『マンデラエフェクト』と『並行世界』1
自分の分も含め三人の地球人と、一人の『地球の記憶』を持つ者への「地球と地球人」に関する質問はそれぞれが同じ次元の地球からではなく、それぞれが異なる地球、つまり『並行世界』からこの星のこの世界線に存在しているということを前提にして作ったものだった。
それを確信したのが『アルフレッド少年』の語る『佐藤久近』という共通する男性に対する記憶だった。
私の既知している『佐藤君』の記憶と情報が『アルフレッド少年』の前世の記憶と大きく異なっていたことだ。
今回私を含めてだけれど、客観的に情報収集する為に、それぞれの世界の情報を回答してもらったのだ。
参考にしたのは、私がこの世界に飛ばされる少し前から日本の、ネット上、いわゆるオカルト界隈でちょくちょく話題に上っていた『マンデラエフェクト』だ。
もちろんその多くは記憶違いだったりもするのだろう。
その中で、私自身も違和感を覚えたものがいくつかあったのだ。
それは人体に関するマンデラだった。
そこで彼らにも彼らの世界の人体構造について質問をしてみた。特に『アルフレッド少年』の彼自身の過去世は医師だったそうだし、『アイコさん』も同じだったと聞いていた。『私』や『彩乃さん』はおそらく一般的な情報や各々の医療を受けた記憶に基づくものだ。なのでどちらかというと医療の専門である二人の回答に注目していた。
それと『あの日』のことだ。私たちがこの世界に渡ってきた日。あの時何があったのか、当時の日本を含めた世界の情勢だ。どこかに何かの原因があるだろう。できるだけ詳細に記入をしてもらった。
とりあえず、この大きな項目について互いの情報を出してもらった。
まずは人体に関することだ。これはわかり易く絵を書いて貰い名称をつけてもらった。
人体図を書いてもらった。頭から足先まで、骨格と内臓だ。そして肺や肝臓、胃や腎臓、心臓の断面図と名称。
医療系はさすが専門家だ、素人とは違い、緻密な絵や説明でわかり易く書かれていた。
そこで判明したのが、やはりというかまさかというべきか…… 私たち四人とも違う世界線から来た可能性が出てきてしまった。
私と『アイコさん』は若干近く、『アルフレッド公』と『彩乃さん』も若干近い。誰が正しいとか、そういうのではなく、ただそれぞれが異なる認識なのだろう。
おそらく地球人である私や『アイコさん』、『彩乃さん』は『光様』の作った医療用のスキャンにかけると構造の違いが明らかになるのではないだろうか?
『彩乃さん』はあれ使ったんじゃないのかな。医療データーとして残っているのかな。そんなことを考えながら、それぞれの描いた人体図を前に腕を組んで唸っていると、レオンハルトとクリストフから休憩を言い渡された。
共有ラウンジには夫君達がすでに席に着いていた。クリストフの作ったモンブランタルトとレオンハルトの淹れてくれた珈琲で一息つく。
「大丈夫ですか?」
クリストフが声をかけてくる。私は夫君達に経過報告をした。流石に人体構造まで違うなんてありえないだろうとアレクサンダーが口にする。
私は『マンデラエフェクト』について彼らに説明をした。
その多くは記憶違いだったりの可能性もあるということと同時に、私自身、少し違和感を感じたこともあったということも伝えた。
「そもそも『並行世界』であったとしても地球は地球でしょう? 歴史や文化はともかく『人体構造が変化する』ものなのですか?」
「そうなんだけどね…… 私たちが書いたものを後で見せるから…… それと『彩乃さん』って私と同じようにこの星でスキャンによる医療データーがあるのかな? もしそれがあれば私と彼女の身体構造の違いが明らかになるんじゃないかな。『アイコさん』も同じように検査を受けてもらえばより明確になると思う。まあ、これもあくまで仮定したものなんだけどね」
記憶より事実(物証)、つまり同条件のこの星の『スキャン』で証明されることの方が確実だろう。
ルイスとクリストフが『確かに』と考え込んでしまった。
「陛下に報告しましょう」
クリストフがそう返事をくれた。そして、夫君達の前に私たちの回答用紙が広げられた。
それを四人の夫君達が興味深そうに見つめていた。
後日フリードリッヒ国王から『彩乃さん』と私、そして…… 『光様』自身のスキャニング医療データーが手元に送られてきた。
おそらく国王自身もこれらのデーターを確認したはずだ。
それを見た私も夫君達も予想していたこととはいえ驚きを隠せなかった。
地球的にはCTやMRIによる画像だ。しかも高画質。
こんなものが作り出せる技術があるなんて、いや、魔法がある世界だから可能なのか。なんでも作り出せるから、おそらく医師である『光様』が地球で仕事していたからこそ、一番欲しかったものを作り出したのだろう、当時の大魔法士であり国王だったバルト・ユータリアの協力のもとに。
ルイスの魔法で映像化された医療データーを見ると『光様』と『彩乃さん』の人体構成はよく似ていた。よく似ているということは同じではないということだ。
医療データーが揃わないので確認は取れないのだけれど、おそらく私と『アイコさん』もよく似てはいるが同じではないのだろう。
そう、これは公的物証である。
この星に記録された『渡り人』の全員が同じ構造をしていないのだ。これには男女の性差は含めない。基本的な地球人としての人体構造だ。
心臓が左にあったり、中央にあったり。若干中央左寄りだったり。肋骨も、胸骨の形状が違ったり、剣状突起や肋軟骨が有るもの、無いもの。頭蓋骨にも
胃と肝臓の位置が逆だったり、肺も左右対称のもの、左右非対称のもの。腎臓の位置の違うもの。小腸の形状も規則的なものと不規則なもの。
それらが微妙に違うのだ。どれが正解なんてないだろう。それぞれの地球人の構造なのだから。
これらが意味することはなんなんだろう。
質問に対する回答用紙とスキャニングされたそれぞれの医療データーを交互に見つめながら信じられない現実をどう見るべきか、正直途方に暮れてしまっていた。
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