にわか雨
1話完結短編です。
雨が降った。
傘を持たずに1人夜道を歩く僕を伝ういくつかの雫。
袖に滲む水滴が色濃く僕の瞳に溶ける。
僕は東京の大学生だった。
人並みに東京での生活を楽しみ、
思い残す事は無いと地元の田舎での就職を決めた。
友との別れにうら寂しさを覚えながら
地元へ帰る前日、密かに想いを寄せていた相手から連絡があった。
「好きです。」
彼女からの思いもよらぬ
LINEに跳ね上がる鼓動を感じながら、
僕は電話をかけた。
遠距離恋愛を始めて約1年が経った。
電話はしなくなったが、
毎日他愛無いLINEが続いていた頃、
彼女から電話の誘いがあった。
初めての彼女からの電話だった。
浮き立つ感情を抑え、電話に出る。
「どうした?」
「話したいことがあって。」
「なに?」
「いっぱいあって、何から話せばいいかわからない。」
「そっか。じゃあ、今日何してた?」
久しぶりの会話。
LINEと変わらない他愛無い談笑。
1時間ほど話した頃、少しの間流れる沈黙。
「それで、話って何?」
再び流れる沈黙に、僕は目を閉じて深く息を吸った。
彼女は震える声で絞り出すように言った。
「 」
外に出た。
真っ暗な夜道。
ポツリポツリと雨が降る。
よろしければここが良かった、ここが気になるなど評価して欲しいです。