ハルカ 新婚二日目で別居?
今日は二話投稿予定です。二話目は夕方に投稿予定です。
このお話には一部暴力的表現も入ります。ご注意ください。
アレクサンダーが唇に口付けてくる、軽く何度もハミングキスを繰り返しつつどんどんキスが深くなると同時に濃厚な果汁酒のジュレのようなエネルギーに押し流されそうになるのを必死に踏みとどまる。
「ん? ハルカ?」
少しいぶかしそうに私をみるアレクサンダー。
「んとね、アレク、ちょっと確認しておきたいんだ。今ならまだ大丈夫だから……」
一体何のことだ? といった顔をするアレクサンダー。
「貴方は自覚がないんだろうけれど…… こういうのは側から見て気づいちゃうんもんなんだよ、ごめんね。多分…… あなたは他に気になっている女性がいるんじゃないかな。奥方達とは別に」
「ハルカ……」
「ん〜〜具体的に言っちゃうと、たぶん、貴方は『アヤノ』様に気持ちがあるんだと思う。それも決して軽い気持ちじゃない。指輪も足飾りもこの服も、私じゃない誰かを思って作られていると感じてしまうんだよ。微妙に聡くて申し訳ない。まあ、こちらが逆指名しちゃったから、私のこと考えて断れなかったのかもしれないけれどね」
じっと私の顔を見つめるアレクサンダー。少し、愕然としている。新婚二日目で、気がついてしまってごめんなさい。
「あ、あのね。アレク。もしもの時のための手続きはされたんだと考えて……」
続きを唇で塞がれる。
怒った? そうだよね、こんなこと言い出しちゃうのは失礼だってわかってる。抱きしめられ、貪るように口づけを繰り返す。圧倒的なエネルギーが押し込まれていく。拒みきれず、それに酔いしれそうになってただアレクサンダーにされるがままになっていく。抵抗を感じなくなって初めてアレクサンダーが唇を離す。その深いグリーンサファイヤの双眸に琥珀が混じっている。
「ハルカ。確かに私は彼女に惹かれている」
うん、わかってる。貴方は彼女に恋をしている。
「だからこそ、彼女のためにここに来たんでしょ? 彼女を守るために私を延命させるために。自分を犠牲にした」
私の言葉にアレクサンダーは目を見開く。
「図星すぎた? だけど、もしそうなら、貴方は十分役目を果たしたと思う。好きではない女性と情を交わす。恋をする相手がいるならそれは地獄だったと思う。そんなことをさせてしまって本当にごめん。これ以上はやめておこう。彼女の元に帰った方がいい」
今引き返さなければ、彼は後悔するだろう。
「大丈夫、『マナ欠乏症』はそんなにすぐには悪化はしないから」
アレクサンダーは私の言葉をじっと聞いている。
「どうしてそんな酷い仕打ちができるんだ、ハルカ。どんな思いでここに来たと……」
自分が言い出したことだったから、断れなかったんだよね。『アヤノ』さんのことをずっとそばで見ていたかっただろうに。私が逆指名しなければ良かったんだよね。うん。罵ってくれていいよ。酷い『渡り人』もいたもんだって、罵詈雑言浴びせてくれてもいい。
「本当は全部、全部ひっくるめて受け入れようって思ってたんだ。
でも「アヤノ」さんを思って愛おしげに微笑む貴方を見て、今ならまだ引き返せると思ったんだよ。
自分の気持ちを殺してまで私を抱く、そんな貴方を解放すべきだと思ったんだ」
私の『解放』という言葉にアレクサンダーは泣きそうな顔をした。
「人の気持ちは他者には変えられない。特に恋心は宝物のようなものなんだよ。誰にも奪えないし、傷つけられない。だから、私は、貴方が彼女を思い続けてもいいと思う。自分のものにならないかもしれないけれど、恋をするのは自由だ。
私は彼女がここでの人生を安心して幸せに過ごしてほしいと思っている。
だから彼女の絶対的な味方、アレク、貴方が彼女のそばでいてほしいと思ってしまうんだ。彼女のためにここに来た貴方に、彼女のために彼女のそばに戻ってほしいだなんて、勝手なことを言ってるけど……」
再び唇で言葉が塞がれる。
圧倒的な力で組み伏せられる。びりびりっと服が裂かれていく。声が出ないように唇を塞いだまま、あっという間に身に纏っていたもの全てを引き裂いていく。その激しく感情に任せた行為に、ギュッと目を瞑る。
ふっと唇が離れ、ポトリポトリと顔に何かが落ちてきた。
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