ハルカ 「次元の間」のお話4
時間があれば余計なことを考えてしまいそうになるので、日中はルイスに魔法の訓練とレオンハルトの鍛錬を続けることにした。
そうこうしているうちに夫君達との話し合いから二週間が経ち、ルイスから『アルフレッド様の聞き取りの記録』についての説明があった。
二千年前の記録というのはただごとではないくらいの量をフリードリッヒ国王自ら精査し見つけ出してくれたのだそうだ。
これらの閲覧権は国王ただ一人の為、誰かに手助けを求めることもできないそうだ。
その上、アルフレッド様は『大聖女』と共に行方不明となり、時間が経ち、おそらく死亡したであろうと認定をされていた。
王族に残された記録によると
『青の星の記憶』を持ち、『渡り人・アイコ』様の第一夫君となるが『大浄化』の後、『アイコ』様と共に行方知れずとなる。その後五十年経過を以て死亡とする。
僅か数行のみで記されていたそうだ。普通に死亡処理されていた為、映像の検索に時間がかかったそうだ。『行方不明』のままだと事件案件として映像記録は別扱いになっていて、おそらくもっと早く見つかっていたのだそうだが…… いずれにせよ『渡り人』である『大聖女・アイコ』様失踪に王族が関与しているということに対する事実を有耶無耶にしたかったのかも知れない。と、アレクサンダーが口にする。
もしかすると当時の王族は『アイコ』様と『アルフレッド』様は合意の上で姿を隠したと考えていたのではないだろうか。懸命な捜索という文字も普通なら書かれているはずだ。すでにこの時『アイコ』様は軽度の『マナ欠乏症』に罹患していたと記録に残されていた。
流石に五十年も生き残ることはできないだろう。そう判断された。
ところが『彼』は大魔法士だった。『彼女』を『眠らせていた』と私に話した。とはいえ、食べなきゃ死んでしまうのが地球人。マナを自己生成できるこの星の人間とは作りが違うのだ。定期的に食事を摂らせながら眠らせるという方式をとったらしい。
その話もルイスにした。
まるで童話の世界の『眠れる森の美女』みたいだ。
定期的にマナを供給することで一千年、二千年も生きながらえることが可能だということだ。魔力や魔法がごく当たり前の世界とはいえ、私は彼らからこの話を聞いただけでは流石にその場では否定的だった。
でも『次元の間』というものによって私と夫君達の時間的なラグの事実を考えると、それを完全に否定することは難しくなった。やっぱりここは地球とは違うのだ。
その話を聞いたルイスは少し考えて肯定の意を示した。
どうやら不可能ではないそうだ。ただ特殊な魔法陣を使用していて、禁忌な魔法なのだろうと。
そして、おそらく術者である『アルフレッド』様、彼自身も同様の魔法を自分にかけているのだろうとルイスに説明された。
納得はなかなかできないけれど、一つの仮説として受け入れることにした。
実際、彼らが本物かどうかも確認できないからだ。
なので、今回の『アルフレッド』様の『青の星の記憶』に関するの聞き取り記録と共に彼らの当時の映像記録も確認させてもらうことになっていた。
『マナ欠乏症』を患っている私が王宮に出入りすることはできないので、王宮と私たちの家を繋ぐ遠距離動画配信システムのような魔道具を今回ルイスが開発した。
ただし、このシステムを通じて流される映像は録画して記録することはできないようにされている。
本来は『国王』のみにしか閲覧権がない映像だからだ。
この映像が流出すれば『国王』の首が飛んでしまうくらい危険行為なのだそうだ。単なる譲位すればいいとかではなく、物理的に、である。
それを聞いて、もしかしてとんでもないことをお願いしたのではないかと心底ビビってしまった。先に聞いていれば、お願いしなかったのに……
そんなこんなで国王フリードリッヒの命を危険に晒した動画配信プロジェクトの準備が整ったと連絡が入ったのは『アルフレッド』様の記録の報告を受けてさらに一週間を過ぎた、昨日の夜のことだった。
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