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【感謝!3万PV達成!】虹の聖樹 『大聖女・ハルカ』と夫君達との異世界ライフ♫  作者: 天の樹
第一部 ハルカ『異世界ライフ』が始まる♬
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ハルカ 異世界人の体の作りを知る



 三日間高熱が続き、一週間意識が戻らなかったらしい……


 目が覚めると傍にいたのはルイスだった。レオンハルトと二交代で付き添っていてくれていたそうで、クリストフは私が許すまでは出禁になっていた。

 感情に任せたとはいえ手を出したのは悪い、謝りたいからというとクリストフがバタバタとあわてて寝室に入ってきた。何というか二十代前半の超美形好青年になっていて、最初誰かわからなかった。


 内勤(宰相)だった頃とは違い屋外で魔法士団員と共に『結界』を張る作業を休み無くし続けていたからだろうか、すっかり健康的に若干こんがり日焼け気味になっていた。開口一番謝罪を受け、「僕が」「私が」とお互いが謝罪し合い、それを受け入れるということになった。

 ルイスの説明で『恩恵』を大量に浴びたために回線が開いて今までほとんど使えなかった魔法が自由自在に使えるようになったそうだ。だからなのか、おそらく今までどこかに燻っていたんだろうアンニュイ感がきれいに拭われて、山一つ乗り越えた感が出て、見るからにつきものが落ちたかのようにスッキリしていた。

 レオンハルトやルイスと同等の魔力やマナを保有していて、宰相とはいえ文官というのも確かに不思議だなと思っていたので、魔法が自由に使えるようになった現状は彼本来の姿に近いのかもしれない。


 私についてのルイスの見たてだとこの星に来てから一週間で大量の『浄化』と『マナ欠乏症』の発症、婚姻、三人との初夜も済ませたので、体力的にも精神的にも限界を超えたのだろうということだった。一週間も寝込んでいても体力が回復したのは定期的にマナ凝縮ポーションや水分を摂らせたり、熱が下がってからはレオンハルトがマナの源泉の湯に浸からせていたとルイスがいう。


 誰がどうやってと突っ込みたいけれど…… 何となく想像できたのでやめた。流石に一週間の休養がきっちり取れていたことがよかったのか、随分と思考もはっきりして精神的にも楽になったような気がした。あのままの状態が続けば肉体的にも精神的にも壊れていた可能性が高かったと…… この異常な環境において客観性を取り戻せたことは良かったと思った。その時間は自分だけではなく三人の夫君にとっても必要だったんじゃないのかなと彼らを見てそう感じた。


 不思議なもので肌を重ね合わせた仲になったことで、本当の意味で身内になった感覚で彼らを受け入れている自分がいるのには驚いた。


 レオンハルトは私が目覚めた時は休憩に入っていたらしく、目が覚めたと聞くとすぐの寝室に入って、私の状態を確認した後、すぐに食事を作ってくれていたらしく、その後四人で軽い食事を摂った。それから、折角全員集まったんだから、今後の話をしようということになった。

 

 レオンハルトが現状を説明する。

 まずは『瘴気』…… 『浄化』されたエリアを除いては『瘴気』の影響は変わらずひどい状況が続いているらしい。『瘴気』の影響による疾病報告も続いているようで、『瘴気』の影響による魔物や魔獣の被害も跡を立たないそうだ。

 つまり”ハルカ・ロード”と”王宮ドーム”(なんというネーミング……)、クリストフの領地である西の大公国は粗方『浄化』済みエリアになっていて、レオンハルトの領地である東の大公国、ルイスの領地である北の大公国は少しだけ『浄化』できているとのこと。クリストフと他の二人との差はいわゆる『恩恵』の回数の差らしい…… なので、クリストフのところは「しばらく打ち止め」とルイスがピシャリと言っていた。

 一応、東と北の大公国は引き続き『恩恵』という形の『浄化』を取り、南の大公国や他の領地は通常の『浄化』という方法を取ることになった。

 『渡り人の恩恵』もいろいろなパターンの発動条件でデーターを残し長期にわたって検証し、今後のための記録として残していくとのこと。


 ルイスやクリストフのいる魔法士団が先に『結界』壁を構築、そのエリアごとにレオンハルト達聖騎士団が『浄化』し、私がその後をさらに強化した『浄化』をするという方式を取ることになるそうだ。本格的な『浄化』の開始は念の為一週間休みをとって、翌週からになった。その段取り云々の詳細も色々検討された。


 次に『クリストフの受けた恩恵』について。単に見た目年齢が二十歳若返っただけではなく、体力や視力の回復や色々病んでいたものがきれいに回復できていたそうだ。それと一番は魔法が自由自在に使いこなせるようになったこと。魔力やマナも『渡り人』の影響を受け、彼本来のものと変化をしたらしい。(マナが私のものと混じったようになっているとルイスが”マナの可視化”で説明をしてくれた)

 但し、いいことばかりではなく『マナ欠乏症』ではないにもかかわらず、それに近いフェロモンを出し、他者に対する影響の懸念があるので常に自身の周りに結界を張って、その流出に対する対処を常に余儀なくされるそうだ。

 この為当初より早い段階で宰相の職を辞し、王宮には念の為出禁になっており、現時点で所属しているルイスのいる魔法士団で引き続き『結界』壁を構築することになるとのこと。

 クリストフは『隔離・監視・検証』対象になっているとルイスが淡々と報告をする。


 『隔離・監視・検証』ねえ、つまり私もだよね。クリストフの方をチラリと見る。

 目が会うとクリスはふんわりとした笑みを浮かべて頷く。なんか印象がずいぶん変わったな。あれ? そういえば…… いつの間にか一人称が『僕』になってた。

 それを見たルイスが


「クリス、文官じゃなくとも魔法士としてガンガン働いてもらうんだから、ハルカにあれだけ痕残した以上、彼女には余計無理させられないからね、その分働くんだよ」

「承知した」


 やれやれとルイスがクリストフを見ながら一息つくと、机上に三つの指輪を置いた。なにやら瑠璃色の大きめの石がついている。


「これはあれか?」


 レオンハルトが一つ手にとる。ルイスとクリストフもそれぞれ手にして中指にはめる。


「そう、あれ…… ハルカの要望を陛下が了承してくれた。初夜はハルカが頑張ってもらって公式としての全記録されたけど、今後は映像は公的には残さない。音声は行為中は残さない。それ前後の睦言は残念ながら今後も残すことになる」


 音声の記録の停止は指輪のサイドの赤いツマミを押し込みながら魔力を注入、記録を始めるときは反対側の白いツマミを軽く押しつつ同様に魔力を注入…… ルイスは指輪を確認しながら説明をする。魔力を注入することで誰が記録に介入したかが公的に残るらしい。但し星の核には全データーは記録はされている。つまり閲覧権に介入するということだとルイスが説明を続ける。


 レオンハルトとクリストフは指輪を触っている。


「それと…… これはハルカが頑張ってくれたからだけど、今後渡られる『渡り人』様にも適用される。今回のことは陛下が会議にかけて法として整備されることになった。陛下から『渡り人』様へ感謝を伝えてほしいとお願いされたよ」


 すでに挙げている他の要望に関しても今後随時検討をしてくれるそうだ。少しずつ『渡り人』の環境が整えばいいなと思った。

 おばちゃんである自分ですら夜の生活全てを記録され続けるなんて、ありえないと思うのに……若い人には絶対無理だろう……

 了承したとはいえ、正気では無理だった…… 三人を見る。視線に気付いたのか三人とも私の方を見て、笑みを浮かべて、頷く。


「陛下だけとはいえ、やっぱり自分の妻との営みを見られるのはやはり嫌ですから」


 クリストフがはっきりいうと残りの二人も肯定する。


 睦言についてもどこまで記録に残すかという差配は夫君達がすることになった。それにしても一体どこで記録されているんだろう。隠しカメラか盗聴器でもあるのか? 二十四時間体制のセ※ムでもあるのか? さりげなく疑問を呈すると


「星の核に記録されている」


 とレオンハルトが答える。


 …… 星の核って何? 星の始まりを星の記憶を記録するものらしい…… それ以上は、


「『浄化』が終わったら……」


 と答えてくれなかった。


 う~~~ん、それにしても了承したとはいえ…… プライバシーがないというのはかなり精神的に追い込まれるんだけれど…… バスルームは最初から除外されているとの事。


 実は、ここにはトイレがない。元々必要がないものらしい。(この時点で地球人ではないってことになる)黄泉の物を食べたら戻れなくなるではないが、ここの食事を食べても全てマナになるので老廃物は出ていかないと言われた。私にしても『ラバースライム』を使用した時点で残っていたであろう地球由来の老廃物は全て除去されて、この星の人達とほぼ変わらない状態になっているとのこと。


 因みにこの星の人達は所謂排泄に必要な後ろの口がないそうだ(マジか……)


 軽く講義を受けたけれど、地球人とは内臓の作りもずいぶん違っていて、呼吸器官も地球人とは違う。だからここの言語と音の発する方法が違うんだろう。ここについて初めて聞いたレオンハルトやルイスの声は私からすれば雑音のようなものだった。

 消化器官らしきものはあるけれど、胃のようなもので全てのマナが全身に取り込まれてしまうので胃に続く消化器官が存在しない。なので排泄する器官が存在しない。地球人でいう排尿も排便もしないのでそれらの器官はないと聞いてびっくりした。心臓はある。あと子宮の大きさも倍近くある。男性の精巣は体内と体外にあって、体内は子宮と同じくらいの大きさがある。とはいってもそこのあるのはマナ。女性の子宮にも本人のマナで満たされている? らしい。子宮も精巣も魔力やマナが大きいとその量も半端がないので、大きくなるそうだ。


 ん? それじゃ『渡り人』様が男性の場合はどうなるんだろう?


 その場合は妻君を持つらしい。基本的に男性の『渡り人』は長命だと記録されている。女性の場合出産時に大量にマナを失うので『マナ欠乏症』に罹りやすいらしい。自分のように大規模な『浄化』というのは非常に稀で、渡ってきた初日に『マナ欠乏症』を発症したというのは公式記録上ハルカが初めてとクリストフがいう。


 『マナ欠乏症』は女性が主として患うものとされている。もちろん男性も全く罹らないというわけではないらしく、『聖人・光様』も晩年『マナ欠乏症』に罹患して亡くなったそうだ。

 男性の場合は『マナ欠乏症』を発症してしまった場合は『マナ』を供給できないので致命的になるそうだ…… とはいえこの世界の女性の子宮はマナで満たされているのでいわゆる『マナの源泉に浸かっている」状態になるので、全く供給されないかといえばそうではない。但し、『マナ欠乏症』によるショック状態になると他者から能動的に早急にマナの供給がされないと危険な状態になると言われている。


 前の口は無くても上や後ろの口は持ってるんだから…… 「マナを供給するために」夫は持てないのか? と尋ねてみると最初三人は理解できなかったみたいらしく、地球上での性的指向について説明するとこちらでもそういう指向を持つ人達が全くいないわけではないだろうけれど、成婚の儀の聖樹の印は同性間では持てないそうだ。


 自分の左手の甲に透けるように刻まれた聖樹の印を思い出す。

 確か男性は葉の部分、女性は幹や枝とか言ってたな。つまり葉の部分(男性のみ)だけでは成り立たず、必ず女性の持つ幹の部分(鍵)が必要になるらしい。改めてお互いの聖樹の印を確認し合うと、確かに夫側は葉の部分、私は幹や枝の部分だけ刻印されている。この聖樹の印がなければ異性間の『マナの供給』ですら供給量は激減する。(全くゼロではないが、緊急時の治療にはほぼ役立たないレベルらしい)

 なのでおそらく仮に『渡り人』が男性の場合は、『マナ欠乏症』を発症してしまえば他者からの供給は不可能になる。それから、あくまで仮説の一つだが…… とルイスが説明してくれたように『マナの可視化』で確認できてはいないが妻君の子宮内が『マナの源泉』と同じ機能を果たして回復するために多少の『マナの供給』をしたのではないか、という推察は案外間違っていないのではなかろうかと思った。


 前回の『渡り人・光様』は自身の治療の為に『マナの源泉』の温泉を作り、そこで湯治したり、マナを凝縮したポーションや飴等を開発したそうだ。私が別宮『月の光』に入った時悪臭のために思わず発動した『浄化』が『聖人・光様』が亡くなって枯れていた『マナの源泉』を復活させたことが確認が取れたので、次回以降のためにも記録されているとクリストフが答えた。


 『マナ欠乏症』かあ…… ルイスが見せてくれた自分のぼんやりとした輪郭も定まらない、それでいて漏れ続けている自分のマナを思い出し、思わず身震いをしてしまった。

 当面は一週間の休みの後から始まる本格的な 『浄化』作業を優先にすることになった。クリストフはペナルティで休みなく『結界』壁を展開する作業に入るらしい。


 私の体調のこともあるということで、今回は解散した。



 部屋に残されたのは私とレオンハルトの二人。いつの間にか日が傾いている。


 この星には二つの太陽と三つの月がある。夜が来るのは二つの太陽の狭間の五時間程度。明らかに太陽系ではないなというのを知ったのは、初めての夜、砦から見た、これに気づいた時だった。

 暗くなりかけた執務室に灯が灯される。魔力がなければマナを具象化できず、魔法も使えずこの星では暮らせない。マナしか持たない『渡り人』だけでは生きていけない世界。食べるものですらマナを具象化したものなのだ……


 いったいなぜ、この星に皆渡ってくるのだろうか……


 部屋の窓からすっかり日が暮れ、満天の夜空を見ながら考え込んでいると、いつの間にかレオンハルトが食事の用意ができたと声をかけてきた。まだ、本格的なものは無理だろうということで、温かいシチューと照り焼きチキンとポテトサンドが用意されている。

 照り焼きだよ…… これも不思議なんだよね。醤油や味醂、マヨネーズもあるのか…… 昼は和風だしの玉子入り粥だったし。味噌もあるんだよね……


 三人がそれぞれ出してくれた食事は日本人向けだった。多少の味覚の差はある。それでも明らかな洋食屋さんメニューもあるし、純和風もある。一見洋風、中華風に見えても味付けは日本人向けになっている。デザートも同様。このレシピはいったい誰によるものなんだろう? というか、どうやったらこんな料理が作れるのか? いつも驚かされてしまう。ほんとこの再現力半端ないんだけど……

 まあ、美味しいから、不満はないけど。これがマナ…… う~~ん、美味しいからいいんだけど…… やっぱり謎だ。美味しい食事に面する度にいつもこの感覚になる。マナ…… マナねえ……


「美味しくない?」


 考え込んでいる私を心配そうにアースブルーサファイヤの瞳が覗き込む。


「美味しいよ、ちょっとね、マナについて…… あれこれ考えちゃってて、ごめん。美味しいよ、レオン、ありがとう」

「そう、良かった。しっかり食べて。食べたいものがあったら、どんどんリクエストして欲しい」


 柔らかい笑みを浮かべて低めのバリトンボイスで私の顔を見つめながらいう。


「…… ありがとう。それと看病してくれて、本当にありがとう。レオン」

「無理させたのは、こちらの方だ。すまなかった、ハルカ。君には本当に感謝している、ありがとう」


 しばし、ありがとうの応酬が続いた。お互い最後には苦笑しあって、それは終わった。


 食事の後は、マナの源泉を入れてあるからと先にお風呂に入った。久しぶりに自分で湯船に浸かる。そういえば、こちらにきてから、完全に一人ということはなかった気がする。

 別宮『月の光』でも王妃つきの侍女さんたちがいたし、成婚の儀が終われば夫君が常にそばにいた。まあ、彼らからすれば『マナ欠乏症』を発症しているから、バスルームで倒れてもすぐ対処できるようにというのもあったのかもしれない。介護の見守りのような感じだ。


 今は一週間寝込んだとはいえ、かなり体力的にも気力的にも回復している状態なので、あまり過保護になる必要もないと判断したのだろう。

 いずれにしても、逃げるところはない。ここで、生きれるところまで生きるしかないのだから。と開き直ることしか今はできない。そう思って、思い切るように風呂から出た。風呂から上がると着替えが用意されていた。


 いわゆる彼シャツだ。彼の寝衣らしい。すっぽり被るコットン生地のもの。レオンハルトは一九〇センチ近くあるのと骨格も三人の中ではがっしりしている。とはいってもマッチョっというほどではなく、しなやかな肉食動物のような肢体をしている。なので、彼のシャツは一六〇センチの自分にとっては結構大きめになる。

 以前の自分なら、身長差はあれど体格的にはドラム缶だったのでそれほど大きくはなかったかもしれないが、現在の体格だと充分ダボダボで大きい。

 お先にいただきましたっと声をかけると、ああと返事をして、続いてバスルームへと入っていった。


 今日は休み? 今日はするの? レオンハルトの背中を見送りながらふとそう思った。寝室のベッドの上で、さっき知った衝撃の事実を悶々と考え始めていた。


 後ろの口がないって本当なのか⁇ 不届きなやつだなあと自分自身の下世話さに思わず苦笑してしまう。

 ちょっと確かめてみたい…… おばちゃん思考にハマってしまった。う~~~ん…… となると今夜はするんだろうな…… 普通に見せてってお願いするのはダメだよね…… 地球人やばいって思われるかもしれない…… どうやれば自然に…… そんな不埒なことを考えていると寝室の扉が開いた。



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