をゆっくりと音がしないように開ける


私は少年と一緒にそろり、そろりと侵入しリビングのほうをこっそりと覗く


いた。

少年は冷や汗を搔きながら私のほうを見る。

これが少年の恐怖の的か。

おのれ、私がいただくハズの恐怖心を横取りしやがって。


少年が一歩前へ踏み出す。


「おかーさん・・・?」

少年はきっと信じているのだろう私の助けがなくとも母親が正気を取り戻してくれることを


少年の母親はゆっくりと振り返り

「あら、ダメじゃないのこんな夜遅くにお友達なんて連れてきちゃあ」

やばい、気づかれている


私はゆっくりと姿を現す。


「あら?あなた人間じゃないわね?」

何もかも見透かした目でそう言う

その一言には凄まじい威圧感があった。

少年は暗い顔をしてうつむく


「本当に・・・悪い子だねぇ」

そういうと同時に私のほうへ向かってくる

驚くほどに尖った爪を突き立てて


「いったい何のつもりかしら?この子は私の獲物よ?」

私は華麗に爪の斬撃を避ける。

そして私渾身渾身の霊力を使い無から愛用の武器、霊魂の太刀を取り出す。

うん、我ながら素晴らしいネーミング


そんなことを考えていると背後から第二撃が

私はそれを華麗に受け止め受け流す。

この剣を使うのは実に数年ぶりだが、腕が鈍ってなくてよかった。


おっと少年は丸腰だ、新鮮な恐怖心を守るためにも守ってやらねば

少年の目の前に駆け寄り剣を構える。

少年は恐怖心に襲われ叫ぶこともなく立ち尽くしている。


「おねーさん?おかーさん死なない?」

少年が心配そうに尋ねる

「安心しな‼この剣は身を切らず霊を切るのだ‼」


母親の霊にとびかかり一太刀。

「いったい何のつもりだ?」

霊は苦しそうに呻く


「昔の感覚が戻ってきたぞー」

なんだか体が軽い。

今ならこんな雑魚一発だぜ‼


「奥義‼ ポルターガイスト」 

剣が数十本に分裂し、幽霊を襲う

幽霊はギャッっと声を上げ倒れる


「まさか・・・お前は」

幽霊が苦し紛れに呟く


「同法狩りのラップル?」

馬鹿なそんなハズはない・・・

少年の母親に憑いていた幽霊は必死に考えを巡らす

それは数年前風のうわさできいた恐怖の女剣士の話

無数の剣で体を八つ裂きにし、同胞から向けられる恐怖心を美酒と語る偏食家。

「数年前に姿を消したから成仏したと言われていたが・・・まさか生存していたとは・・・」


「怖がられ誰も寄り付かなくなるからやめたんだ」

母親に憑いていた幽霊は悟った「これはやばい」と

それと同時に成仏してしまう恐怖がおそう

恐怖の的、同法狩りのラップルはニタニタと笑う


「カタギに戻れたと思ったんだがな」


それが今まで様々な少年少女を恐怖のどん底につき落とした幽霊の最後に聞いた言葉となった


一瞬にして幽霊は真っ二つとなり白い煙が空に向かって上がって行った。


「やっぱり・・・やめられねぇな」

私は久しぶりの美酒に笑いが止まらなかった


あ、少年放置したままだった


私は少年のほうを見る

少年は倒れて動かなくなった母親をじっと見つめている


「大丈夫、気絶してるだけだよ」

私は優しく声をかける


少年はぱぁっと明るい顔になって大きく頷いた

空はもう明るくなっていた


しばらくすると少年の母親が目を覚ます。

少年の母親は辺りをゆっくりと見てから。

ハッとした顔で少年のほうへ駆け寄り

少年をギュッと抱きしめた


「ごめんね、おとーさんがいなくなってから一人で頑張らなくちゃって思って私・・・ひどいことしちゃったね」

少年の母親は涙ながらにそういった。


少年はニコッとわらってから

「だいじょーぶ‼あのおねーさんのおかげで全部もとどうりになったから‼」

少年は笑いながら母親の頭を撫でた


なんだか自分もうれしい気持ちになった

・・・幽霊失格だな

もうしないと思ってた同法狩りも困ってた少年のためにやってしまったし

人間を助けてしまうなんて・・・


でも不思議と悪い気はしていなかった

私はとっても清々しい気持ちでいた


気が付くと少年と母親が私の目の前に並んでいた

『ありがとうございました!』

少年とその母親は二人そろって頭を下げた


その瞬間私は新しい感覚を覚えた


そっか・・・恐怖心よりも「感謝の気持ち」のほうがずっとおいしいじゃん


私はニコッとわらって

「どういたしまして!」

と言う。


「ぼく将来は素敵な霊媒師になるよ!」

「それは勘弁して」

そんな話をしながら少年と一緒に公園へ行った

公園には少年と同じくらいの子供たちが遊んでいた。


少年もランドセルを放り出してみんなのほうへかけていった。


私は旅に出ようと思う。

同法狩りのラップルは生まれ変わったのだ。

まだ見ぬ感謝という名の美酒を求めて‼

最後まで見てくれてありがとうございました‼

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