ハルカ 異世界でロイヤルファミリーと歓談する
今日は二話投稿です。二話目は夕方に投稿予定です。
そんな彼らの思惑を知ってか知らずか、四人はお披露目会場の入り口近くに転移をしていた。念の為入場前のチェックを受ける。なぜか正面に大きな鏡がある部屋に通される。
三人の夫達が舌打ちをした。慌てて振り返ると三人が鏡を前に立ちはだかるように立つ。クリストフが鏡に向かって声を出す。
「陛下、困りますね。そんなところから覗き見は良くないですよ」
覗き見? あ、マジックミラーなのか、これ。
ルイスが指先一つで鏡に何かを仕掛けると、鏡がガラスに変化する。
まるでTVの刑事ドラマの取調室みたいだ。
ガラスの向こう側に人がたくさんいた。レオンハルトが私に耳打ちする。
「王家の皆です」
お披露目会に出席出来ない、王家直系のファミリーメンバーらしい。そういえば来て早々別宮『月の光』でお世話になった王妃様達がいる。
中央に、レオンハルトやルイス、クリストフとよく似たダンディな美丈夫が座っていた。銀髪に琥珀の瞳。ホワイトライオンみたいだ。確か六十歳超えているって聞いていたけど、全く見えない四十後半、いやもっと若く見える。
何だ、この王族美形率高すぎるだろう。すごい目の保養になる。国王フリードリッヒのあまりの美しさに目を奪われていると、夫三人から恨みがましい目で見られた。
「ハルカ、気が多過ぎる」
「だから、陛下には会わせたくなかったんですよ」
ルイスとクリストフから叱られてしまった。ガラスの向こう側も夫達の慌てぶりにみんな吹き出していた。
「ルイスやクリストフでもそんな顔をするのだな」
ガラス越しなのに聞こえる声は明瞭だ。レオンハルトよりさらに一段階低い、色気のある成人した男性の落ち着いた声だ。声まで美声なのか。やば過ぎるだろう。
「お前達、隠すな。『ハルカ』様と話ができないではないか」
三人は高い壁のように立ちはだかったままだ。
「レオンまで…何をしているんだ」
「陛下、そのままでお話しください」
「何だ、自信がないんだな、お前達」
「「「………」」」
鏡越しに恐らく妃達だろう、女性の笑い声が聞こえてくる。
うわっ、ちょっと恥ずかしいんだけど。流石にこの状態は良くない。
「あいさつさせてほしいんだけれど」
夫達の背中に向かって呟く。その声に反応してレオンハルトが少し情けなさそうな顔をして振り返る。大丈夫だから。と安心させる。ようやく夫達が私の後ろへと移動した。
中央目の前に国王夫妻、その隣は多分王太子夫妻。その子供達も。もう片方には二十代後半から十代半ばまでの十人の王子達と四人の姫が座っている。その後ろには国王の側室達と王太子の側室達。いわゆる現王家ファミリーだろう。ガラスの向こうに勢揃いして迎えてくれている。
「初めまして、国王様、王妃様、そして王家の皆様。ご挨拶を申し上げるのが非常に遅くなり、申し訳ありませんでした。『地球』から縁あって渡ってくることになった『高瀬春香』と申します。こちらでのたくさんのご厚情にご配慮に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました」
深く深く感謝を込めて礼をする。直接的ではなかったとはいえ、王家の庇護がなければこうやって安全な日々を暮らすことはできなかったのだ。感謝の言葉しか出てこない。
「『ハルカ』様、頭を上げてください。私はユータリア国国王フリードリッヒ・ユータリアと申します。
この度の大陸全土にわたる大規模な『浄化』をしていただいた『ハルカ様』に国民を代表して感謝をお伝えするべく、この場を強引に設けさせていただいた。本来なら直接あなたに礼を伝えなければならないところ、このような形でしか伝えることができないことを申し訳なく思います。
本当にこの星のために、国民のために命をかけて『浄化』をおこなっていただきありがとうございました。」
国王フリードリッヒは座したまま深く礼をした。それに倣うようにガラスの向こうにいるロイヤルファミリーだけではなく三人の夫達も私に対して最敬礼をした。
国の代表が異世界から渡ってきたおばちゃんに感謝と共に頭を下げる。そんなことが起こるなんて信じられるだろうか?
「どうか頭をお上げください、陛下、そして皆さん」
慌てて声をかける。
「よかったです。お役に立てて」
それから時間はそう長くはなかったけれどガラス越しに歓談が始まった。
私は、別宮でお世話になった王妃様や他の妃の皆さんに改めてお礼の言葉を伝えることができた。国王様や王妃様、妃の皆さんにお礼が伝えられただけでもここにきた甲斐があったなと思った。
短いロイヤルファミリーとの歓談の後、いよいよ舞台はお披露目会場へと移った。
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