知られざる者たち(4)
爆風が、ゆるやかに晴れていく。
赤い光が――世界に最後の彩りを添えて、やがて静かに消えていった。
そして、拳を下ろした地獄元帥の周囲には、静寂だけが残っていた。
誰もが言葉を失い、ただその姿を見つめていた。
幹部の誰かが、呟いた。
「……終わった……のか?」
――静寂。
空気は、まだ焦げている。
都市の残骸の向こう。
鳴海優は、離れた高所から軍用スコープ越しに、その一部始終を見届けていた。
高感度スコープが、夜の帳を切り裂くように、すべてを捉えていた。
彼女は、震える手で、接眼レンズからそっと顔を離した。
何が起きたのか、理解できなかった。
人知を超えた怪物が、黒き影たちによって打ち倒された。
「……化け物だ」
鳴海は、かすれた声で呟いた。
ジョックス。悪の組織。
本来なら、世界の敵として、打倒されるべき存在。
だが今――
彼らは、誰よりも強く、誰よりも“支配する側”だった。
彼らがいなければ、日本全土が、この日、滅びていたかもしれない。
だがそれは、英雄譚などではない。
この光景は、ただ冷酷な現実だった。
鳴海は、思った。
(こんなものを……敵に回して、勝てるわけがない)
あの男――地獄元帥が、こちらを向くことはなかった。
だが、レンズ越しに見えた気がした。
その瞳から、冷たく射抜くような視線を。
まるで、
「貴様らなど眼中にない」
と、無言で告げているかのような――
鳴海は、ふっと息を呑んだ。
手袋の中で、指先が震えているのを感じた。
それでも彼女は、スコープから目を離さず、ただ現実を見つめていた。
浜松の空は、もう夜だった。
その中心で、悪の組織ジョックスは、静かに、確かに、存在感を刻み込んでいた。




