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【感謝!3万PV達成!】虹の聖樹 『大聖女・ハルカ』と夫君達との異世界ライフ♫  作者: 天の樹
第四部 『星の核』と『渡り人』の秘密★
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『始まりの記憶』4

ブックマークに評価、ありがとうございます。励みになります。


 翌日。朝食の後、少し休憩をしてからいつものように訓練場? へ行くと夫君達四人が待っていた。その中央に一つのリクライニングチェアがクッションが置かれた状態で置かれていた。


 ? なんだろう。ほんの少し彼らが緊張しているのが感じられた。


「おはよう。ハルカ。ここに座って」


 ルイスが椅子を掌を上にして座るように促す。それに従って用意されていた木製の結構しっかりめのリクライニングチェアに座る。ふわりとレオンハルトの匂いがした。


 レオンのかな? レオンハルトの方を見るとふんわりと柔らかい笑みが向けられた。


「ハルカ、昨日はよくできたね。今日はいきなりだけれど本番だよ」


 え? 本番っていきなり過ぎるだろう。昨日ようやく描けるようになったんだけど。せめて事前予告するとかして欲しいんだけど。


 つい非難の目でルイスを見ると、今度は


「余計な情報を与えられると身構えてしまうでしょう? そうなるとこれは難しいですし、危険ですからね」


 クリストフがルイスの援護に入った。そういうものなのかとレオンハルトを見ると


「心配しなくていい。皆がいるから、いつも通りにすればいいから。さあ『魔力』を送るから」


 そう言うとレオンハルトはお互いの両掌を通じて彼の『浄化魔力』を私へと送り始めた。『白い魔力』が大量に送り込まれてくる。いつのも倍以上一気に送り込んできた。終わったのか、レオンハルトの両手が離れると彼は私の背後にまわって私の後頭部に両掌を八の字を書くようにふわりと置いた。


「足りなくなったら『魔力』を送るから」


 え? う〜〜 結構皆容赦ない。 


 ふと視界にアレクサンダーが入った。他の三人に比べると静かだ。そういえば、この件に関してはアレクサンダーは容認はするけれど危険だから積極的賛成ではないと言っていた。


 まあ、記憶障害という後遺症が全く起きないという事もないらしいから。


「ハルカ、中断はしないからね。一気に記憶を放つから、それを昨日のように『白い魔力』を『キャンバス』へと送り込むんだ」


 ルイスが私の正面に立ち目線を合わせてそう説明する。まずは『白いキャンバス』を昨日のように『白い魔力』だけで作る。


「ああ、よくできている。これなら大丈夫だ。じゃあ、目を閉じて。緊張しなくていいから」


 目を閉じた私の眉間にルイスの指が触れた。


「ん、じゃあ始めようか。ハルカ、あの子が歌っていた光景を思い出して。あの時のように一緒に歌ってみて……」


 『花祭り』の光景が脳裏に浮かんだ。そうだ、あの時、どこからともなく聞こえてきた日本語の歌。メロディ…… 少年の歌声にハモるように歌って、溶けていく……


「ハルカ、今だ。『白い魔力』を放つんだ」


 ルイスの言葉に反応するかのように閉じていたはずの眼から『白い魔力』が放出されるのが感覚的にわかった。視界が真っ白な光で覆い尽くされる。意識が飛んだように感じた。


「ハルカ。終わったよ。眼を開けてごらん」


 ルイスの言葉を合図に視界が切り替わった。満天の星空に薄い光を放つ大きな結界ドーム一面に夥しい数の『絵』が貼り付けられていた。


 夜? この星の二つの太陽が沈む、僅かな時間の夜になっていた。

 あれからずっとしてたって事? 


「お疲れ様、ハルカ。無事、成功したよ。ありがとう」


 ルイスは私の頭を優しく撫でた。椅子から立ちあがろうとしたけれど、うまく力が入らない。そんな私をレオンハルトが幼子を抱っこするかのように抱き上げると、ポンポンと背中をあやすように叩いた。


「おやすみ、ハルカ」


 レオンハルトの優しいバリトンヴォイスに私は意識をふっと手放した。


 夢を見た。地球の夢だ。懐かしい両親と兄弟との子供の頃の夢。幸せな時間。その中に留まりたい、溶け込みたい。


 だけど…… 誰かが、また『私』を呼んでいる。ああ、帰らなきゃ。彼らも『私』を待ってるから。夢の中までジレンマ起こしている自分に苦笑している。

 ここもいつの間にか『私の居場所』になったんだ。


 夢から目覚めると、視界の中に心配そうな夫君達の瞳が目に入ってきた。


「おはよう」


 と声をかけた。そうだ、『私の家族』がここにもいる。




 丸一日、寝ていたらしい。ひどくお腹が空いている。よく思い出してみれば、昨日の朝食しか食べていなかった。支度をして共有ラウンジへと向かう。


「はい、どうぞ」


 と、クリストフが卵がゆを出してくれた。昆布と鰹出汁風味の優しいお粥だ。夫君達の作ってくれるレシピは日本の関西風味にセッティングされているので、私的にはとても懐かしい味付けだ。


「美味し。ありがとう、クリス」


 ラウンジにいるのはアレクサンダーとクリストフだけだった。


「あれ? ルイスとレオンは?」


「ルイスはハルカの『絵』を整理しているところだ。レオンハルトは今休憩している」


 アレクサンダーが答えてくれた。


「大丈夫か? かなり無理を強いたからな。ゆっくりと今日はしたほうがいいぞ」


「ありがとう。アレク。確かに昨日のは自分でもびっくりしたよ」


 目の前に数万? 数十万? いやもっとそれ以上の『絵』がもともとこの屋敷を含めた敷地全体にはぐり巡らされた結界一面覆うように点のように貼り付けられていたのだ。つまりそれだけの数の『絵』の整理をルイスはしているということだ。レオンハルトはそれだけの『絵』を私に描かせるために『魔力』をずっと送り続けていたということになる。おそらく膨大な量の『魔力』を。


「大丈夫かな?」


 レオンハルトの自室の方をチラリと見ると


「大丈夫ですよ。そろそろ起きてくるんじゃないですか?」


 クリストフがあっさりと言う。


「あれって『浄化(白い)魔法』でしかできないの?」


「ああ、そうだ。この中ではレオンハルトとルイスだけだな」


「ルイスも?」


「そうだ。ルイスは全属性をほぼMAXで使いこなせる事ができる。だからこその『大魔法士』なんだ。ただ『浄化』に関してはレオンハルトの方がはるかに強い。まあ、多少の得て不得手があるってことだ」


 アレクサンダーの話によると『浄化魔法』は『金の魔法』。『結界魔法』は『銀の魔法』と言われているそうだ。

 それらは一見『光魔法』とまとめて言われているそうだが、色に僅かな違いがあるのだとか。

 『金の魔法』は『映像』に特化している作品作りに適していて、『銀の魔法』は『音』に特化している作品に向いているのだそうだ。『結界魔法』も厳密にいえば『音の周波数』によって編み出されたものらしい。


 へえ〜〜、そうなんだ。だから、今回の『絵』には『音』がついていないのだとか。


 『金と銀』を使いこなす事ができるルイスだからこそ『映像』と『音声』を組み合わせた魔法や魔道具を色々生み出せるのだとクリストフから説明を受けた。

 

「それにしても、圧巻でしたね」


 私の描いた『絵』はものすごい勢いで描き出されたのだとクリストフがその光景を思い出したのかそう呟いた。


「白い光に包まれたと思ったら思考停止したような状態だったから、よくわからないよ」


 思わず苦笑いをしてしまった。あ、そうそう、これ聞いときたかったんだよね。


「ねえ、私が『絵』を書いている時ってさ、『白目』になってたりとか、眼からビームとか放っているのかな?」


 レオンハルトの時はそういうのはなかったけれど、自分はどうなのか『絵』を描くときに『眼』から放出を意識していた分、かなり気になっていたんだよ。ちょっとホラーぽくなってたらどうしようって。


「ん? そういうのはなかったぞ。『キャンバス』が白金に輝いてはいたが。ハルカ自身は特には。って言うか『白目』とか、『ビーム』とか…… ハルカは面白いな」


 アレクサンダーはそういってクックと笑いを噛み締める。


「え〜〜、だってなんとなく絵面的にそんなイメージになってたんだもん。そうか、そんなんでなくてよかったよ。もしそうなら、今後『絵』とか描くのに心理的抵抗を感じちゃってたかもしれない」


「大丈夫ですよ。ハルカ。そうですね。確かに『白目』と『ビーム』……」


 クリストフも想像したのか、プフッと小さく吹き出した。


「ひどいなあ〜 クリスまで。ああ、でもこれでひとまず『記録』作業は終わったって事なのかな」


「ええ。そうですね。ルイスが整理ができれば『提出』前に、『鑑賞会』ですね」


 『渡り人』による『始まりの記憶』の『記録』は初めてのもの。古代に残された『青い嵐』の頃の記録との比較も含めて比較や検証、研究が行われるそうだ。


 今回の『記録』が終了したので、ある意味三年前に中断した色々な事が動き始めることになるんだろう。三年前に止まっていた時間が動き始めるような気がした。


 それから三日後、ルイスは大きなアナログ映写機のようなものを、公務で遠隔通信を行っている別室へと据えた。


 それから大巻のアナログフィルムのようなものをそれにセットする。

 アナログ映画でも始まるのか? 随分と懐かしい雰囲気を醸し出すそれに魅入っていると


「さあ、『鑑賞会』を始めようか。」


 いつの間にかリクライニングチェア五つとそれぞれに小さめのサイドテーブルには飲み物とキャラメルがけのポップコーンが置かれている。ルイスの呼びかけに各々席に着く。


「まず、これは正規の『記録』とは別に観賞用に作ったものなんだ。提出用のオリジナルは無編集で既に陛下の方に提出している。それから、これは少しだけ編集をして見易いように『観賞』しやすく、流れを入れ替えた部分もあるけれど、『絵』は全くカットはしていないから。それとハルカの『記録』自体は記憶を逆行したものだったけれど、これは全部順行したものにしている。かなりの長編だから、まあ、リラックスして楽しんで」


 ルイスが『鑑賞会』を始めるにあたってそう説明をすると、室内の灯りが暗くなり、目前の壁一面に白いキャンバスが作られる。それはまるで映画館のスクリーンのようだ。ルイスは映写機のボタンを押した。



***


 音声も全くない。目の前に映し出されたのはあの時最後に見た『マナ』の塊。

 『絵』がまるで紙でアニメーションを作るかのようにものすごいスピードで捲られていくかのように画面が切り替わっていく。『マナ』の塊はまるで生きているかのように動悸を打っている。時たま、それは泡立ち、渦を巻き、まるで太陽のフレアのように『マナ』を放出している。放出された『マナ』は四方八方に『マナ』を覆い尽くすような真っ黒な空間を突き抜けていく。


 それを繰り返しながら、時折大きなフレアと爆風によって大きな『マナ』の欠片が吹き飛ばされる。視点がその欠片に切り替わる。『マナ』の大きな塊から吹き飛ばされた欠片は真っ暗な空間、真っ暗な海を切り裂くように突き進み抜け切った瞬間欠片は全て粉砕されてまるで塵の様に『何もない』真っ暗な空間へと大量に吐き出されていく。

 やがてそれらの塵は磁石に引き寄せられる様にくっつきあい、核となり、それを中心に渦が生まれていく。

 多種多様な核の塊はやがて星になり、その中で中心核を担うものが恒星になり、その周囲を惑星が公転する。そこに、生命が生まれたかどうかは不明だ。

 けれど、最初の恒星の寿命とともに、おそらく最初に砕け散り、塵になった『マナ』の欠片は再び寿命を迎える『恒星』に飲み込まれ吸収されて再び一つの『マナ』の小さな塊になる。全てを回収できたのを、まるで確認したかの様に『最初の恒星』は大爆発を起こした。

 全てが吹っ飛ぶかの様に思えた、かつての『恒星』の中心に真っ黒な空間が生まれ、全ての塵を回収するかの様に一気に回収していった。まるで掃除機で塵を吸い込むかのように。

 真っ黒な空間に回収された塵の様な星の…… 否、『マナ』の欠片は全く別の空間へと『くしゃみ』をするかの様に吐き出されていった。


 暫くするとそれは再び『最初の恒星』の様に核になる星を生み出し、それに付随する惑星を生み出していく。時には『恒星』の数は二つだったり、三つだったり。さまざまな軌道を描く『惑星』とそれに付随する『月』と呼ばれる『衛星』のまるで『音楽』を奏でる様な動きは『最初の恒星』とは比べ物にならないかの様に複雑なものになっていった。

 それでも最後には『恒星』は寿命を迎える。どれほど複雑で大きな広がりを持ったとしても、全ては『恒星』の寿命とともに『回収』され、新たな『恒星』へと生まれ変わっていく。

 それの繰り返しだ。

 

 そうこうしている内に『惑星』や『衛星』と呼ばれる星の中に『生命』が生まれた。それは『マナ』が宇宙へと複雑に拡がるのやめたかの様に、星の内部へと『干渉』を始めたかの様に、まるで『マナ』の気まぐれの様に、『生命』が生まれた。


 ただ『恒星』の寿命はまるで絶対であるかの様に繰り返される『破壊』と『誕生』。『生命』が生まれても、そうでなくても一様にそれに飲み込まれていった。


 どんなに高度な文明を持ったとしても、同じ『マナ』の欠片から生まれたものは『星』だろうが『生命』だろうが一様にそれを回避できないまま、飲み込まれていくのだ。足掻いても足掻いても、まるで掌の上で転がされ続けていく。


 その映像は絶望に近いものだった。地球の一つ前の星の『男?』の記憶が過った。

 『彼』、いや、『彼ら』は宇宙へと『家族』や同胞を逃そうとしたけれど、それが可能だったのかと、この規模の『星』の動きをみれば…… おそらく『彼ら』も可能だとは考えていなかったのではないだろうか、ただ、そこにあったのは『祈り』に近いものだ。

 どんなに足掻いても『星』の寿命には抗えない。知性を持ち文明を持っていても、まるで見えない『鳥籠』の中に閉じ込められているだけ。


 『白い星』の恒星が爆発して生まれたのが『太陽系』で、今、目の前のスクリーンには『青い星』である『地球』が映し出されている。


 どうして『地球』は『太陽』の寿命のはるか以前に自ら砕け散ってしまったんだろう。一体あの時何が起こったというのだろう。


 膨大な映像を見せられ続けて、キャパ越えで、気持ちが悪くなったので休憩を入れてもらった。


 夫君達も表情が抜けている。『星の誕生と終わり』…… それがどれほど膨大な時間の中で繰り返されているのかを考えれば、どうにもならないことだと理解はしても心情的には難しいのは『地球人』の私もこの星の彼らも同じだろう。


 ふうっと大きなため息をついてしまった。

 『生命』は、足掻けば足掻くほど、絶望も深くなるのか。『地球』という星は『絶望』から生まれた星なのかもしれない。


 『白い星』は『地球』型よりかはこの星に近い生命体だった。他者に依存も寄生もすることなく、自己完結型だったし、文明も宇宙に『逃げる』ことができるくらい発達していたんだろう。

 『恒星の最後』に近い状態まで文明を維持できていた事を考えれば、『地球』の様に奪い合うこともなく、文明を破壊することもなかった。緩やかで完成品に近い星だった。

 それでも『恒星の寿命』とともに『白い星』も潰えてしまった。


 『地球』が『白い星』から受け継いだものは『絶望』だったのか。奪っても奪っても満たされることがない。終わりのない欲望は、結局は全てを『恒星の寿命』とともに奪われてしまうことがわかっていたからなのかも知れない。

 同じ『マナ』の欠片から生まれたものは逃げることもできない『鳥籠』の中。

 その結果『地球』を壊し、その結果、もしかしたら太陽系そのものを壊してしまったんじゃないだろうか。


 『白い星』の『恒星』やそれに関する星々から生まれたのが『太陽系』で、その中で『白い星』の持つ生命が生まれる『マナ』の核を持って生まれたのが『地球』らしい。


 生命が生まれる『マナ』の核を持つ星は基本一つだが、『恒星』の規模に合わせて、二つや三つになったりするそうだ。

 太陽系に幾つの『生命』を持つ星が生まれたのかはわからないけれど、確実に一つは『地球』だろう。

 

 スクリーンに映し出された『地球』と呼ばれる『青い星』は本当に美しかった。

 





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