黒点
ガタンガタン・・・
梅田から阪神電車に乗り家に帰っている。
今日も無駄な残業をし仕事を終えて、半分深い眠りにつかりながら
電車の揺れに体を預けていた。
尼崎に着き、車内へ一人の女が入ってきた。
少し艶のある淡いブルーのスカートから
白く細い足を出してドアの近くに立った。
私はまぶしい目をして、その女の足を眺めた。
ほくろがある。
ふくらはぎのほくろは
見ていると少しずつ大きくなっているようだった。
やがてほくろが足から剥がれ落ちた。
よく見ると
女の足から血を腹いっぱいに吸った
季節外れの蚊だった。
蚊はたくさんご馳走をいただき過ぎて
まん丸と太り
もはや、自分の羽では飛べないようになっていた。
ぴょんぴょんと飛ぶ丸い蚊は
なんとも奇妙なものである。
甲子園に着いた。
蚊はうまい具合に
隣の男の靴に腰掛けて、車両から降りる人々の大きな足から逃れられた。
そして、どこへ向かうのやら
またぴょんぴょん飛び、移動し始めた。
気がつくと西宮に着いていた。
まずい-
私は慌てて電車から降りた。
あの
まん丸の蚊はどうなったのだろう。
いま潰れたら
たくさん血が出るのだろうか。
あの綺麗な足の女の血が。