ハルカ 「次元の間」のお話9
一年が一日、半年が半日、三か月が六時間、一か月が二時間、半月が一時間。つまり『次元の間』での半時間が約一週間。こう考えるとこの時間のラグは想像以上に大きなものになる。
『彼ら』に会いに行くにあたって、私と夫君達は、一番影響の少ない短時間の面接を複数回行うことにした。
それから『次元の間』から『彼ら』は出る事はできるのかの確認だった。
『アルフレッド公』は森の長老として森の外まで出ることができているのは今回の騒動で証明されている。(何故なら南大公国の城内に入ることができていたからだ)
しかし『アイコさん』が『次元の間』から出ても大丈夫かどうかはわからない。
彼女も軽度とはいえ『マナ欠乏症』を発症していたからだ。
以前私が彼女と話をして時、ほとんど外には出ておらず、ずっと眠っていたと聞いていた。なのでそれを夫君達に話すと、何らかの防護策が必要かもしれないということをルイスが反応した。その防護策を講じることで『彼ら』が『次元の間』から外に出ること、それが可能であるなら『大浄化』の時に使った移動式の簡易のログハウスを南大公国の森の中で置くことができるような手続きを進めることになっていた。
『次元の間』に続くゲートの目の前に設置をして、ルイスが完全結界魔法で隔離状態にするのだ。ただし、建物内は公的記録をされるのだけれど。
十五分経過すればアラームが鳴るように設定をした一見砂時計のような不思議な魔道具をルイスがクリストフに手渡す。
「とりあえず、十五分。これでどのくらいのタイムラグが起きるのかを確認する。『次元の間』では要点のみ。後は手紙のやり取りだ。今回はハルカが用意をした『質問項目』の説明が主になる」
ルイスが確認するように私に確認する。
「返事はどうしようか? 少しの時間だったら、待ってみる?」
「そうだな。それを持って帰って分析もしないといけないんだろう?」
レオンハルトがそう言うと他の夫君達も同意をする。
そうやって準備を整えて臨んだ『次元の間』。
『彼らの家の扉の前』で互いに自己紹介を済ませ、部屋の中へと案内される。
レオンハルトが『彼ら』にタイムラグについて簡単に説明をする。
一日で一年の時間差が生じたことについて、彼らは即座に私達に謝罪をした。
謝罪を夫君達は受け入れた。と同時に『十五分ルール』についても承諾してくれた。
時間があまりないので、私は『アイコさん』に日本語の、『アルフレッド公』は日本語を読む事はできないらしく、この星仕様の質問項目の書かれた用紙を渡した。個別で回答すること、回答後すぐに封書に入れて封印をする事(自動的に封印魔法がかけられること)、その状態で私たちに手渡すことを話し、お願いした。
できればすぐに取り掛かって欲しいこと。ゲートの外で待っているので手渡して欲しいことを説明をした。
質問項目内容についてその場ですぐに二人に確認してもらい、内容が分からなければ、私とルイスが二人に説明をした。彼らは私達を一度ゲートの外へと見送ると、すぐにそれぞれ質問項目に関する回答を始めると言って再び『次元の間』へと帰っていった。
「じゃあ、よろしく」
そう言ってゲートが閉ざされて、一分も経っていないうちにゲートが開き、封印された封書が二人から返された。ルイスがそれを受け取り確認をする。
クリストフは私たちが提案をした『次元の間』から外に出ての話し合いを彼らに説明をした。その間もルイスは周囲に防音魔法を展開させる。
おそらく私たち以外の人間から見える光景はクリストフが見えない空間に向けて話しているように見えるかもしれない。
『アイコさん』には私と同じように『マナ欠乏症』によるフェロモン防止のための魔法が展開されているらしい。『夫君達』が全く無反応だったのは、その為だったのかもしれない。
ルイスが同じ大魔法士同士、ほとんど呪文にしか聞こえない専門用語で色々とアルフレッド公に提案をしていた。それを検討して何らかの策を講じれるかを試してみると返事をされた。
こうして一回目の夫君達同伴の『次元の間』の訪問を終えた。
私はその日の夜、彼らからの回答を読んで頭を抱えることになった。
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