「彼女が欲しい!」とお願いしたら、なぜか『経験した人数と相手を知る能力』を授かった
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「彼女が欲しい!」
そんな唐突な願いをした月宮真太郎の願いを神様が叶えたのか、なぜか『経験した人数と相手が分かる能力』を授かった。
いつもと変わらない朝に目覚め、特殊能力を授かったことに気づく。
(なんでこんな能力が?)
そんな疑問を抱きつつも、学校に行く準備をして部屋を出る。
朝食を食べに食卓へ行くと、すでに妹の月宮鏡花がいた。
「……ふん、相変わらずだらしないわね、兄貴」
昔は俺に懐いていた妹だが、最近はこんな調子で悪態をついてくる。
まあ、よくある反抗期だ。
「ぼーっとしてないでさっさと食べたら?」
「ああ、そうするよ」
とはいうものの険悪というほどでなく、最低限な会話のやり取りくらいは普通にしている。
そこでふと能力のことを思い出した。
こいつも誰かと関係をもっていたりするのだろうか。
試験的な意味合いも込めて、鏡花に使ってみる。
頭の中で念じればいいらしいが……
【月宮鏡花の経験人数:1人】
おお、見えた!
というか鏡花もやることはやっているんだな。
相手は誰なんだろうか? 知っている人かな?
とりあえず相手も見てみよう。
【月宮鏡花の経験相手:月宮真太郎】
「――ん゛ん゛ん゛!?」
とんでもない情報が見えて思わず変な声を出してしまう。
「ちょ――、どうしたのお兄ちゃん?!」
「ん゛……んん! うん、大丈夫大丈夫、ちょっとむせただけだから」
「そう……、まあいいわ。兄貴もさっさと食べないと遅れるよ」
「わかってるって」
どうにか誤魔化せたか。
いやそれよりも相手俺とかどういうこと? 俺は鏡花としたの? いつした? した記憶ないんだけど。もしかして記憶喪失? いやそれはないわ。記憶が空白な期間なんでないし。心当たりが全くない。
……そういえば最近全然ムラムラしてない気がする。
もしかして寝ている間に?
正直気になるところではあるけど、なんか真実を知るのが怖いし気のせいということにしよう。
――うん、きっとなんかの間違いだ!
気を取り直して学校に向かうため家を出たところで、
「あら、おはよう、真太郎君」
田辺美優さんが俺に挨拶をした。
「おはようございます、美優さん!」
近所のお姉さんで親しい仲でもあり、既婚者である。
正直に言うと、好みのタイプである。
「今日も真太郎君は元気ね」
「ええ、絶好調です!」
いつもと変わらない朝の何気ない会話だが、今日の俺は特殊能力がある。
美優さんの経験人数を見てみよう。
【田辺美優の経験人数:9人】
マジか! 意外としていた。
見かけによらず経験豊富だったか。
……したのは結婚前だよね?
「うん? どうしたの?」
「ああ! いえ、何でもないです」
気にはなるけどそのまま記憶の片隅にしまっておこう。
しばらく歩いてると、
「おはよう、真太郎君!」
「おっす」
幼馴染である成瀬清美、竜崎健司と合流した。
「おう、おはよう」
いつものように3人で登校する。
そして3人で談笑しながら歩いている。
ちなみに成瀬と竜崎は付き合っており、冒頭で「彼女が欲しい!」と願った理由の2人である。
成瀬のことはちょっと付き合ってみたいと思うくらいには気になっていたが、竜崎の方が幼馴染歴が長いし仕方ないかなと割り切ってはいる。
でもやっぱり悔しいし、羨ましいしから自分も彼女欲しいと思った次第である。
それにしても2人はもうヤッたのだろうか。
ちょっと気になるので能力を使ってみよう。
【成瀬清美の経験人数:1人】
ほお、やることやっているんだな。
ついでに竜崎が浮気してないかも見てみよう。
【竜崎健司の経験人数:0人】
……………………え?
いやおかしくね?
じゃあ成瀬の経験人数1人って何?
……違う相手?
恐る恐る成瀬の経験相手を見てみた。
【成瀬清美の経験相手:校長先生】
――えええええぇぇぇー!!!!
(マジかよありえん、あいつの逢引き! 衝撃過ぎてショックが消去だわ!!)
知りたくなかった事実を知って思考が固まった。
「どうしたの? 真太郎君」
「……ん? 月宮がどうかしたのか?」
「あ……ああ、いや、ちょっとぼーっとしてただけ、別になんでもないよ」
成瀬と竜崎に気づかれたけど、どうにか誤魔化した。
どういうことなのか知りたいけど、どうやって聞けばいいのかわからん!
なんか成瀬と付き合わない方が逆に正解な気がしてきた。
こんなの知ったら発狂するわ。
そうこうしているうちに学校の教室についた。
席に着き、今度は誰に能力を使おうかと考えていたら、
「おっはよー!」
元気よく挨拶して入ってきたのは、クラスでもムードメーカー的な存在の金城陽子。
陸上部所属の運動真剣抜群で、性格も相まって男女問わずの人気者である。
(そうだ、彼女に使ってみよう)
そう考えた俺は能力を使ってみた。
【金城陽子の経験人数:3人】
3人か……、一体相手は誰だろう。知っている人かな?
【金城陽子の経験相手:校長先生、体育教師、父親】
ええ……、なんだよそのメンツ。
しかもまた校長かよ。
あと父親とかどういうことだよ。
その2人のせいで体育教師がマシに見える。
いや普通にダメだけど。
気を取り直して次のターゲットを考えた。
そして目を付けたのが最上ほのかである。
「おはよー、ほのかちゃん」
「ええ、おはようございます」
クラスメイトにおっとりとした返事で返す。
ほんわかとした印象を受ける清楚なお嬢様で、クラスでも男女共に慕われている。
(流石に彼女なら経験はないだろう)
そう思って能力を使った。
【最上ほのかの経験人数:38人】
「……ォウ、フッ」
思わず変な声が出た。
多すぎるだろ……。
しかも経験相手もチラッと見たけど知らん人ばっかだし。
(……援交してるの?)
そう考えても仕方ないと思った。
だんだん人間不信になりかけながらも次のターゲットを考える。
そして決めた相手は、篠崎美玲である。
いつも本を読んでいる、一言でいうと文学少女のような印象を受ける物静かな人である。
(いくらなんでも彼女は経験ないだろう)
そう考えて能力を使った。
【篠崎美玲の経験人数:199人】
(まさかの最多記録!!!)
驚きの人数に衝撃を受けながらも、経験相手も見た。
【篠崎美玲の経験相手:校長先生含む本校全男性教員コンプリート☆、他多数】
(マジかよ!? この学校大丈夫なのか? あと☆ってなんだよ☆って! なんか転校したくなってきたぞ)
想像を絶する情報を見てしまい、若干放心状態になった。
もう見るのやめようかなあと思いつつぼーっとしていると、言い争っている2人の声が聞こえた。
「ちょっと! いい加減その乱れた服装正しなさいよ!」
「いいだろ別に、暑いんだから」
「だからって乱れ過ぎよ! せめて下着が見えないようにしなさいよ!」
「別に私は気にしないよ」
「私が気にするわよ!」
そんな言い争いをしている女子2人。
注意している女子は水谷優月、このクラスの委員長で、注意されているもう1人は油井陽子、不良みたいな振る舞いをしている女子である。
苗字を体現したかのような水と油のような関係で、常日頃から言い争いをしている。
(せっかくだから見てみよう)
【水谷優月の経験人数:1人】
【油井陽子の経験人数:1人】
今までと比較したせいで妙な安心感が芽生えた。
ついでに相手も見てみよう。
【水谷優月の経験相手:油井陽子】
【油井陽子の経験相手:水谷優月】
(同性もカウントするの!?)
まさかの新事実。
それにしても喧嘩ばっかしている2人がデキていたとは。
もういちゃついているようにしか見えなくなった。
そんな2人を眺めていたら、
「ちょっと、何ニヤニヤしているのよ」
「……ん?」
そう俺に話しかけてきたのは、ギャルグループの中心人物である日高明美である。
「……別に何でもねえよ」
「なんでもなくはないでしょ」
「……ちょっと思い出し笑いしてただけだ」
「……ふーん、そう」
そうして疑いの目を俺にかけながらも、ギャルグループがいる所へ行った。
日高はなぜか俺によく突っかかってくる。理由はわからない。
そういえば、日高は俺のことをよく童貞とかからかっていたけど、あいつはどれだけ経験あるのだろうか。
ついでだからギャルグループの経験人数も見てみよう。
まずはギャルグループからだ。
【ギャルAの経験人数:12人】
【ギャルBの経験人数:11人】
【ギャルCの経験人数:15人】
【ギャルDの経験人数:13人】
【ギャルEの経験人数:10人】
【ギャルFの経験人数:11人】
(なんか思ったより少ないな)
もっと経験豊富かと思ったら案外たいしたことないな。
じゃあ本命の日高の人数を見てみよう。
【日高明美の経験人数:0人】
(……え?)
見間違いかと思いもう一度確認した。
【日高明美の経験人数:0人】
……………………。
(あいつ処女なのかよ)
童貞だのなんだのからかっておいて自分は未経験とか。
そんなんでよくギャルグループの中心やっていられるな。
なんか必死に背伸びしているお子様に見えてきた。
(あれ? どうしよう、なんか可愛く見えてきたぞ。チョロいな俺!)
「ちょっと、何ジロジロ見ているのよ」
「い、いや、なんでもない」
日高にジロジロ見ていたのがバレてしまった。
それから俺は日高のことが気になってしまった。
その後、なんだかんだあって日高と付き合うことになり、意外と馬が合ったこともあり、就職後に結婚し、子宝に恵まれ、幸せな家庭を築いていったのだった。