第83話 勇者はじめました
寝娘さんに描いて頂いた神宮葵です!
♦︎ここではない何処か
「申し子が現世に戻り、瘴気を祓っている……」
暗がりの中、小さな声を発する女児、それを聞き道化師は口を大きく開け笑う
「ヒハッアハハハハハ、申し子が瘴気を祓う、ヒハッアハハハハハハハ、なんとまあ面白い、私が、封印から出て直ぐにこんなに、面白い事が!」
道化師は、暗がりの中を身を悶えさせながら踊り狂う。
「━━━アンタは相変わらず煩いね、勇者や魔王はどうなってんだい?」
低い声を出す女
「稀代の勇者は、危険……。単独でドラゴンも倒す。魔王は詳細不明」
「ヒハッアハハハハ! ドラゴンを倒す勇者あああああ! 実に興味深いいいい! 今世は玩具箱のようだなああ」
「コロス━━勇者━━━コロス」
機械的な音声を放つ男は勇者に対し、敵意を燃やしていた。
「勇者は私の獲物だよ、いつの時代もいつの世も」
「━━━なら先にお前を コロス」
睨み合う二人
『辞めぬか。しかし申し子に勇者か、イレギュラー要因と言うのは存外に私を楽しませてくれる、世界を壊し、アルテミスに復讐を━━』
威厳のある声音。この世の邪悪を体現したような存在。
「「「「アルテミスに復讐を」」」」
♦︎
俺達は、アーレイの故郷に行く事になった。アーレイは国に案内すると言ったきり、口を聞いてくれない。目が合うと頬を赤くし目をそらされる。
「はー嫌われたもんだなあ。堺さん恨むぜー」
俺が、堺さんと口にするとアーレイの耳が敏感に反応する。
ラプダの背に乗るのに慣れるとは、俺の尻も中々強くなっなもんだぜ。俺の言葉にラプダは嬉しそうに喉を鳴らす、尻が強くなって喜ぶとは不思議な生き物だ。毎回、出発間際に何処からか必ず現れるし。監視でもされてるのか?
「洋一、前から歩いてくる人の服装って日本の服じゃない?」
蘭に言われ前を見ると、黒髪で、灰色のフード付きパーカーに、黒いサルエルパンツ、黒いエナメルの靴を履いた細身の男がいた。男はこちらに手を振っている。
「あっああ。ラプダ止まれ、おーい、君日本人かあ?」
男は頷いている。結構距離あるのに聞こえてるのか? スキル地獄耳とかか?
俺達は、男の側に行く。
「はじめまして僕の名前は神宮 葵、19歳、宜しく。趣味は悪い奴らを狩る事。悪い奴らハンターはじめました、みたいな?」
冷やし中華始めましたみたいなノリで言われても反応に困るな。ここはお返ししてやろう。
「俺の名前は柊洋一。元鷹匠で今は神のお使い中。邪神を倒す為に、瘴気に覆われた神殿を祓って旅してるみたいな?」
「(口調は、真似しなくていいんじゃない?)」
やられたらやり返さなければならんのだよ!
「なるほどね、邪神ってこれ?」
空間収納から、なにかの首を出す葵
「グロッ! 生首をいきなり出すなよ!」
「ごめんごめん。鑑定した時は、確か……邪神テューポーンって名前だったんだけど、邪神ってコイツじゃないの? 他にもいるのかな?」
えっ? テューポーン倒しちゃったの? あれ? ラスボスかと思ったんだけど
「コイツが、ワッチの両親の仇……」
アーレイが、生首を見つめながら拳を握っている。
「(洋一、私が鑑定して見てもこれは、テューポーンだね。因子もこれで消えるのかな?)」
『因子は消えないぞ。テューポーンの因子は人にばら撒かれた時点で、テューポーンとは無関係に動く厄介な物じゃからな。ウイルスを一個消しても無駄じゃろ? あれと同じ感じじゃ。それにテューポーンは弱っていたからの』
うおっびっくりした、ファンキー爺い、いきなり頭の中で喋んな! 堺さんに声かけられる時ですら、毎回びびるんだからな。テューポーンが元々弱ってたってなんでだ? 誰かが弱らせていたのか?
「なんかテューポーンは元々弱っていたが、テューポーンが撒いた邪神の因子は消えないらしい……はあ。また尻を触って因子を消さなきゃなのか……」
「ブホッ、尻を触って邪神の因子を消すスキルって面白すぎる! アハハハハハハハハ」
いきなり爆笑しやがった。まあ俺だって、他人が尻を触ってお祓いしますとか言ったら、笑い転げる自信はあるが、他人に笑われると凄くムカつく。
「洋一君は、レベル上げとかしてんの?」
「んーいや前は色々と戦っていたけど、最近は上げてないなあ。葵は?」
「僕はLv999だよ、趣味はレベル上げだからね。999になってから、全然レベル上がんないんだよねー。だから、邪神を探し出して倒したんだけどさ。魔王がいないなら、邪神位しかターゲットがいないしね」
999!? こいつ半端ねえな、趣味レベル上げって昔ネトゲやってた時にも居たな。ステータスを、カンストさせる為に、オシッコもうんこも部屋でする奴。彼奴は部屋から出れる様になったのかな?
「葵はウンコとシッコを我慢しながら、戦ってるのか? ボトラーか?」
「えっ? ボトラー? なにそれ? そもそも、そんな事する訳ないじゃん、汚いし」
なんだ違うのか……
「それにしてもすげえな。レベル上げって何年位やってんだ?」
「んー? 向こうに魔王が居たころからだから……何年位たったかな? ハハハ、わかんないや」
えっ? 堺さんが現役の時って事は、葵ってめちゃくちゃ爺いじゃないのか?
「魔王がいた時代? って何百年前じゃないのか?」
「ん? 違うけど? そもそも、この世界のこの時代に来たのはつい最近だしね」
「世界って、えっ? 地球から直で来たんじゃないのか?」
「直って言い方は、どうかと思うけど、僕が最初に居たガイキンカって世界には、魔王がいて、その魔王を倒したら地球に帰れるって、話しだったんだけどさー」
やれやれと肩を竦める葵。葵って魔王を倒したって言ってるが……まさか、マジもんの勇者なのか?
「金髪でオッパイのデカイ姉ちゃんが、急に目の前に現れてさ。邪神とその眷属や、外なる神に命を狙われてるから、助けてって言われたんだよ。巨乳で生意気な時点でマイナスだからさ、断ったら急にブチ切れて、神獣がどうのとか信仰心が無いとか言われて、こっちに飛ばされたんだよ」
アルテミスだ━━。そんなロクでもない事するのはアルテミスしかいない。
「あの金髪の姉ちゃん、急に発狂するから怖かったなー。まあ魔術でお仕置きしはしたけどな」
不適に笑う葵。お仕置きってエロい事かな? 気になる。




