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【感謝!3万PV達成!】虹の聖樹 『大聖女・ハルカ』と夫君達との異世界ライフ♫  作者: 天の樹
第一部 ハルカ『異世界ライフ』が始まる♬
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ハルカ マナの可視化と第二夫君との結婚

「ハルカ、大丈夫? 起きられる⁇」


 眠り込んでいた身体を軽く揺さぶられて目が覚める。目の前にレオンハルトより明るめの瞳が覗き込んでいる。


「ルイス?」


 名前を呼ぶとパッと破顔するルイス。うっ、美形の破顔、やばすぎる。


「ん、そう。大丈夫?身体、辛くない?」


 溢れんばかりの笑顔に戸惑う。


「大丈夫。ありがとう」


 そう答えるとヨシヨシと子供の頭を撫でるようにされる。


「今日は僕との初夜だ。よろしくね」


 レオンハルトより少し高めのバリトンボイスでそう言うと着替えだと真新しい下着と一緒に白基調のワンピースが手渡される。


「隣の部屋でレオンと一緒にいるから、着替えておいで」


 そう言うと寝室から出ていく。


 用意された下着を身につける。

 ワンピースは少し大きめで前がボタンになっている前開きタイプ。シンプルで清楚な感じ。一見白にも淡い虹色にも見える光沢のあるしっかりした生地。胸のところが少し厚手に作られている。丈も膝下で、中身おばちゃん的には少しホッとする。

 これもマナによる再現なんだろうか? 化学繊維は無理なんだろうなあ。化粧台にあるメイク道具を使って軽くナチュラルメイクを施す。姿見でチェックして、寝室を出る。レオンハルトとルイスが同時に自分に視線を向ける。

 二人は成婚の儀に身につけていた白の清掃の騎士服を身につけている。よく見るとレオンハルトは白基調に濃紺のライン(聖騎士団仕様らしい)に金のモール。ルイスは同じ仕様でラインの色が魔法師団仕様である濃紫になっている。

 両者とも銀髪に濃淡の差はあれブルーサファイヤの瞳。元とはいえ王子様である美しすぎる二人からの蕩けるような笑顔に、おばちゃんの胸もキュンキュンしてしまう。


「よく似合ってる」

「素敵だ」


 二人からそう言われると嬉しい。

 レオンハルトが寝室に戻ったかと思うと宝石箱を持ってきた。あ、成婚の儀の…… レオンハルトが私にそれを着けていく。深く蒼い双眼が私を映している。首飾り、耳飾り、腕飾りと成婚の儀に使われた装飾品を私に着け終わると私の唇へとキスをする。

 そして私の左手を取り、手の甲に刻まれた聖樹の紋様にキスをすると、そのままルイスへ引き渡す。

 ルイスも同じように左手の手の甲の聖樹の紋様にキスをした後、私の膝裏に手を回し、ふわりとお姫様抱っこをするといつの間にか開かれた転移ゲートへスタスタと進んでいく。


「よろしくね。ハルカ」


 ルイスの極上の笑みと共に耳元でそう囁かれつつ転移ゲートを潜っていった。




 転移ゲートはルイスの執務室に繋がっていたらしい。


 レオンハルトの執務室は壁面が書籍や書類で埋め尽くされていた。執務用の机の前には来客用の応接セットが置かれているという、かなりシンプルな感じだった。

 一方ルイスの執務室は壁面はよく似た作りだが、執務用の机の前に応接セットの代わりに置かれた理科室の作業台のような作業机には所狭しと言うより様々な器具が山積みに置かれている。

 実験用のフラスコやビーカーも、その中には得体の知れない液体が入っている。地球儀ぽいのもある。写真機⁇ えらいレトロな…… お姫様抱っこをされたまま、部屋のあちこちに目が入ってしまう。興味津々になっていたのが丸わかりなのか、頭の上でくすりと笑われる。


「面白い?」

「うん。色々あるね。見てみたい」

「ん、後でね。先に食事しよう」


 そう言うと別の扉を開ける。

 ガラス張りのテラス。かなり広い。光が降り注ぐ。温室? いろいろな植物が植えられている。そのせいか空気も澄んでいる。中央に大きめの円卓とセットになった椅子。机上には色々な料理が置かれている。

 ルイスはお姫様抱っこのまま椅子の前に立ち降ろすと私を席につかせる。こっちも肉メイン。チキン系か。

 あれ? 照り焼きチキン? 美味しい。和テイストに食がすすむ。

 結構食べ続けてるんだけど、マナだから太らないのか。食べたいだけ食べられるのか…… でもご飯も美味しい。ふっくらして甘味があって…… 浅漬けぽいのもある。

 ルイスがパクパク食べている私を嬉しそうに見ながら食べている。

 デザートは抹茶のムースと珈琲。まったりとした時間が流れる。


「ご馳走様でした。とても美味しかった」

「満足してくれて、良かった…… じゃあ、始めよう」


 いつの間にか足元に用意された室内履きを履き、椅子から促されるように立つ。ルイスが指をパチリと鳴らすとそれまで机上にあった食器が全て取り払われる。そのまま洗浄室に送られるらしい。

 大きな円卓が同じようにどこかに収納されたのか目の前から一瞬で消える。何度見ても不思議な光景。残されたのは椅子だけ。その椅子の一つに座らされる。目の前にルイスが立つ。言われるままに目を瞑る。私の両方のこめかみをルイスが強く押す。頭の中で白い火花が散る。ゆっくり目を開けると今まで見ていた世界が一変していた。


「一時的なものだけどね」


 光の粒子のような様々な色の粒子が光を放っている。テラスのガラス越しの太陽の光によって更に煌めき光を放っている。


「凄い。こんなの初めて見る」


 リアルからファンタジーな世界に一気に染め上げられている。テラスに植えられた植物達も様々な色の光の集合体のように煌めき、ゆらめいている。


「これがマナ?」


 光の粒子から視線が外せない。


「ああ」


 背後に立っているだろうルイスの声が肯定する。


「凄いね。まさに圧巻。生命エネルギーそのものだ」


 温室のようなテラスには小さな泉が作られているのだけれど、そこに流れる水ですらもものすごい種類の様々な色の光の粒子で構成されている。

 なるほど、マナが生命力だと言うのもその通りなんだろう。


ーー 確かに世界は『マナ』でできている ーー


 ふとルイスの方を振り返る。

 ルイスがものすごい強烈でパワフルな光を放っている。ルイスなんだけど、光の粒子の集合体の塊そのもの。

 あまりにも強烈すぎて圧倒されて、正直かなりびびっていると、


「これが僕のマナ、魔力であったり生命力だったりするんだ」

「こんなに……」

「う~~ん、まあフリードリッヒ兄上はもっと凄いけれどね。レオンやクリスも同じくらいなんだ」

「そうなんだ、これはこれで凄いね」

「ちょっと見て」


 そう言うとルイスはちょうど胸の辺りに左手の人差し指を立てるとちょうど外に向けて反らせるように弾いた。指先から赤い粒子の光線が放たれる。それが小さな炎になったかと思うと反対の人差し指で今度は青い粒子の光線が放たれ、その炎を一瞬で消してしまう。今度は再度左の指で銀色の粒子の光線で軽く円を描く。するとテラスの中を風がふわっと流れていく。右の人差し指を植物の方に向けるてエメラルドグリーンの粒子の光線でまるで音楽を奏でるかのように動かすと植物が踊っているかのように粒子が跳ねていく。


「まるでmagicだね」


 これが魔法? 簡単そうに見えるけど、魔法なんて使えない自分としては、すごく器用に繊細に操っているのがわかる。


「今の光線みたいなのが魔力で炎や水や風や植物を操ったり物質化するのが魔法ってこと?」

「そう。つまりマナがあっても魔力がなければ魔法は使えない」


 『渡り人』である私は魔力がないから使えないってことなのか。


「私のマナってどんな感じなの?」


 ルイスに向かってそう尋ねると、ルイスは「こっちにおいで」とまた別の扉を開けた。



 寝室……


 執務室より更に広くとられたやはり白を基調にした寝室には天蓋付きの大きなベットが中央に置かれている。

 なんか既視感満載なんですが…… 確か、私のイメージとか言ってたな。私のイメージって……

 いきなりの寝室にちょっと戸惑っているとちょうどベットの前面の壁面に大きな鏡がでんと据え付けられているのが目に入った。

 え? 鏡⁇ こんなとこにあったら…… 見えちゃうじゃん。

 ドン引きする私を丁度鏡の正面に立たせるとルイスは自分の右手で指をパチンと鳴らす。鏡が一瞬強い光を放つ。その光が収まると鏡に映る自分がぼうっと白い光を放っているのが見える。隣にルイスをが並んで立つ。

 ルイスの明瞭な光と違って私の光はどちらかといえば陽だまりのようなほんわかした光。これが私のマナ? ルイスより輪郭がぼんやりしている。


「ハルカのマナはかなり減っちゃってるからね。本来は僕のように輪郭がはっきりしているんだけど」


 そう言うと、まるでスマホ画面を拡大するかのように鏡の画面を拡大する。


「見えるかい? ハルカのマナが漏れちゃって放出されているの」


 拡大画面に映る自分のマナが輪郭らしき部分から外へ少しずつ漏れているのがわかる。


「これが『マナ欠乏症』の症状なんだ。いわゆる生命力の源が漏れている状態。これでも二日間レオンがマナを供給したから随分マシになっているんだけどね」

「これは治らないの?」

「完治はできない。一度発症してしまうと修復しても脆くなっているから、どうしても完全にはもどらないんだ。『渡り人』は自分ではマナを生成できないから、どうしても外部から供給しなければいけない。ああ、そうだ…… これを舐めてごらん。覚えてる? 『月の光』の別宮で緊急で補給したマナの飴。口の中ですぐ溶けるから」


 透明の瓶にいくつも入った飴を一つ取り出す。その飴はマナが凝縮されたように強い光が放っているのがわかる。それを一つルイスが口移しで私の口の中に含ませる。強い光が瞬間的に放たれるけれどそれが私の中へと吸収されていくのが見える。身体の少しだけ軽くなるのが体感できる。なるほど、これがマナを吸収していると言うことなのか。食い入るように鏡を見ていると「ちょっと待っててね」と鏡に向かって何かの指示を出すようにルイスの指先が動く。

 鏡に向かって横向きに立たされる。ルイスも同じように私と向かい合わせになって立つ。


「マナの供給がどんな感じなのか見てみようか」


 まずは上の口からね。と言って私の上顎をくいっと持ち上げると、軽く口付ける。それを何度か繰り返すと今度は下で唇を刺激される。唇を軽く開くと待っていたかのようにルイスの舌が中に入ってくる。咄嗟に舌を引っ込めようとするのを逃さないようにルイスの舌が絡みつく。ルイスの濃縮された甘いクリームのような唾液が口内を満たしていく。互いにそれを貪り合う。深く長いキス。ふっとルイスが顔を離す。私の唇を軽く舐めると鏡の方を向く。私もそれに釣られて鏡の方に視線を向ける。


 ルイスが左手で指を鳴らす。まるでビデオが再生するかのように丁度鏡に映る自分とルイスがキスをする場面が映し出される。軽いキスも互いの唇が重なるたびに重なる部分に化学反応が起こるかのように光が生じている。舌が絡み合うとルイスの方から私に向かって彼のマナが一方的に流されていくのが見える。それは口内から全身へ強い光を放ちながら巡っているのが見える。

 これは…… これがマナの供給。すごい。ごくりと喉が鳴る。私のマナはそれを貪欲に瞬く間に吸収していく。とは言ってもまだまだ、いや全然私のマナは変化もしていないかのように見える。


「まあ、キスだけでは全然足りないけど…… ああ、でも見てごらん。見えるかな、僅かだけど、少しずつマナが漏れているんだけど……」


 再び拡大モードに切り替える。


「あっ…… 本当だ」


 先程より鮮明に自分のマナがぼやけた輪郭から滲み出るように外へとキラキラと放出されているのが見える。

綺麗だ…… と思う反面、それが死に直結することを思い出し、ゾッとする。


「つまり、ずっと供給を続けないと延命できないってことなんだ」


 ………… 供給かあ……


「供給しないとどれくらいしか持たないの?」

「浄化をしなければ、半年未満。浄化をすれば、数ヶ月。場合によっては一ヶ月未満かな。ハルカの場合は重度の『マナ欠乏症』を発症しているからかなり厳しいね。レオンがこの二日間、おそらくずっと補給してこの状況だから…… 何もしなければ数ヶ月だろうね。浄化をすれば一ヶ月かな」


 余命宣告されているのに他人事のように感じるのは何故なんだろう。目の前に映る自分のマナが、それが命の源であるのに自分の身体から漏れ出ていく様がキラキラと美しすぎるからだろうか。このまま解放されれば……

 押し黙り、考え込んでいる私の左手をルイスは手に取り、私の手の甲と彼の手の甲を合わせる。するとお互いに刻まれた天樹の印が浮かび上がりルイスからエネルギーが印を通して送り込まれる。


「駄目だ、生きなきゃ。僕を、僕達を置いて勝手には逝かせない。僕達は君の夫で、君のものなんだ。そして君も僕達の妻で、僕達のもの。忘れないで」


 そう私に向けて強い決意表明をするかのようにルイスは言うと、私をお姫様抱っこをしてベットの上へと移動させた。



 ルイスはそっと私をベッドに下ろすと、ベッドサイドへと腰掛ける。


「ハルカ、君がこの世界に来てくれたことが君にとって幸せなのかどうかは正直僕にはなんともいえないけれど、僕は君を愛し、幸せにしたいと思っている。だからどうか、僕を受け入れて欲しい」


 私の見つめるスカイブルーの瞳は本気だ。彼を彼らを受け入れると決断をしたのは自分だ。私は体を起こし、手を伸ばしルイスの銀色の髪を撫でる。


「ありがとう…… ごめんね、変な心配を掛けて。大丈夫だよ…… これから、よろしくね」


 ルイスは私の両頬に手をやり、固定すると唇へと口づける。最初は軽く、徐々に深く。彼の濃厚な甘いクリームのようなエネルギーが押し込まれていく。

 私は彼のその強いエネルギーにただ翻弄されるがままだった。

 


 甘いクリームの香りがする。それを思わず舐めると背中越しに声がする。


「くすぐったいよ、ハルカ」


 少し高めのバリトンボイスがくすくす笑いながら後ろから抱きしめてくる。


「大丈夫? 無理させちゃったから……」


 ふとまだ違和感に気づく。身じろぐと後ろから固定される。


「ダメだよ。まだ供給中だからじっとしててね…… ああ、そうか…… ちょっと説明するね」 


 そう言うと腕を動かして宙に浮いていた鏡が見やすい位置に宙に浮いたまま設置される。ルイスが手で鏡に向かって何かの指示を出すと録画されていたものが映し出される。

 映っているのはマナ化されたルイスと自分の姿。薄ぼんやりとした輪郭も曖昧な自分のマナと強いエネルギーを放つルイスのマナ。見ようによってはサーモグラフィー風のようにも見れる。

 軽いキスも唇周辺で交わされる度に静電気が起こるかのようにパチパチとエネルギーが爆ぜあっている。キスも深くなればなるほど光の強い方から弱い方へと接触場所を通じて流入して全身へと送られていくのが映し出されていく。

 丁度『ラバースライム』の場面になると耳元でルイスの説明が入る。

 『ラバースライム』というのは『スライム』という子供のおもちゃのような形状をしていて人の老廃物を食べるという代物で、人の排泄物の処理に使われる魔道具だ。


「『ラバースライム』が入る前、ここ見える? ハルカの前と後ろが光っているの……」


 画面を拡大しながら映し出される。確かに薄ぼんやりとした他の部分とは違って明らかにエネルギーが蓄積されて、そこから全身に流れていっているのが見える。レオンに供給された『マナ』らしい。


「これを『ラバースライム』で一度除去したんだけど、見える?」


 青く光るものが『ラバースライム』のマナ。それが私の中に入っていくのが見える。そしてレオンのマナがそれに吸収されていくのも映し出される。『ラバースライム』が回収された後、エネルギーが蓄積されていた部分は周囲より一段階少し影っぽくなっていた。かなりシュール。

 次の瞬間ちょうど影っぽくなり彩度が低かった部分に貫くように強い光を放つものが埋め尽くしていくと同時に閃光が放たれる。今度はルイスによってマナの供給が始まったのだろう。ルイスのエネルギーが満たされ吸収し始めていく。先のものとは比べ物にならないくらいのものすごく強い閃光が画面を満たす。それはおそらく部屋全体かもしくはもっと…… そこでルイスは映像を一時停止する。


「これが『渡り人』の恩恵と言われるもの。ちょっとスローで説明するね」


 そう言うと最後の閃光の部分を拡大してコマ送りのように再生する。


「ここね。この強い光が『恩恵』なんだけど、夫婦の営みをしていると『恩恵』と言う『浄化』が起きるんだ。この瞬間ハルカと僕自身も浄化されている。僕の身体にもこの光が一気に駆け抜けているのがわかる? ハルカも同じように全身光ってる。それと同時にこれだけではないんだ。ここは僕の領地だけどこの『浄化』は領地全体を浄化しているんだよ。これが『恩恵』」


 画面を見ながら説明を聞く。


「こうやって、夫婦の営みを通じて『恩恵』を与えられる。この大陸は王都を除いて大きく十の領地に分けられている。そこには十人の領主がいるんだけど……」

「十人…… それが『渡り人』の夫君候補……」


 十人という数字に反応するとルイスはさらに説明を加える。


「そう。十人の夫君と成婚の儀やこういった夫婦の営みを通じてマナの供給と浄化を同時に行えるということになる。まあ、浄化の規模は夫君のマナや魔力の量によるけれど……」


 そういうとふうっと一息ついて私を後ろから抱きしめる。


「だけど、ハルカ。無理しなくていい。おそらく僕たち三人でさえ、君にとっては生きる為に選択を余儀なくされたんだと思うから…… 生きる為なら僕たちだけでも大丈夫だから。浄化もハルカが無理しないようにレオンやクリスともちゃんと計画を立てているから……」

「…… ありがとう」

「うん。大丈夫だから。今はちゃんと法律によって『渡り人』は守られているから。安心して欲しい」


 ところで……  ルイスに質問をする。


「この鏡も『光様』が作ったの?」


 よく耳にする前『渡り人』の名前を出すと


「いや、これは僕が作ったんだ。『マナの可視化』ができる人じゃないと作れないからね」


 成程。確かにマナっていうものが見えてないと無理だよね。


「マナの供給っていうのは理解できた?」

「映像化されたら、確かに分かり易かったと思う。エネルギーの流れ方もだし。文字や口だけではなかなか理解できないからね」

「良かった。じゃあ、課題終了ということで…… 」


 そういってルイスは天使のような微笑みを浮かべた。

 再びルイスとの夫婦の営みの夜が再開された。


 

 意識が徐々のはっきりしてくる。

 目を開けるとスカイブルーサファイヤの端正な美青年が満面笑顔で自分を見ている。ルイス?


 『月の光』の源泉入りだからマナ回復もできるし…… そう呟きながら身体が回復するまで湯の中で横抱きにされたまま一緒に浸かる。

 この星の夫婦は一緒に湯船に浸かるのが定番なのか? 体が気だるすぎてそれを拒絶もできやしない……


 ああ、マナの源泉…… 体の疲労がどんどん抜けていくのがわかる。

 ルイスが自分の濡れた銀髪が顔のかかっているのが視界に入りそれを手で梳く。ぱっちりと見開いた蒼い瞳が覗き込む。眉毛も睫毛も銀髪なのよね。ほんと綺麗な顔。

 繁々とルイスの顔を見つめていると彼の白い肌が朱に染まる。


「恥ずかしいから…… そんなに見つめられると」


 乙女か。恥じらう少女のような…… ベッドの上での肉食動物のような獲物を狙うような表情とは別人のような、初々しく、ほんのりと赤いその唇に口付ける。


「クリスが着替えを準備してると思うから、後でちゃんと着替えればいい。それより朝食にしよう」


 そういうと最初にマナが見えるようにしてくれた温室のようなテラスで食事を摂った。


 マナの可視化は初日だけで、あとは日常に戻った。マナの可視化をするのに被験者は本人のマナを消費しなければいけないらしく『マナ欠乏症』を発症している私にとって長時間その状態を続けるのは良くないとのこと。

 強力な魔力があればそれなりに見れるのだけれど、魔力のない第三者に対して可視化できるのは大魔法師であるルイスだけが可能な特殊なものらしい。

 少しゆっくりめの朝食後の珈琲タイムをしているとちょっと空間が揺らいだ気がした。転移用のゲートが開いたらしい。

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