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【感謝!3万PV達成!】虹の聖樹 『大聖女・ハルカ』と夫君達との異世界ライフ♫  作者: 天の樹
第四部 『星の核』と『渡り人』の秘密★
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『始まりの記憶』1


 私の話を聞き終わった四人は一様に顔を見合わせる。その表情は硬い。何かまずいことでも話したんだろうか? 少しの不安を払拭しようと


「ま、まあ、なんていうか、死に直面して脳内がバグって見せた幻影かもしれないし。そ、そんなに真剣にとらえられちゃうと……」


 夫君達は沈黙だ。目線だけで話し合っているようなそんなやりとりがされている。口火を切ったのは最年長のアレクサンダーだ。


「ハルカ、君が見たものは『白の星の記憶』と言われているものだ。おそらく、君が『左』を選択したことで君の記憶を遡り、君の『マナ』に刻まれた『記憶』が見せられたんだろう。君のように『渡り人』が『マナの暴走』から生き延びた人は存在しないからね。本来なら君のいうように死に直面した『脳内のバグ』ということで片付けられてしまうかも知れないが…… ところで、ハルカは『渡り人』がこの星に落ちてくるようになった遥か以前には『青の嵐』という特殊な『嵐』がこの星に定期的に起こっていたと言われている。このことは聞いたことがあるかい?」


 アレクサンダーの言葉に私は以前説明を受けていたことを肯定するように頷いた。


「そうか。それでその嵐の影響を受けた人間には『白の聖樹』と『青の聖樹』という二種類の『聖樹』の刻印が私たちの『聖樹』と同じように手の甲に刻まれたんだ。そして、それぞれが自分の聖樹と付合する伴侶を見つけていた。…… まあ、ここまではこの星では伝説のように言い伝えられていることだが……」


 アレクサンダーは更に言葉を続ける。


「王家に伝わる話は、もっと複雑でね。どういえば良いのか、この『聖樹』で結ばれた伴侶は同じ瞬間に死を迎えたと言われている。互いの『聖樹』を重ね合い、最後は身体も含めてすべての『マナ』がそこに集約されて『聖樹』の紋を持つ一つの『マナ石』だけが残され、それがこの星の『核』の一部になっている。

 つまり、ハルカが今回見た『記憶』は『白の星』の記憶と呼ばれ、『始まりの記憶』とされているものと非常によく似ているんだ。

 その『記憶』は『青の嵐』の時代、『伴侶』を見つけることができなかった『魔力』の強い『白の聖樹』の刻印の持ち主が、君のように『記憶』を遡ることができたらしくてね。そしてその『記憶』は公的記録として映像としても残されているんだ。

 それも数世代に数人だけ、『始まりの記憶』と『青の星の最後の記憶』、そのいずれか一つを見ることができたらしい。そして不思議なことにその『記憶』はどれも非常によく似ているそうだ……」


「その記録は王位継承第二位までのものしか見ることができないんだけどね。私も直接はそれを見たことはないけれど、父王から聞かされたよ。ルイスと一緒にね」


 クリストフが言葉を挟む。それに呼応するかのようにアレクサンダーは、


「そうだな。私とレオンハルト、それと陛下と王太子と第二王子か。私も随分古い記憶だけれど、ハルカの話を聴いてそれを鮮明に思い出してしまったよ」


「ええ。おそらくハルカが見た映像を『絵』にしてもらえるとより鮮明になるだろう」


 レオンハルトが確信を持つかのように首を縦に振った。


「絵? えっと……」


 超苦手分野を披露しろって言われて、戸惑い半分、拒否りたい気持ち半分。なんとも言えず言い淀んでいると


「ハルカの『マナ』で見たものを『浄化魔法』で再現するんだよ」


 ルイスの言葉に再び『?』マークが飛び交う。浄化魔法?


「そう、『マナ』を魔力に変換して音楽を奏でるようにね」


 花祭りの時の…… 言われてみればそういうものを見たことを思い出した。


「今のハルカなら簡単にできるよ」

 

 ルイスが極上の笑みを浮かべてさらりとそう言ってのけた。






「絵に関しては、レオンが詳しいからね。『マナ』を使った描き方を訓練すれば簡単にできるよ」


 ルイスの言葉にレオンハルトが頷いた。


「ハルカの身体自体が『変化』したことで可能になったということですよ」


 クリストフが優しく笑みを浮かべつつ


「私も嗜んではいるのですが、どちらかと言えばレオンの聖剣による『光舞』に近い使い方をするので、レオンの方が適任ですね。私自身、ハルカの『恩恵』によって魔力の覚醒があってから、どちらかというとルイス寄りに近くなっていますし……」


 そう言って、レオンハルトの方を見る。

 

「明日から少しずつ訓練をしてみよう。なんといっても三年も眠っていたから、無理は禁物だ。本来ならもう少し『マナ』を蓄積してからが良いのだけれど、できるだけ『記憶』が鮮明な時に描いた方がいいからね。ハルカの負担も少ない方がいいから」 


 『光の剣舞』か、あれすごかったな。聖剣を使って『浄化』しながら舞っていた。 

 確か『大浄化』が終わって少しした頃見せてくれたレオンハルトの『マナ』による『光の剣舞』…… あれと同じ? あれで『絵』が描けるの? 再現できるのかな?


 夫君達は私の身体が『変化』したからできるっていうけれど、いまいち自分自身この『変化』についていけていない。

 この星にきてから、自分の実年齢との差が開く度に鏡を見なくなっていた。意識との乖離が大きすぎるからだ。

 その上、今回のことで見た目も完全に『地球人』に見えなくなってしまった。強いて言えばヒューマノイドだから、なんとか頑張ってやり過ごしている感じだ。しかも見た目中学生だ。しかも私自身の記憶の中の過去の自分より、身長も骨格も華奢だ。違和感あるある状態なのだ。

 とりあえずは『マナ欠乏症』が完治に近い状況のおかげか、取り込んだ『マナ』の消費はない為、ゆっくりと『成長』できているのが救いになっている。


 ほんと『夫君』達が『父君』達状態なのだ。皆は『営み』が無い分ゆっくりと年齢を重ねているから、歳の差が縮まらない。見た目だけでいえば地球的には問題ありありだ。救いは全員実年齢は六十超えているということか。


 もう少し身体的に『成長』しないと『営み』は難しいとルイスが公言しているからか、どちらかというと『夫』というより『兄』か『父』のように接してくれている。

 現時点で身長が百五十二センチの私と百八十五センチから百九十センチ前後の『夫君』達とではかなりの体格差があるからだ。地球にいた頃の自分は同じ年の時なら五センチほど背が高かったはず。それでも少しずつ身長も伸びてきているのだ。『マナの蓄積量』によるのかもしれないなと自分の脳内にある「『マナ』不思議あるある事典」に書き加えておくことにした。



 その翌日、レオンハルトと私は屋敷の外の敷地内の芝生に広げられた敷布の上に向かい合って座禅を組むように座っていた。

 正確にはレオンハルトは座禅だけれど、私はうまく足を組むことができなかったので座禅もどきだ。

 膝頭がくっつくような距離で向き合ったまま、レオンハルトは私と両掌を合わせて、指もガッツリ握り込んだまま、アースブルーサファイヤの瞳を私から外さずに


「さっき、説明したように私の『浄化』魔力を流し込むから感じてほしい」


 深いバリトンボイスの心地よい彼の声と同時にどっと光の源流のようなものすごい威力のパワーが注ぎ込まれた。

 


 


 『魔力』を体内に流されたのは確かルイスに『マナ』を魔力に変換する時にほんの少しだけ流されたことがあった。とは言え、本当に僅かだった。その時は『マナの供給』するのと『魔力』を流し込むのとでは私にかかる負担が大きいからで『マナ欠乏症』に悪影響を与えるからだと説明を受けていた。どちらかといえばルイス的には私に負荷がかかる『マナの魔力変換』にはかなり抵抗感があったから。私の症状が悪化しないように常にコントロールされていたみたいだった。


 ところが、今回は違うらしい。『変化』後の私は『マナ欠乏症』が完治に近い状況になっているし。容姿の『変化』以上に体質も大きく変化しているようだ。


 だからなのか、レオンハルトの訓練もどこか容赦がない。『マナの魔力変換』がどこまでできるのか、まず現状把握をされた。


 以前は頑張って土いじりまでできていたのが、三年間寝たきりが祟ったのかあれこれ試してもうまくいかない。体内で魔力の流れを感じるのだけれどどこかで寸止まりしてしまうのだ。


 それでレオンハルトが私に彼の『魔力』を送り込んでくれることになったのだ。王族は基本全ての属性魔法を扱えることができるけれど、それぞれ特化した得意魔法を持っている。レオンハルトは属性光魔法で浄化魔法を得意としている。そもそも彼はソードマスターで聖騎士団の団長だったわけだし、私がここに落ちてくるまでレオンハルトが中心になって浄化魔法で魔物や魔獣対策をしていたのだ。


 とはいっても『マナ』を直接消耗していた私の『浄化』と彼の『浄化魔法』は規模が違っていると話してくれたことがあった。

 今回『絵』を書くのはレオンハルト方式なのだそうだ。

 そもそも『絵』とはどうやって描くのか? 訓練に入る前にレオンハルトが見せてくれた。

 いつの間にか彼の『マナ』で作り出された一つの『梨』。彼はそれを私に持たせると両親指と両人差し指とでカメラフレームを作るように構図を決めた。

 次に両手を前面にかざすと両掌から光が放出されたかと思うと目に見えないキャンバスに一瞬で写真を現像するかのように絵のような写真のようなものが再現された。それはまるでホログラムのようだった。


 これはすごいな。こんなこともできるのか。見事に再現された『梨』の写真のような絵をあんぐりと見ている私に、いつの間にか皮を剥かれ、一口サイズに切られた『梨』を私の口の中に食べさせた。

 季節を無視した『梨』はしゃりしゃりと瑞々しく、とても芳醇だ。


「ん、おいしい。ありがとう。レオン。でも、こんなことまでできるんだね」


 眼の前に描かれた『絵』を指差して私が言うと


「それほど難しくはない。見たままを再現するだけだから」


 とにっこり笑顔を返してくれる。


「まずは一度ハルカに私の『浄化魔法』を送り込むから、それを同じように私に送り返してくれ。それが同じようにできるまで繰り返す。そうすることで閉じかかった『魔力』の回線がうまく使えるようになるから」


 そうやって私と向き合うように両掌を合わせレオンハルトが送ってきた『浄化魔法』はとんでもない規模だった。

 まるで強風の日向かい風に抗うようにしないととどまれず吹き飛んでしまいかねないくらい結構な量の『魔力』が私の体中を駆け巡った。

 




いつもお読みいただきありがとうございます。

未だ体調が整わないのですが、休み休みやってます。投稿は不定期になってしまうかもしれません。

当面はこちらの作品のみになりそうです。他作を読んでくださっている皆さん、ごめんなさい。

もし続きが読みたい、面白いと思ってくださった方は、ブックマーク・いいね等よろしくお願いします。

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