表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

視線が合ってしまった日


(あぁ・・・私の命もここまでか)


座敷わらしは思った。視線の先には一人の男性。彼の名前は磯崎(いそざき) 隼斗(はやと)といい、次の春から大学生になるらしい。

さらさらとした金色の髪をもつ彼は、大学からここが近いという理由で、亡くなった祖父の家に今日から住むためにやってきた。


でも、私はしっている。

彼はあの有名な陰陽師の末裔で、きっと私を祓いに来たに違いない。だってー・・


(だって、こんなにも動悸が激しくて、緊張して、震えてしまうことなんて初めてだもの)




1時間前、彼は引越しの荷物をいくつか持ってこの家にやってきた。少し気だるそうに荷物を抱え、部屋に入る隼斗の様子を座敷わらしの彼女・・美桜は柱の後ろに隠れて見ていた。


そこで、目が合ってしまったのだ。


美桜の心臓が跳ねた。それは今までに持ったことがない感覚で、すぐに目を逸らしてしまった。


(・・・彼も見えている)


ここに住んでいたおじいちゃんとは、よく話をしていた。おじいちゃんは座敷わらしである私のことが見えていて、会話をする事もできた。

その会話の中で、よく出てきたのが隼斗の名前だった。

おじいちゃんの孫だから、彼があやかしである私の事が見えていても不思議ではない。

けれども、おじいちゃんと目が合っても、心臓が跳ねたり、押しつぶされそうになったりしたことは一度もなかった。


(・・・あれ?)


目が合ったはずなのに、隼斗は何も見えていないかのように普通に居間に入っていった。


(私の気のせい・・・?)


少し冷静になった美桜は、居間の襖を少し開けて再び彼を覗く。しかし、彼を見た瞬間に先程の感覚がまた戻ってきて彼女の体を熱くさせた。


(やっぱりおかしい・・っ)


火照り始めた顔をぎゅっと両手で抑え、なだめようとしていると・・・



「・・・なにしてんの?」


「ひえっ・・・!?」



少し目を逸らしたすきに、隼斗が美桜の目の前にいた。


「やややっぱり、見えて」


動揺のあまり、美桜の目線はふらっと宙を向く。


(あ、やばい、意識が)


「お、おい!ちょっと」


これが陰陽師の力かぁ・・と半ば感心しながら美桜は意識を遠くに飛ばしてしまった。



これは、恋をしらない座敷わらしと、霊感の強い無気力系大学生が、恋に落ちるまでの話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ