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【感謝!3万PV達成!】虹の聖樹 『大聖女・ハルカ』と夫君達との異世界ライフ♫  作者: 天の樹
第二部 ハルカ『異世界で余生ライフ』が始まる♬
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ハルカ 異世界の大晦日と元旦 と北大公国の収穫祭(節分と立春)★

物語の流れ的に「ハルカ 北大公国の収穫祭」と一つにまとめました。


 異世界の大晦日は西の大公国で過ごし、元旦は東大公国の岬で初日の出を見ようということになった。

 夫君達は『渡り人』の記録や青と白の星の記録等から日本の年末年始のしきたり?に倣おうってことに決めたらしい。まあ、それもここに一人渡ってきた私の気持ちを配慮してくれてのことだった。

 流石に宗教関連は無理だったけれど、年末の年越しそばとか年始の『おせち』作りをみんなでわいわい言いながら作った。


 大陸の端から端に移動するので本来ならあり得ない距離なのだけれど、まあ、それは大魔法士のルイスにかかればいつもの如く屋敷ごと結界を維持した状態で転移魔法で瞬時に移動できてしまうのだ。あっぱれとしか言いようがない。


 ここにも無宗教なのに鐘が昔からあって、無宗教なのに大晦日の夜、ここでは昼八つ(午後十一時)からみんなで鐘を鳴らすのだそうだ。

 さすがに百八つとかは決められていないそうだが王都と十の公国にそれぞれに一つその鐘があって、領民達がそれを鳴らすという風習があるそうだ。そういうのを聞くと不思議な気持ちになる。


 うちは両親が商売をしていて、大晦日は早仕舞いで、元旦だけは休みで、家族で母の作った『おせち』を食べて初詣に行ったんだという子供の頃の話をする。

 自分たちが子供の頃はお正月はほとんどお店をしていないところが多かったけど、最後の方は休んでいるお店の方が珍しいくらい、みんなが忙しなく働くようになっていたよ。今思えば、もっと皆、時間や大事な人との関わりを大事にしていればよかったのにね。何気ない日常がこんなにも残酷にあっという間にあっけなく壊れてしまうなんて…… 本当に何やってたんだろうね、私達は…… そういうとレオンハルトがギュッと手を握りしめてくれた。


 屋敷で、家族皆で年越しそばをいただいてから、西大公国の年越しの鐘を鳴らしに皆で公国の中心にある広場に向かう。

 ルイスの作ってくれたローブを着て、結界魔法を張って、容姿の認識阻害魔法をかけてもらっての重装備だ。夫達も揃えるかのように同じ色彩のローブを着ている。多少なりとも私のフェロモンの影響を受けていることを想定しての結界魔法付きのものらしい。

 自分はともかく超美形の夫君達がエレガントにそれを着こなしているのはフードで顔が隠れているとはいえ、フェロモンダダ漏れなのもあって、老も若きもご婦人方がこぞって振り返っていく。

 すんごい目立つ。認識阻害をかけているのに目立つってどういうことなんだ? 誤魔化しきれないオーラでも放っているのか。三人の夫君達の影に隠れてオーラも何もない私はおとなしく彼らについていく。上手に気配を消そうとすると何故か夫君達がそれを阻止してくる。そこで周囲の人たちにもオマケが一つくっついてるなと認識される。といった具合だ。

 領主のクリストフは領民達もわかるらしく、近づいてきては挨拶を交わしている。その時は私たち三人は少し離れたところで待機する。

 領主様が結婚したのが『渡り人』様というのは周知されているので、鐘を鳴らしに大勢の人がいる中でそれがバレるとパニックになる。クリストフは切れ目なく挨拶を交わしているが、そんな中、レオンハルトに先に行って鐘を鳴らしてこいと合図したらしい。それを受けてレオンハルトとルイスの三人で先に鐘を鳴らしにいくことにした。

 両手に花というより迷子防止のために手を繋いでいる感ありありの状態のまま、鐘のある場所へと移動をする。思っていた以上に大きい鐘で、ほんと日本のお寺にあるような吊るし鐘で除夜の鐘のように丸木で叩いて鐘を鳴らすのだ.


 え? 宗教ないって言ってたよね。 誰発想って思うくらい、日本の年末の風景がそこにあった。

 思わず大晦日恒例の『ゆく年くる年』のナレーションシーンが浮かんできてしまった。


 まあ、いいや。今年は色々ありすぎるくらい人生が激変したけど、来年は穏やかで平和な年になりますように。夫婦仲良く暮らせますようにと願いながら鐘をついた。

 少し遅れてクリストフと合流をして、鐘のある広場には屋台も色々出ていたので、そこで少し買い物をして屋敷に帰った。


 私の異世界一年目の大晦日はこうして過ぎていった。


 夜五つ(午前五時)になった時、レオンハルトに起こされた。眠っている間に今度は東大公国へ屋敷ごと移動したそうだ。夜明けまでにはまだ時間があるから。といいながらホットミルクを入れてくれた。身支度を整えてからキッチンに行く。


 夫君達三人に『明けましておめでとうございます。今年もよろしく』と新年の挨拶をする。夫君達も同じように挨拶を返してくれた。『日本の正月』という本で勉強したらしい。

 挨拶が終わると再びルイスとクリストフはキッチンで何やら作り始めている。聞くところによるとお雑煮作っているとのこと。うちは白味噌ベースに少し赤味噌の合わせ味噌に小松菜と里芋に丸餅のお雑煮だったと話をしていたからか、それにチャレンジしてくれているらしい。

 その気持ちだけで嬉しいよ。お赤飯も炊飯中だそうだ。

 そうそう、お餅も餅米と餅つき機は購入して、作ったのだお餅を。亡くなった母も餅つき機をつかって鏡餅からお雑煮用のお餅も作って正月支度をしていた。懐かしい。自分の原風景をふくん達がちゃんと大事にしてくれるっていうのはすごく嬉しい。それに彼らはとにかく本格的だ。

 『おせち』も下ごしらえから始まって色々なカタログからレシピを取り寄せつつ、自分たちで作っちゃうんだもんね。すごいわ。さすがにお刺身や生もの系はないんだけど。でも色々工夫してくれて、お重も作って、それに綺麗に盛り付けている。四人分だから、ボリュウムもある。あっという間にテーブルの上が華やかになった。


 そうこうしていると夜明けの時間が近くなったらしい。

皆でテラスに出る。岬の上に東の海に向かって屋敷を置いたらしい。建物全体に結界魔法が構築されている。それとは別に私が浄化をした後に張り巡らされた大陸全土をドームで覆うように展開された結界壁が真っ暗な夜の闇と陸地を分け隔てている。

 海の闇は夜の帷だけではなく瘴気によるものでもあった。そのためか夜空には星も瞬くことがない。月の光すらも海の上では闇に吸収されてしまっているように光を半減させている。

 そんな闇で覆われた海の水平線を突き破るかのように一筋の光が放たれる。夜明けだ。決して力強いものではないけれど、太陽は闇に覆われた海に希望を与えるかのように姿を現した。


 思わず手を合わせる。ふと見ると夫君達も同じように手を合わせていた。それから皆で顔を見合わせ『今年もよろしく』ともう一度挨拶をした。

 そして私は夫君達に自分で作った『虹色の魔石』を贈った。皆すごく驚いたけれど喜んでくれた。


 それから時間的には早いけれどお屠蘇に始まって夫君達と日本の正月とかの話をしながら『おせち』を頂いた。めちゃ美味しかった。


 こうして私は異世界で初めての正月を夫君達三人と無事迎えることができた。





 春の二つ目の月の三日目(地球的には二月三日)、今日は『北大公国』の収穫祭、ルイスの領地のお祭りだ。ということでレオンハルトもクリストフも一緒に収穫祭に行くことになった。とはいえ、あくまでお忍びだ。

 ルイスにしてもこの祭りが公的な祭祀とかではないので、基本領民に全てを任せて楽しんでもらうという類のものらしい。

 まあ、そもそもその祭祀というもの自体がこの星では存在しないのだ。要するに単なるお祭りということだ。

 こういう機会を兼ねて領民同士の恋の出会いもあるということらしい。道行く若い男女、おそらく未婚の人達は胸に白と赤の花を挿している。男性が赤。女性が白。気に入った相手にそれぞれの花を贈り、両思いならお互いの花を交換するらしい。そうやってカップルが生まれていくそうだ。ルイス達がそう説明をしてくれた。


 ふと見ると街角の至る所で若い男女が花の交換をしている。中には断られてしまう男性もいた。

 あれ、どうするんだろうって思っていると、他の女性に渡してたよ。いいのか、そんなので。思わず苦笑いをしてしまった。

 カップルが成立すると一緒に手を繋いで祭りを楽しんでいたり、どこかに消えていったりしていた。

 若いっていいなあと思いながら彼らを見ていると、三人の夫君はいつの間に用意していたのか赤い花を胸に挿してくれた。三本も挿してもいいのかなあ…そう思いつつ、通りにある花屋の出店のような場所に行って白い花を三本購入した。三人の夫の胸のポケットへそれぞれ挿していく。

 レオンハルトとクリストフが何か飲み物を買ってきますとそばを離れるとルイスがそっと手を絡めてくる。恋人繋ぎだ。

 特に会話することもなく流れていく風景を眺めるようにただ手を、そこにお互いが存在するのを確認し合うかのように指を絡め見つめ合う。ただ、それだけなのに、周囲の喧騒が消えて、時間が止まったように感じてしまった。


 私達の姿や顔は認識障害魔法というものがかかっていて、周囲からは誰かと特定できないようになっている。もちろん媚薬フェロモン拡散防止のための結界魔法もかけられている。そんなことも影響しているんだろう。そこに私達がいるのにまるで誰もいないかのように人々が通り過ぎていく。不思議な空間が生まれていた。

 そうこうしているうちに二人がドリンクと軽食を持って帰ってきた。ドリンクはお酒だ。

 昔ウィーンのクリスマスで飲んだPunschプンシュ、柑橘類のフルーツジュースにラム酒を入れたホットドリンクのような口当たりのいいドリンクだった。美味しいねと互いに顔を見合わせながら軽食をつまみながら互いのことを話す。たとえば、飲んでいるドリンクについてだとか屋台の食べ物についてだとか。

 お祭りはその国の文化を表すものだ。話を聞くだけではなくこうやって自分の目で見て感じるものは大事なことだ。

 彼らは領主でもあるのでそういう意味で領民の現状把握も兼ねているのだそうだ。屋台の主人に今年はどうだとか尋ねて情報収集をしたりしているらしい。ただ遊び心満載で参加しているのはこの中では私だけらしい。

 まあそれも彼等らしいと思えるのは中身がおばちゃんだからかもしれない。

 そういえば亡くなった父もよく年明けの初詣とか地元のえべっさんのお祭りに家族で行った時、よくこうやって屋台のおじさんや家族で乗ったタクシーの運ちゃんに『今年の人の流れ』を聞いていたな。と懐かしい記憶と夫君達の重なった。


 実は収穫祭への参加は家ごとの移動だった。ルイスの管轄している領地内なので問題はないのだけれど…… 結界魔法を張っているとはいえ、セキュリティーの問題もあるということで、本来の醍醐味である地元の宿屋へお泊まりは叶わなかった。残念。

 ただお食事処への利用は自由だったので、ルイスお勧めのお店に入って舌鼓を打ちながら楽しく過ごした。

 『浄化』作業が終わり、しかも『恩恵』もバンバン放った効果で、今年は森の幸も豊富だったらしく収穫祭もものすごく盛り上がったそうだ。そんな話をお店の人やお客から聞いて、よかったなあって思ってしまった。

 大公国はどの国も海に面して巨大な森が自然の結界のような役割を果たしているそうだ。ただそこに瘴気が蓄積してしまうと泉や河川、つまり水源がが汚染され、そこに住む動物達が魔獣や魔物に変化して周辺の村を襲うようになる。

 なので、今回は全ての大公国で『恩恵』による『浄化』を行った結果、森本来の強固な自然結界も再生できたんだと夫君達から説明を受けた。


 そして、この収穫祭は地球でいう四季ごとに四つの大公国が順を追って開催するそうだ。いわゆる四季の始まりを暦のように知らせる役割もあるみたいだ。

 「北が冬」「東が春」「南が夏」「西が秋」といった感じで大公国で四季の祭り、収穫祭が行われるということらしい。

 次はレオンハルトの『東大公国』で三の月後(いわゆる三ヶ月後)にあるそうだ。

 その時はまた皆で行こうね。ということになった。


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