ハルカ 魔法の指輪とマナのゴーグル
『マナ』から魔力に変換をして魔法を使うという訓練は魔法量をコントロールする機能付きの補助魔道具を身につけているとはいえ、『マナ』の消費をする為、訓練時間は一日一時間と制約されている。
普通の訓練なら、魔力が続く限り行われるそうだけれど、それができるのは根源である『マナ』を体内生成出来るか否かの違いだろう。
その辺はただ『マナ』を消費するだけの地球人としては残念なところだ。
昨日は水だったから、今日は火を試してみよう。昨日と同様に『マナの可視化』のゴーグルを装着する。
つけた途端に世界が一変する。何気ない空間が煌めく『マナの集合体』になるのだ。物質の境界線も曖昧になる。さまざまなマナが混在し濃縮され物ができているのがわかる。
それは人間も同じだ。人もまた『マナの集合体』なのだ。
このゴーグルを装着して気がついたことがある。
以前、ルイスによって『マナの可視化』を鏡を通して視た時は、ルイスは強烈な光を放つ人型の光の塊のように視えた。それがこのゴーグルだとさらに鮮明にその光の塊ですらも様々な色をした光の集合体見えるようになった。
瞳の色が『マナ』の色の違いを表しているんじゃなかろうか? そのことに気づいたのはたまたま共有ラウンジでみんなが一緒にいた時にゴーグルをつけて夫君達の姿を見た時だった。最初、単なる人型の光の塊が四人分あったとだけ認識していたのだけれど、会話をしたり体を動かすだけで、それぞれが微妙に異なった色合いの『マナ』を時々放つことに気がついた。特別魔法を使っているのではない、何気ない日常的な動きをしているだけだ。
ゴーグルをつける前は、夫君達は骨格差は多少あったけれど、ゴーグルを装着すると『マナ』や魔力量がよく似ている彼らは実物のような差は感じられない。おそらく単なる光の塊認識なら動作をするまで誰が誰なのかの区別は難しいだろう。
ただし、『マナ』の微妙な色合いの差が夫君の特定が可能にしている。彼らが口を開き会話をしたり、動作をするだけで瞳の色合いの『マナ』がより強い光を放っていく。
みんなは私に比べると遥かにパワフルで比べ物にならないくらい光り輝いている。羨ましいくらいだ。
この前姿見用の鏡に映る自分の『マナ』をゴーグル越しで見た。
そう、これが見えるんだ。視えた時には感動したけれど、なんというか以前に比べると流出量は増えている。でもといえばいいのか、夫君が一人増えてその分供給量も増えているからだろうか、私本体の『マナ』の量は増えていて、輪郭も少しだけはっきりしている。ただ流出量も増えていると言った感じだ。私の『マナ』は夫君達の色が強くなってきていた。琥珀色も増えている。ああ、これは彼らの内側にあるマナの色だ。この『マナ』の色合いを見てしまうと自分が彼らによって生かされているんだと実感させられてしまう。
身体からキラキラと煌めいて漏れていく自分の『マナ』は綺麗だけど、それは『死』に向かっているということを意味する。それが半端ないくらいの恐怖心を呼び起こしてしまう。感情が揺れると『マナ』も揺れ動く。
こういうのを見ると地球の科学とかなんだったんだろうと思ってしまう。ここの人はこの『マナ』は空気のように普通にある物だからだろうか、科学でそれを解き明かすというよりは、自由自在に操る方に重きを置いているような気がする。
そんなことを思いつつ、今日の課題の『火の魔法』の訓練をする。
指先に赤い光線を流し込む、指先があったかくなると今度は空中の一点を指先に流れる赤い光線が交差するように流し込んだ。ぼうっと音を立てて空中に小さな炎をが灯る。
おっと、成功した? 今度は青い光線を指先に流し込みその炎目掛けて放つ。一瞬で水によって火が鎮火される。
自分でできたことに感動しつつ、今日の訓練を終えた。
水と火が使えるようになったら、あとは風と土? あとは色々組み合わせもできたらいいな。風は緑で、土は黄色だっけ。
何かの種を植えて育ててみようかな。その前に鉢植え用の鉢も作ってみよう。
沸々とやってみたいことが湧き出てくる。ああ、これはいいな。
ご機嫌になってしまう。『魔法の指輪』と『マナのゴーグル』。これのおかげでここでの人生も楽しめそうだ。
ちょっとずつ前進できたかな。やっと自分で自律呼吸ができるようになった気がした。
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