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騎士の自由

お久しぶりです。よろしくお願いします。

「いらっしゃい!今日はいい肉が入ってるよ!」

「おじさん、りんご3つちょうだい!」

「うまい串焼きははどうだい?安くするぜ!」

「押すんじゃねぇよ!」

「そこのおにいさん、恋人に綺麗な花はどうだい?」


今日もオーラリアの首都、チューロアイトの街は活気に満ちている。

貴族街から離れ、平民や商人の多い区画では、多くの人々が行き交い、今日もとても平和だ。現国王になってから、貧困家庭や孤児への福祉が手厚くなり、治安が安定したため、多くの国内外の商店が店をひらいている。

特に、王と宰相の肝煎り事業のひとつが、茶器やハーブに関する事業だ。上流階級だけでなく、庶民にも手が届くそれらが、オーラリアでは諸外国に比べて格段に手に入りやすい。紅茶以外にコーヒーやハーブティー、紅茶に果実やハーブを混ぜたものやはるか東方の煎茶と呼ばれる飲み物など、ありとあらゆる飲み物が王都では庶民にも手に入る。数年前に隣国に嫁いだロブウェル公爵家の長女が輿入れ道具の一つとして、茶器やコーヒーを持ち込んだことから、隣国でも紅茶以外の飲み物を取り扱うようになったらしい。


「リネット、今日はイースト街とウェスト街とどちらの方に行く?」

豊かに波うつブルネットを簡単に後頭部でお団子にまとめ、シンプルにシャツとトラウザーズのみのヴェルナは、同じ服装で茶色の髪を一つにまとめたリネットを振り向いた。

「弟へのプレゼントを買いたいから、イースト街かな。」

「よかった。ちょうど私もオルガ商会に行きたかったの。ウリエルは何か買いたいものある?」

今日は午後から珍しくヴェルナ、ウリエル、リネットが揃って非番のため、3人で街に出てきていた。ヴェルナとリネットは買い物の用があり、ウリエルは詰所にいたところをヴェルナが誘った。休暇ではなく非番なので、騎士服のジャケットは着ていないが、帯剣している。3人とも騎士団の下っ端の時は市中警邏をしていたこともあるので、足取りに迷いはない。リネットは6歳になる異母弟の誕生日のプレゼントをみつくろい、ヴェルナの買い物に移る。たまに会う異母弟は、リネットによく懐いているため、ついつい多めに買ってしまい、実家に配送してもらうよう頼んだ。



ヴェルナの買い物は、さまざまな茶葉や雑貨を扱う商会だった。リネットもヴェルナと共によく来る店だ。ザカリーやウリエルともきたことがある。10代前半に騎士団にはいってから、みんなでよく通った道だ。店々の従業員も彼らを知っている。

「こんにちは、騎士様がた!」

店内に入ると、店員の少女が声をかけてくる。

「今日は何をお探しですか?」

「蜂蜜の香りの石鹸、まだあるかしら?あと、ハーブティーが欲しいの。」

店員がヴェルナを案内していく。ウリエルとリネットは並べられた色々なフレーバーの紅茶を見ていた。そこに、ヴェルナを案内しているのとは別の店員がやってくる。馴染みの少女だ。「いつもご購入いただく紅茶の、最新のフレーバーが出たのですが、いかがですか?」

何度も来ているので、ここの店員にはリネットの好みは把握されている。

「せっかくだから、買おうか。」

リネットはいつも買う紅茶のほかに、店員に勧められたものをいくつか選ぶ。

「騎士様、こちらはいかがですか?」

ひとしきり紅茶を選んだあと、店員が他にも雑貨や、装飾品を勧めてきた。その中のブルーの宝石が入った髪留めに目が留まる。こういうところに置いてあるので、価値の高いものではないのだろう。しかし、秋の抜けるような空の色に似たその髪留めに目が吸い寄せられた。


(先日のドレスの色に似てる…)

そしてその向こうにあったキースの瞳にも。

「欲しいのか?」

後ろから覗き込んでいたウリエルが口を開いた。慌てて否定する。

「いや、綺麗な色だと思っただけだ。」

「今、恋人に髪留めを送るのが街で流行ってるんです。騎士様いかがですか?」

何を勘違いしたのか、店員はウリエルに先ほどの髪留めを進め始めた。

「いや、私とウリエルはそういう関係ではないんだ。私には別に婚約者がいるし、もうすぐ結婚するから。それに、仕事柄あまり装飾品は好ましくない。」

このままではウリエルはうまいこと髪留めを買わされそうだと、リネットは止めに入った。しかし、言っててなんだか気恥ずかしくなった。

「リネット…」

ウリエルのなんとも言えない顔をみて、危うく遣いもない髪留めを買わされなくてよかったとリネットは珍しく微笑んだ。

「あら、そうでしたか!それはおめでとうございます!」

店員はさらりと矛先を変え、他の装飾品をリネットに勧め出した。

結局ハーブティーをさらに買わされ、3人で店を出る。

「そう言えば、この店も、売り子の出入りが多いわよね。さっき私の接客をしてた子も来年結婚するんで辞めるんですって。」

「そう言えばあまり長く売り子をやっている店員は見かけないな。」

「そうなの。去年までいたブルネットの子も三つ編みのそばかすの子も結婚して辞めると言ってたし、その前にいた…赤茶色の子も確か郷里に帰るって2年くらい前に辞めちゃったし。」

「そういえば、あの赤茶の子もいつのまにかいなくなっていた。」

「リネットにしては珍しく、会話の弾む子だったわよね。」

「私の好みをよく知ってくれてたし、話しやすかったから。」

「この店は繁盛してるし、みそめられることが多いんだろう。」

「そうかも。あ、新しい甘味屋がある!いきましょ、2人共!」

目ざとく新しい店を見つけたヴェルナの後をおった。

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