ハルカ 虹色の魔石
ルイスとの魔法の訓練は地道に続いていた。その結果、魔石の原石に魔力を注入していくことも最初に比べると少しはマシになってきた。
とはいえ夫君達のように一瞬で原色のような濃い色の魔石を作れるのとは全然違う物凄く脆弱な色味の魔石だ。がっくりしてしまう。
それを見たクリストフは
「ハルカのマナに負荷がかからないように、大量に魔力が出てマナを消費しないように指輪で調整されているからね。仕方がないです。気を落とさないで」
そう慰めてくれた。
ああ、なるほどそういうことなんだ。と納得できたから、あまり無理をすることをやめた。負荷がかからないように地道に訓練を続けていけば魔力の回線も自然と太くなって、負荷がかからないように放出される魔力量が増えるらしい。
魔力の色も色々試してみた。
大体五、六色が基本らしいのだけれど。それを無視して基本十二色、いわゆる色鉛筆カラーの基本色をイメージしたレーザー光線を魔石の原石に注入していく。
それを夫君達が鑑定してくれる。聞くところによると私の作る貧弱なカラーの魔石は複合的な力を持っているらしい。
特に七色の色の虹カラーのレーザー光線を一つの石に注入したものは所謂高度の治癒魔法を使いこなせる魔石になったらしい。
制限があってもそこそこの力が出せる魔石だったらしく、これが無制限なものだったとしたら、私が『浄化』したのと同じ効果が生まれるのではないかと夫君達が口にする。ただ、それだけの力を受け入れるだけの魔石の原石は見つからないだろうとルイスは言った。
無制限のマナの魔力化。
それは『マナ欠乏症』に罹患していなければ可能だっただろう。今の私がするとなったら自分の命と引き換えだ。ただ事態は切迫するどころかその必要もないのだ。そもそも現時点で大規模な『浄化』は終わっているのだから。
レオンハルト達は今回の『大規模で高濃度な浄化』は長期間この大陸を守護し続けると断言している。それがわかっているから、可能性はあっても夫君達は私には絶対させないだろう。
彼らがいっているのは未来の可能性のことだろう。私ではない、未来に渡ってくるであろう『渡り人』。
私がしているのはあくまで試作に過ぎない。それをするのは『渡り人』の可能性を探るためだ。
『マナ欠乏症』を患った時点で私の自立は完全に不可能になった。ただ、こうやって試行錯誤で検証することで、未来に渡ってくる誰かが自立できたりこの国で暮らしやすい環境が整えることができればいいと考えたから。
実際の話、私が作った魔石は貨幣としては使えないそうだ。注入される魔力がありえないくらい少量だかららしいのと複合的効果のある魔石は市場に混乱を招くだろうという判断によるものだった。
つまりは夫君達の作ってくれた魔石でお出かけの際のお買い物をすることになったというわけだ。まあ、いいや、仕方がない。そう言いながらも今日も魔石作りにチャレンジしている。
実は夫達に自分のマナで作った魔石をプレゼントしようかなと考えたからだ。虹カラーもいろんな色味でパターンを変えて注入することにした。原石の大きさも小さければ色味が濃いものができることもわかったので、夫君達に贈るものは出来るだけ魔力が強いものを作りたい。そう思って、夫君達のことを色々考えながら、それぞれへの想いを込めながら魔石作りに励んでいる。
こういう時間も愛おしく思えるくらいここでの生活が自分の人生の彩りを与えてくれているんだなと不思議な気持ちになった。