夫たちの秘密の会話②
今日は二話投稿します。二話目は夕方に投稿予定です。
謁見から戻ったレオンハルトは自室に閉じこもってしまった。
ルイスとクリストフが何事かとレオンハルトの部屋に入ったまま、彼らもそのまま部屋から出てこない。耳をそばだてて見るが防音魔法を展開しているのか、全く聞こえない。
何か問題でもあったんだろうか?
レオンハルトの部屋から出てこない三人を心配しつつガラス越しに降り注ぐ太陽に背を向けて光合成(日光浴)をしながら、うとうとと眠りに落ちていく。
一方、レオンハルトの部屋の中では夫君三人が激しいやり取りをしていた。謁見の場で提示された『ハルカ』の新たな夫君についてだ。
「なぜ叔父上がそんなことを。いくら何でも越権行為だ」
「ルイス。叔父上にはその権限がある。口を慎め」
「元第二王位継承者の「渡り人に関する」特権ですか」
「そうだ」
「だからといって…… 『ハルカ』は既に彼女のなすべきことを果たしたじゃないか」
「ルイス『大厄災』の兆候が見られるんだ」
「『大厄災』?」
「ああ、お前も領地から報告を受けているだろう? 大海に大量の星の欠片が降り注ぎ瘴気の嵐が吹き荒れていることを」
「それは……」
「『ハルカ』の大規模な『浄化』と魔法士団の張った結界でその影響を受けてはいないが、万が一ということもある。『アヤノ』様の力が発現していない以上、『ハルカ』の力を確保したいという大公の考えは国防を考えれば当然だということは二人とも理解できるはずだ」
「だからと言って『ハルカ』に負担がかかりすぎてるのでは? 『アヤノ』様は何故力が発現しないのですか?
夫婦仲がうまくいっていないのでは?」
「クリス…… いや、それはうまくいっているそうだ。ただ大公は過去の渡り人の力の発現状況も調べたそうだ。ただ、あくまで大公の調べたもののみなので実際はこちらでも情報収集をして検証したほうがいいだろう。
大公が言うには力の発現には条件があるらしい。一番の条件は『マナ欠乏症』を発症しているか否か。『ハルカ』のように『浄化』による『マナ欠乏症』の発症や『妊娠・出産』を経て『マナ欠乏症』を発症するか。いずれの場合も『マナ欠乏症』を発症後、閨で『恩恵』があったと記録に残されているそうだ」
「つまりは『命の代償』による『恩恵』と言うことか」
「そういうことだな」
「『ハルカ』は『アヤノ』様にはそれを望まないだろう。それくらいなら自分がと背負い込んでしまいそうだ」
「「「確かに」」」
「ルイス、『ハルカ』の症状はどうなんだ?」
「よく眠っている。彼女にいわせてみれば夜の営みが激しいからだそうだが、それだけではないんだ、明らかに『マナの流出』が微量とはいえ増え始めている。状況的には良くはない」
「夫君が増えたからといって、改善されるものなのか?」
「ああ、おそらく。大公の説は正しい。『マナ』の形状は人によって様々だからね。異なるマナが供給されれば、流出量は減るだろう。『マナ欠乏症』が進んだ場合の延命措置の一つに挙げられてはいる。だからといって望まない供給は症状を悪化させるから危険なんだ。つまりは『ハルカ』次第だ」
「他に方法はないのか?」
「探してはいるけれどね」
「『ハルカ』に今話しますか?」
「そうだな。そうしたほうがいいだろう」
三人はレオンハルトの部屋から出てくるとリビングの机に突っ伏すように眠り続ける『ハルカ』を見た。その瞳は先ほどまでの厳しいものから一変し愛しいものを見つめるのもへと変わっていた。ルイスはすぐに『ハルカ』を横抱きにし、ラウンジのソファーへと寝かす。
そしていつものように夫君たちは食事の用意に取りかかった。
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