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【感謝!3万PV達成!】虹の聖樹 『大聖女・ハルカ』と夫君達との異世界ライフ♫  作者: 天の樹
第一部 ハルカ『異世界ライフ』が始まる♬
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異世界の服飾カタログでショッピングと初めてのお出かけ


「ん~~~まあ、クリスほどのことじゃないけど、どれだけ営んだらこれだけ『恩恵』されるわけ⁇」


 開口一番、ルイスがレオンハルトに詰め寄る。

 実はレオンハルトとの濃厚な昼夜を過ごした結果、レオンハルトの領地である東の公国はほぼ完全に『浄化』が終わっていた。クリストフのように無理やり覚醒させてということはなかったにも関わらず。見た目年齢も二十歳とはいかないが五歳くらい若返って、クリストフと同じくらいに見える。


「……『浄化』作業、頑張ってね」


 お肌ツルツル、若返り、自分より年下に見える双子の兄の肩をポンポン叩きながら、ルイスはそう言った。


「まあ、クリスとは違ってフェロモンの方は大丈夫みたいだね。数日に分散するだけで随分結果が違うみたいだ……」


 ルイスはそう言いつつ、私の方に近づいてきた。


「こんにちは。ハルカ、お家に帰ろう」


 そういうと私の手を取り転移用ゲートを潜った。一瞬でルイスの執務室に着く。


「えっと、ちょっと診させてね」


 ルイスは私の手を取り脈を見たり、マナの状態を見たり、色々な診察道具を使って私の状態を確認する。


 主にはクリストフにつけられた痕の状態を見るため。白い星のような痕は、マナが漏れやすくなっているらしいので万が一そこが裂けちゃうとそこからマナが流出して致命的なものになるらしい。ただずっと残るというわけでもないらしく、マナの源泉で湯治しながらゆっくりと治すしかないそうだ。

 ルイスがまともで紳士に見えてきた。いや、案外一番冷静なのかも。魔法士って理系か…… 科学者っぽいものね。かかりつけ医みたいな感じでもあるし……


「マナの源泉につかろうか。そっちの方が色々回復するだろうし。その後お昼にしよう」


 そういうとルイスは水魔法と火魔法を使ってあっという間にお風呂の湯を張ってくれた。ゆっくり『マナの源泉』入りのお湯に浸かる。

 風呂から出るとルイスが昼食の用意ができたと声がけをしてくれた。今日のお昼は丼ものだった。なんと天丼。お味噌汁までついている。美味しい。満足しているのが顔に出ているのか、ルイスも嬉しそうに私を見ている。


「今日は休みね」


 先にルイスがそう告げる。夜のことらしい。


「疲れているみたいだから、無理はさせられないからね。食事が終わったら、少しだけだけど外に出てみようか?」

「外出できるの?」


 『マナ欠乏症』を発症してから、外はもちろん厳しく行動制限されていたからだ。


「試しにね。来週から外の活動がメインになるし…… 微調整も兼ねて」

「外出られるなら、すごく嬉しい」


 ここに落ちてきてから、自分の足で外に出ることはなかった。移動はすれど屋内軟禁状態だったともいえる。

 うん、それが叶うなら、すごく嬉しい。昼食タイムはご機嫌なまま終えた。

 外に出るには…… ワンピよりはズボンがいいと押し切らせてもらった。本音でいえば…… スカートやワンピースは子供の頃からあまり得意ではなかった。ドラム缶だったせいか女の子らしいとか女性らしいとかに対してかなり抵抗感を持ったまま歳をとったせいかもしれないけれど、未だに苦手だったりする。用意された部屋着用のワンピースも下にスパッツのようなものを履いている。

 実はここ、ジーンズもどきがある。今回、色々服飾関連カタログを見せてもらったら、見つかった。ストレッチ仕様で厚手なのに生地が柔らかい。普通のブルージーンズから黒、赤や紫、茶系など、カラフル仕様だ。

 夫達が着ている服装はどこか中世ぽい感じがしたので、そういうものなのかなと思ったら、結構派手なロゴ入り(ここの星の言葉入り)Tシャツもあるし、パーカーもある。おそらくここに落ちてくる直前の何でもありの二十一世紀の地球の服飾カタログに近いものだ。

 騎士服から、中世お姫様仕様から、どこかで見たアニメキャラ風冒険者ものや選べばレゲエぽいのもある。

流石に着物はなかったけれど……

 服飾リストというよりモデルが着て動く写真入りカタログはいかにも魔法の使えるこの星ならではなのかもしれない。そこにかつての地球のさまざまな文化要素を取り入れていて、懐かしくもあり、斬新でもある。

 靴も色々種類があった。なので動きやすいブルージーンズを購入した。外での作業用だから、いわゆる市販の方が都合がいいらしい。一緒に仕事をするのは魔法士や聖騎士達だ。へたに夫君(彼らの上司)のマナを匂わせると『渡り人』様だとバレるからと言われた。いや、でも『浄化』したらばれちゃうんじゃないのか?思わず突っ込みそうになるけれど、やめとく。

 あ、そうか、『浄化』作業以外でバレるとまずいんだ。「あれ、もしかして?」と「あれだ!」の違いだな、きと。

 後はコットンシャツとベスト。靴は外での作業があると聞いているから、トレッキングシューズにした。こちらの人から見ると髪も短いせいか完全に男装らしい。

 もうちょっと可愛い要素入れて欲しいというルイスの希望は聞き流した。


 着替えが終わった後、ルイスが濃紺のフード付きローブを手渡してくれた。裏地がどこか見覚えのあるアルミホイルのような色合いのもの。

 ローブについて簡単な説明をしてくれる。裏地のアルミホイルぽいものは『フェロモン』対策のもの。確か、ここに来てすぐ、王宮に向かう際に包積み込まれたあれか。表地には瘴気対策がされているそうだ。瘴気というのは厄介で取り込んでしまうと体に不調をきたしたり、病気になったり、死に至ることもあるらしい。場合によっては取り込みすぎて、魔物化することもある。つまり危険なので、このローブを身につけると防護されるとのこと。


 手渡されたローブを身につける。よく見ると銀糸で模様が刺繍のようなものがされている。ルイス曰くこの模様のようなものが護符のような働きをするらしい。見た目に比べて軽い。

 髪の色が目立つからとフードが被せられる。この星の人は銀髪、金髪、明るい毛色らしく、黒や焦茶という色は全くいないわけではないけれど特殊らしい。すでに『浄化』をやりまくってしまっているから如何にも異世界人らしい見かけは目立つと具合が悪いと言われた。

 それはそうだろうと納得する。それからルイスが手の指を指揮するように動かすと周囲が透明のような、虹色がかった幕のようなものに包まれた。


「一応『結界』張っとくね。それとそばを絶対離れちゃ駄目だよ。『浄化』作業も同じ様式なるから」


 ルイスは私にそう声をかけて


「じゃあ、行こうか」


 ルイスは私と手を繋ぐ。しかも恋人繋ぎで…… 執務室の転移ゲートへ向かった。



 ゆらりと空間が歪んだと思ったら、目の前が草原になっていた。


 ちょっとした高台なのか、眼下に街が広がっている。街のイメージはやはりヨーロッパ風。

 遠目でしか確認できないけれど…… 屋根は赤茶で、煉瓦造りぽい。日本のように雑多感はなく、区画割りも建物のテイストがほぼ統一されている。

 なんで『渡り人』が日本人が多いのに…… 不思議な違和感。ああ、でも王宮の別宮は和テイストだったな。

 街中に入れば違うのかも…… そういえば…… ヨーロッパ特有の宗教関連ぽいのがないなあと思って、ルイスにこの星の宗教について質問してみた。

 なんと…… 『宗教はない。古来から星の核によって禁止されている』驚きの回答が出てきた。

 しかも『星の核によって禁止されている』まさかのタブー。

 宗教って死や天災害や自然発生的なものが端を発するような認識を持っていたんだけど、ここでは違うのか?


ーー 宗教が星を壊したから ーー


 ここの星の核は『白い星』と『青い星』の核の欠片でできている。それぞれはかつてそれの形の文明を持っていたけれど、宗教による諍いで星ごと壊れてしまった…… そのため、ここでは宗教は古来より禁止されている

それにここには宗教なんて必要ないから……


「死や天災とか…… そういうのから発生するんじゃないの?」

「死?」

「死者を弔ったり、あと恐れからとか、再生したいとか、神頼みだったりとか、色々あると思うけど」

「う~~ん、そうだね…… 君達の星はそういうのがあるんだよね。確かに…… 『渡り人』様に関連したものには若干そういうのがあるのかもしれないな…… 『浄化』や『結界』も本来は自分たちでもなんとかできてるからね。信仰ってほどには至らないかな。たまたま渡って来られて、放置すると『マナ欠乏症』による影響とかもあっただろうし…… どちらかといえば『保護を必要とする者』と捉えられている。確かに『恩恵』をめぐってというのも多少はあるだろうけれど…… まあそういう(人の欲を掻き立てるものと捉えての)宗教(信仰)を禁止しているんだ」


 ルイスは言葉を切って私の方へと手を伸ばし、私の手を握る。


「それに…… 『死』を弔うというもの自体がここでは存在しない。ハルカ、この前『マナの可視化』でこの世界のもの全てが『マナ』からできているというのを視たよね。君達にとっての『死』の概念とは全く違うからね…… 僕達は形としては残らない。僕達は最後は『マナ』に戻るだけなんだよ。いつか、ここでの生き物の『始まりと終わり』を見せてあげるよ。天災、自然災害も…… 『瘴気』に関与するもの以外はないからね」


 ルイスはそういうと一つ呼吸をする。


「そもそも自分たちでなんでも生み出せてしまうから、搾取もないしね。あ、王族は搾取とかしてないよ。僕達はここをただ守っているだけだから。まあ、そういうところもね…… 見て欲しいね。つまりは、星を壊してしまうような『宗教』はいらないんだよ。ここではね」


 ルイスは淡々とそう語った。


 特定宗教を支持していたわけじゃないけど…… なんか、そういう『拠り所』みたいのすら否定されると、どうなのかなあって思う。これって『地球人』だから? そもそもここに渡ってきたことの意味すらも否定されそうな気がする。そこに見えない何かは存在しないのだろうか? なんかものすごくモヤモヤした。

 それが顔に出ていたのか、ルイスはすまなさそうに私を見た。


 『街』には今日は行かないらしい。ローブや結界の状態を見ているとのこと。フェロモンが流出していないかどうかとか…… 少し周辺を散歩して、ルイスの執務室へと戻った。


 外に出たから、先にお風呂に入った方がいいと促され、先にお風呂をいただく。もちろんマナの源泉入りだ。ゆっくりと湯船に浸かりながら、あれこれ考える。


 わずかな時間だけれど、外に出られたというのは良かった。ルイスが展開してくれて『結界』は空気を感じることができたからだ。そよぐ風も直接肌に感じるが如く。不思議なことだ。あれも全てルイスの『マナ』なのだ。

 この星の人は『マナ』を『魔力』で具象化する『魔法』が使える。食べ物も水も衣類、装飾品ですら自分達のマナで思うままに作ることができる。飢えのために奪い合うこともない。労働もないっていう概念なのか。

 搾取がないとルイスは言ったけど『渡り人』の対するものはそれとは違うのか? 生きていくために必要なものを作り出せない『渡り人』を保護する。その代わりに与えられる『恩恵』。


 …… なんかやっぱりもやっとする。マナかあ…… その人達が『死』を迎えたら、どうなるんだろうか、全て無くなっちゃうのかな。何も残らないと言ってたなあ。


 『渡り人』は骨とかが残るんだろう。それに『恩恵』があるとされているんだから。


 この星って、なんだろう…… 一見地球のように見えるのに全然違う。

 ああ、でも…… ここで生きなきゃいけないんだ。それが『渡り人』なんだ。自分ができることをしなきゃ…… 思い切るかのように湯船から出た。

 その日の夕食はなんと『カツカレーライス』だった。色々なスパイスで作られたカレーはすごく美味しかった。

カツもサクサクで…… この再現力はすごい。ルイスのメニューのチョイスは当たりが多い。

 考え込んでいる私を気にしてくれたのか、日本酒で晩酌もした。ここで日本酒が飲めるなんて…… 飲みやすいし…… そのレシピは一体どこからのものなんだろう…… ちびちびしか飲めないけどほろ酔い加減になってあんまり考えれなくなった。それはそれで良かったのかも……


 その夜は一緒に眠ったけれど、あっちは約束通りにお休みだった。ルイスは慰めるかのようにただただ私をギュッと抱きしめて眠ってくれた。






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