地上に下り立つ
アークスは砂漠を歩いていた。
照りつける太陽と永遠に続くかの様な砂の海、見上げれば空の青と砂の黄色が果てしなく天と地を隔てる様に広がっている。
「ここはどこだ、、、?まぁとりあえず歩くか、、」
10時間後
「腹、、減ったな」
2日後
「喉、、水、、水、、」
盛大に迷っていた。
既に3日はこんな状況だ。魔力は大量に余っているのだが、俺は水属性の魔法が使えない。こんな時に限って、自分の適正が恨めしい。
3日前に急に母さん、マザードラゴンである天空龍メルクリアスに地界に降り、勉強して来なさい。と放り出された。
なんでも地界にある自らの眷属達の国、龍人族の国が危機に瀕しているとかで、助けに行くそうだ。当分帰ってこないから、自立しなさい。というのが理由らしい。程の良い、厄介払いに違いない、、絶対男がいるんだ。絶対、、、
その際に餞別だと魔剣を与えられたのだが、今の状況には何の役にも立たない。それにこの剣何故だかどれだけ力を込めても抜けないのだ。そもそも抜けない剣は剣ではない。
それよりも問題は、母さんに修行だと言われて、力の多くを封印されてしまった事だろう。
「いつまで歩き続ければ良いんだ、、」
歩けども歩けども、周囲にあるのは砂ばかり。茹だるような熱波が肌を焼き、身体中から水分を奪い去る。
「あー、喉渇いたな、、、」
この砂漠を俺は知っている、ずっと地上に憧れて空より見ていたからだ。ここは世界の真ん中にあるサイラス砂漠。
決して数日歩いただけで踏破出来るものではない。一つの国が丸々収まるだけの広大な土地だ。
「ここに、俺の運命に関わりある人と繋がる可能性があるとかなんとか言ってたが、、何にもないじゃないか。」
メルクリアスは、先読み。少し先の未来を見る事が出来る。その力が告げたんだそうだ。
龍人の国にも巫女としてかなり高い地位にいるらしい。それとなくアドバイスを与える様な事を言っていた。「その内遊びに来るといい」なんて呑気に言っていた事を思い出し、腹が立ってくる。
ずっと歩き続けていると、そろそろ日も陰り始めて来た。気温がグッと下がり始める。今日も夜通し歩くのか、とゲンナリしていると、ふと魔力の波動を感じた。
この世界には人間の他に魔物がいる。人間や魔物は体内に魔力を内包しており、通常状態でも魔力は絶えず体から流れ出ている。これが魔力を扱う達人となれば、一切体外に流出させずにコントロールも可能だ。
地下世界、通称魔界には魔族もいるし、俺が居た天界には、ドラゴン達も住んでいる。まぁドラゴンは数を減らしもう数頭しか残っていないが、、彼等の魔力は人とは比べ物にならない。
魔力の大きさからして、何人か人の存在を感じる。だが、魔力の波動の出所に向かおうと足を動かそうとするが、もう言う事をきかない。
「もうダメだ限界、、」
その言葉を最後に倒れ伏してしまう。視界が歪み、頭に鈍痛が響き、ボーとして何も考えられなくなる。朧げながらに何かが近づいてくるのを感じたが、警戒感は微睡む意識に溶けて消えていった。
「姫様、人です。」
「人が倒れています」
1人の女性が倒れたアークスに駆け寄って近づいて来る。
「あ、ダメです。そんな無警戒に近づいては!!」
1人の女性が倒れたアークスの元に駆け寄って来る。そっと抱き起こして、口元に耳を澄ます。
「良かった、まだ息がある」
「姫様!」
「ここから遺跡までは直ぐです」
「ここではいつ魔物に襲われるか分かりません、急ぎこのお方を連れて、遺跡でキャンプを張ります」
反論は許しませんとばかりに、周りの数人に指示を出す。