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【感謝!3万PV達成!】虹の聖樹 『大聖女・ハルカ』と夫君達との異世界ライフ♫  作者: 天の樹
第四部 『星の核』と『渡り人』の秘密★
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『始まりの記憶』6


 共有ラウンジのソファーに眠るハルカをベッドへとレオンハルトが運ぶ。共有ベッドは『夫婦の営み』に使うことはないが、今では『ハルカ』の存在を確かめるためだけに、夫君達の精神安定のためにだけ使われている。


 特大のベッドに眠る『ハルカ』は小さな少女のようだ。四人の夫君達はそこに『ハルカ』が存在しているのを確認しながら、共有ラウンジで各々好みの飲み物を片手に話をする。その会話の中心はいつも『ハルカ』だ。


「かなりショックを受けているようだ」


 アレクサンダーがそう呟くと


「ええ、そうですね。それにしても、あれ程膨大な情報量は想定していませんでした。本当に驚きました」


「そうだね。それはレオンの『魔力』を一気に消費させるくらいだったからね。本当に怖いくらいの量だ。それでもまだ三分の一は残っているから。ハルカの様子を見ながら続きの検証をしないと……」


 ルイスの言葉にレオンハルトは頷きながら

 

「ハルカに精神的な負担をかけるのは良くないからな。ただ…… 正直驚いた。公式の記録に残っているよりも遥かに詳細なものだった。ほとんど何千年も昔の伝説に近いものだからな。特に渡り人による『始まりの記憶』は今回初めて公的記録として確認された。まさか『原初のマナ』まで『記憶』されてたなんて……」


「本当にそうだよ。まさか『あれ』まで『記憶』されていたなんて。本当に驚いた。しかも『ハルカ』は『青と白』の記憶以外も『記録』されていた。あんなふうに星の『終わりと始まり』が個であるハルカの『マナ』に『記録』されていたなんて……」

 

 ルイスに続くようにアレクサンダーも


「『青の星(地球)』というのも興味深いな。『生物』の形そのものが大きく変容するなんて」


「ハルカは『物質化』と表現していましたね。人型の『生物』そのものの構造自体が全く異なりましたからね。ああやって映像化されると、私たちの星は『白い星』と『青の星』の混合種に近いのでしょうね。本当に興味深いです。それに…… 『ハルカ』自身や彼女の家族の記録も楽しみです」


「「「本当にそうだな」」」


 クリストフの言葉にレオンハルト、ルイス、アレクサンダーが同意した。


「あんな風に『マナ』が全てを記憶しているというのも驚いた」

 

 と、アレクサンダーの言葉に


「私達も同じでしょう。確かレオンはハルカにこの星に落ちてきた『ハルカ』の映像を『絵』に残してましたよね。私も同じように『絵』を描くことができれば良かったのにと羨ましく思いました」


「僕たちの『記憶』は『マナ』の核に残されるから。それからなら見ることはできるけどね」


 クリストフの疑問に答えるかのようにルイスが淡々とそう話す。


「いや、ルイス、それでは『マナ』に帰した後、つまり亡くなった後で、自分自身は見えないのだろう?」


 アレクサンダーが呆れたようにルイスの方を見る。


「だからこそ、今回のように『見える』形で記録されたことは非常に重要なんだよね。かつての『青い嵐』が吹いていた頃とは違って、生きている人間が『始まりの記憶』を残せることはできなかったし、『マナ』に帰した後、『マナの核』が残る僕達とは違って『渡り人』の場合、亡くなってしまえば… 封印されなければ彼ら自身の『マナの核』は残らないのだから。そういう意味で、ハルカの今回の『記録』は奇跡だった。『青と白の星』の記録以外にあれだけ多くの星の記憶が『マナの核』に刻まれているということが証明されたのだから」


 ルイスは眠っているハルカの方を見ながらそう呟いた。


****

 



 翌日は引き続き夫君達とともに残りの映像を見ることになった。

 本当は一日くらい休みたかったけれど、みんな容赦がない。

 いや、むしろ夫君達は何かをすごく期待しているように見えた。


 映像の初めは、どこかの遺跡をテーマにした映画の一コマのような、神話に出てきそうな場面の中で、巫女さん? や何かの祭祀で誰かに『覗かれる』という場面が繰り返される。それは微妙に時代や場所を変えても同じで、それこそ『都市伝説』界隈に出てきそうな古代文明を網羅できていたんじゃないだろうか。でもその時の『私』は個としての意識はなく何かの集合体? のような『光の塊』の一部に過ぎなかった。


 おそらく『私』を『個』として封じ込めようとしたのはあの少年だ。古墳時代のような出立ちの少年。

 彼は『私』を『人で非ざるもの』と呼んだ人間だ。

 もしかしたら、彼自身、かなり特異な体質だったのか、それとも、『私』と何かの波長が合ったのかもしれない。そんなことを映像を見ながら、ふと感じた。

 彼はそれまでの人間とは違って、そういった意識体を『神格化』しなかったのも興味深かった。そう、『私』は彼に興味を持ったのだ。漠然とだけれど彼の中に『白い星』の人間と同じものを感じたのだ。

 

 けれど、彼自身は時の政の中でその特異性ゆえに翻弄されてしまう。何故なら『青の星』と『白い星』は全く異なるのだ。

 『光の塊』の一部である『私』に触れることで何かを読み取ったのか、『未来』に絶望した彼は、結果的に『私』に依存をし、執着をし、『個』として封印しようとしたけれど、彼がそれをしようとした瞬間、『私』の意識は再び大きな意識の『光の塊』のような集合体に集約された。

 そのことがきっかけだったんだろう、『光の塊』の一部である『私』は彼を通じて興味を持ったのだ、再び『人間』に。

 その結果、『私』は『人間』になることを選んだ。

 『選んだ』瞬間、まるで『マナ』を放出されるかのようにポンと弾き出されたかと思うと、何かにあっという間に取り込まれた。誰かの『母体』だ。やがて、『青い星』において初めて『個』としての『人間』として産まれた。


 今思えば彼自身もそうやって集合体から『人間』を選んだように思う。

 それほど、彼の根源は『白い星』の人間に近かったからだ。


 彼を通じて『人間』に興味を持った『私』は『人間』として幾つかの『生』を繰り返していった。


 その中で、『人間』を含めた『青い星』の『生物』は『死』を迎えると全て『光の塊』のような集合体の『意識』に集約されるということに気がついた。




***



 

 植物も虫も動物も人間もみんな、『全て』同じところに戻り、そこから『産まれて』くる。


 一度、青い星(地球)の『生物』になりたいと思ったら、望むままに、『何か』に生まれ変わりながら、不思議なことに『産まれ落ちたその瞬間』一見忘れてしまったように見える本当の『記憶』を保持しているらしい。


 『人間』でいた時もそれ以外の時もだ。人とそれ以外のどこに境界線があるのかと思えば、そこに善悪云々ではなく、ただの小休止のようなものだ。『空を飛んでみたい』と思えば『鳥』等になり、海を堪能したいと思えば『海の生物』になる。『花』になりたければ『花』だし。本当は『望むもの』全てに『なれる』のだ。

 そこに『宗教』があるのか? といえば、『人間』以外そんなものは必要がない。いや、本当は『人間』ですら、この理を知ってしまえば『神』や『宗教』で争い、殺し合い、奪い合うことが如何に愚かのことだと理解できるだろう。


 全ての『生物』は同じもの(光の塊のような集合体)からできている。おそらく『人間』がいう『神』も『生物』と同じ『存在(光の塊の集合体)』だ。つまり『人間』は自分で自分を殺しているのだ。『宗教』の名の下に繰り返される殺戮行為。その結果が『青い星(地球』』を粉々に壊してしまったのだ。

 

 この星に『青い星(地球)』の記憶があるならば、この星が『宗教』という存在そのものを否定しているのも納得できる。


 『宗教』によって『人間の意識』を思うままに『制御』しようとした結果が自らの『青い星(地球)』を壊してしまったのだから。


 『人間』一人一人の『意識』自体はそれを望まなくても『意識の集合体』を『制御』して思うままに動かそうとするのには『宗教』は手っ取り早い手段だ。

 『宗教』の為に『人殺し』も『聖なる行為』という免罪符になるのだから。


 『動物』も『人間』も『生物全て』に『貴賤』など存在しない。元は同じ『光の塊の集合体』だと『思い出』せば、『人間』のいう『宗教』など『矛盾』だらけだという事が理解るのに。


 ああ、でも、それでもどこか、『私』自身もやっぱり『超越』した存在がいて欲しかったと今でも望んでしまうのだ。そうでなければ自分たちの『地球』を自分たちのいた時代に粉々に壊してしまったという事実を、その全てを受け入れる事があまりにも恐れ多いのだ。

 『青い星(地球)の最後の記憶』を『見る』ということは、その『罪』を突きつけられるのだろうか? 


 思いを馳せ巡らせていると、目の前に懐かしい家族の姿が映し出された。

 自分の目線が成長とともに変化していく。何気ない日常。自分たちを温かくも厳しく見守ってくれた両親。子供の頃の兄弟喧嘩。友達との他愛もない会話をしている姿。初めて人を好きになった瞬間。自分の視界を通して自分の一生が映し出されていく。『音声』はないけれど、映像とともに『記憶』されていた会話が呼び起こされていく。まるで映し出されている『絵』の紡ぐ映像にリンクされていく不思議な『感覚』だ。


 映像を見ながら呼び起こされた『記憶』と『感情』に時には喜びを、時には悲しみを。心の奥底に眠っていたものに『共鳴』したかのように思わず笑ったり、涙が出たり忙しなく気持ちが揺さぶられていく。

 やがて『地球』での最後の日、他国の戦争で『核』が使用されたというニュースに対してテレビやネットが大騒ぎしているのを『他人事』のように感じながら、いつも通りの日常を繰り返し、職場へと向かう途中、自分の前にできた大きな黒い影に一瞬躊躇しながら、同時に強い閃光と衝撃に『押されて』落ちていく……

 映像(『絵』)はそこで終わっていた。



***


『渡り人』に『日本人』が多いのは、おそらく『宗教』というものの多様性があったからかもしれない。

 そういえばこの星に生まれた『白い星』由来も『日本人』の割合が多かったとルイスが以前話してくれていたような気がする。


 全てのものに『神』が宿るという考え方、日本古来の『神道』や『仏教』は、『宗教』ではないと欧州にある大学で教鞭を取っていた『日本学』の専門家が言っていたのを聞いた時、多少の違和感を感じながらも、『日本』を研究する専門家であっても彼らの支持する『一神教』以外は『宗教』ではないんだろうなと少し残念に思ったことがあったのを思い出した。


 もしも『全て』のものに『神』が等しく宿るならば、自分たちは特別で他のものを排除するという考えのもとに起こされた『宗教戦争』など起こらなかっただろう。


 『日本』という国が『一神教』でなかったことが、もしかすると『世界』を破滅から救えたんじゃないだろうか? 今となっては、それこそ『たられば』の話でしかないのだろうけれど、そう思ってしまう。


 いずれにせよ『宗教』と『政治』が結びついた時、多くの悲劇が起こったことは『地球の歴史』の中で事実だし、私の両親が経験した、かつての日本もそうだった。

 私の世界線上で起きた『核戦争』の引き金になった北の戦争や中東や世界のあちこちで引き起こされていた紛争の根本的な理由には常に『宗教』が大きく絡んでいることは否定できないのだから。

 恐らく日本人だったなら、一神教の『聖地』が重なり合っての戦争ですら、『いや、別に『聖地』の共有すればいいんではないのか、なんで殺し合わなきゃいかんのか』って思った人もいたんじゃないかと思う。まあ、日本人の宗教の多様性とその許容範囲は世界から見ると特殊だったのだろうけれど。


 自ら何も生み出すことができなくなった『地球人』は他者から『奪う』ことの正当性を保つための手段として『宗教』を利用したのかもしれないな。と、全てを自分の『マナ』で作り出せるこの星の人たちを間近で見ていると思い知らされてしまうのだ。


 もし『月』が『地球』の衛星になっていなかったら、『地球人』はこの星の人と同じように自らの『マナ』で全てを作り出せたのかもしれない。そうしたら『奪い合う(他者から搾取する)』必要もなく『戦争』そのものが起こり得なかっただろうに。


 見た目は『地球人』の構造と変わらない(内臓の作りは違うけれど)この星の人たちである夫君達を知れば知るほど『地球人』である私との根本的な違いを感じずにはいられないのだ。

 自ら『マナ』を作り出せない『地球人』である私は、結局は夫君である彼らに『マナ』の供給をされなければ、生き続けることはできないのだから。

 この星にある『生物』は『死』ねば一瞬で『マナ』に還ってしまうのだという。

 『花や果実』のようなものも、収穫時に『マナ』を注入するのだそうだ。それによって状態を保持できるらしい。そしてそれを使って『レシピ』によって『加工品』を作り上げていく。


 夫君達によって自由自在に『マナ』を使って様々な『食物』が作り上げられていく様は、初めて見た時は驚愕そのものだった。


 不思議なことだ。いつの間にか違和感なく夫君達のいる『ここ』が私の居場所になっている。


 『絵』の中の『私』の記憶が『彼ら』に『共有』されたからかも知れない。

 どんなに懐かしくとも、恋焦がれても、もう『あそこ』には戻ることはできないのだ。


 『私の中』でようやく踏ん切りのようなものがついた気がした。


 



いつもお読みいただきありがとうございます。

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