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【感謝!3万PV達成!】虹の聖樹 『大聖女・ハルカ』と夫君達との異世界ライフ♫  作者: 天の樹
第一部 ハルカ『異世界ライフ』が始まる♬
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ハルカ 『渡り人』の謎


「『マナ』とは生物が本来持っている生命力、それと魔力を総称するものです」


 大魔法士殿によるとこの世界の人々は魔力の大小はあれ皆『マナ』を持っている。つまり呼吸をするかの如く全員魔法が使え、自ら『マナ』を生成し、思うままに『マナ』や魔力を物質化できるとのこと。


 空中から物がいろいろ出てくるのも『マナ』と魔力を使った『魔法』によるものらしい。『渡り人』にもその『マナ』がある。ただ、魔力がないので魔法は全く使えない。そして自ら『マナ』を作り出せない…… 

 『渡り人』の場合は、生命力である『マナ』を使って『浄化』をするらしい。

 なので『渡り人』の寿命は短かったそうだ。

 それを改善する策として魔力の強い王族と婚姻をして『マナを供給する』という方法がとられるようになったと記録されていると説明を受ける。その代わりに王族との間に子供を設けている云々ということを宰相殿が口にした瞬間


「それ、私は無理、不可能です。既に閉経しているので子孫残せません」


 再び三人の眼が大きく見開かれ私を凝視する。

 男性と違って女性には妊娠出産には年齢制限がある。それに私は結構早めの閉経だったので、結婚も出産も早い段階から完全にあきらめていた。なので『渡り人』様だろうが『大聖女』様だろうが、できないものはできない。 

 あまりにも平然としているからだろうか、どう声がけすればいいのか三人がためらっているのがよくわかる。


「なので、それを前提に『保護』してください。そうすれば全力で『浄化』に協力します」


 と、ぺこりと三人に頭を下げる。沈黙の後、宰相殿がふっと軽く息を吐く。


「わかりました。その件は一度陛下に持ち帰って相談いたします」


 そう言うと軽く私に一礼をする。


「ではもう一度確認します」


 テノールのいい声が続く。


「『大聖女』様のお名前はタカセハルカ様。ご年齢は五十五歳。お生まれは日本。成程…… 先の光様もですがこちらに渡られる多くの『渡り人』同じ国から来られています。そして不思議な事に同じ日付けでこちらに来られているようですね。その日にそちらの世界で何があったのでしょうか」


 同じ日付? あの日に渡ってきた人が時代を異にしてバラバラでここに来たということ⁇


「三千年も前に来た人も百五十年前に来た人も…… 皆全て同じ日にここに来たということですか?」 

「はい、記録上は」

「日本以外の国から来た人も?」

「はい。数例ほど」

「二〇二X年三月X日に、全ての『渡り人』がここに時代を超えて移動したということですか?」

「記録上ではそうなります」

「なので、ハルカ様はどのようにこちらに来られたのか、どうかその時の様子をお聞かせ下さい」


 私はこの世界に来る直前の様子を説明した。


「つまり…… 黒い影が地面にあって、他の人が平気でその上を行き来していたのでそのまま通り過ぎようとした時、白い閃光と同時に誰かに押されてバランスを崩し、地面が陥没してそのままご自身も落ちてしまった。気がつけばこちらの世界で、レオンハルト大将軍の馬上に落ちてしまっていたということですか」


 宰相殿は興味深そうに顎に手をやりながら頷く。


「しかし…… その閃光とは何なんですかね?」


 そう問われても、私にはこう答えるしかできない。


「わかりません」


 宰相殿はじっと私を見たまま、少し躊躇いながら、私の反応を探るかのように様子を伺いながら話を続ける。


「…… 実はその閃光の記憶は『渡り人』様共通のものです」

「『大聖人・光様』も渡られた直後同じような発言をされています。そして『核戦争』というものが起きたのではないかと……」

「あっ」


 思わず声が出る。『核戦争』…… 何かバラバラだったピースが一気に嵌る気がした。



 あの日、何があった⁇


 確かあの前日、北の大国と軍事侵攻をしていた国との数年に渡る戦争で戦術核を使ったというニュースで世界に激震をもたらした。

 それは世界中を一気に緊張させた。ネットも地上波も全てこの話題だった。

 でも、それはあくまで他国のことで、極東の島国である日本の日常はいつも通り続いていた。仕事や学校が休みになる訳でもない。

 翌日には通常通り仕事に行く為に移動したり…… 遺憾を連発をしても、国民に向けては政府から何のメッセージもなかった。

 断片的だった記憶の中の映像が脳裏に浮かんでくる。

 まさか、あの瞬間に『全面核戦争』が起こったってことなんだろうか? 

 おそらくとんでもない顔になっていたんだろう。

 三人がじっと私の顔を覗き込む。


「否、まさか…… そんなことが」


 自分でもこんな声が出せるのかと思うくらいおびえた声が漏れる。

 全面否定したいのに、それもできない。絶望とは、こういうものなのか。自分が異世界いる云々よりも…… 自分が住んでいた世界が崩壊したかもしれないということの方が遥かに衝撃が強く…… 思考が止まってしまった。

 口に出せばそれが事実になってしまいそうで…… 動揺し完全に混乱をして黙ってしまった私に、宰相殿が静かに告げた。


「今日はこの辺にしましょう。すみませんがこちらの方で今日はお休み下さい。私は一度王宮の方に戻り、陛下に報告をしてきます」


 そう言うと再び黒いフードを被り、廊下の方に出て行った。

 大将軍殿も大魔法士殿の二人も宰相殿の後に続いて部屋を出て、廊下で何やら会話をしているようだった。

 どれくらい時間が経ったんだろうか…… ふと気付くと、いつの間にか机や椅子が片付けられ、石畳の上に簡易ベットのようなものが用意されている。同じ部屋だけれど少し離れた所に二人も寝具をセットしてそこに座っている。二人とも甲冑を脱いですっかり寛いだ様子だ。私の様子をずっと見ていた大将軍殿が空中から何かを取り出した。それを持って私の目の前にきて、目線を合わせるように跪く。


「大丈夫かい? これを飲めばぐっすり寝られる。大丈夫だから、安心して休みなさい」


 そう言って取り出した緑色の液体をグラスに注いで私に手渡す。

 そして、彼の大きな手は私の頭を子供に対してするかのように優しく撫でる。

 ありがとう…… といいたいのに、声にならない。涙がぽろぽろあふれて止まらない。

 そんな私を慰めるかのように強く抱きしめる。彼は私の背中をあやすかのようにポンポンと軽く叩く。

 この世界に一人だけ取り残された寂しさと怖さと悲しみで感情がコントロールできない。

 怖くて怖くて…… 彼に縋り付くように私は子供のように声を上げて泣いていた。



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