第81話 老人のクネクネは気持ち悪い
「で? ファンキー爺い、なんで覗き見してたんだ?」
『んー暇じゃから』
でたよ、この適当さ。イライラさせるぜえ!
「スキルの発動条件を変えろよ。毎回セクハラになんだろ。下手したら男の尻も触らなきゃいけないし……」
『一度根付いたスキルが、変えれないのは自明の理。変えるとしたら、魂をグチャッとやらないといけないけどやる?』
「やらねーよ!」
なにが魂をグチャッとだよ。隙あらば俺を殺そうとしやがって。
「お前が神か! 許さないのじゃ! どりゃー!!」
アーレイが、ファンキー爺いに向かい、雄叫びをあげながら突撃していった。
『ふむ。なんじゃい、邪神の因子が抜けても儂に攻撃しようとは浅慮な思考じゃの』
ファンキー爺いは、その場から動く事なく指を鳴らした。
パチン
ファンキー爺いが軽く、指を鳴らすと地面から鎖が大量に現れ、アーレイを見事に縛り上げた。あれ、亀甲縛りだ……
。
「ファンキー爺い! やり過ぎだろ、そこまでしなくても良いだろーが!」
『殺そうとしてきた相手を縛り上げるだけに、留めているんだから、優しい対応じゃと思うが?』
正論かもしれないが、相手は子供だぞ……。
「離すのじゃー! お前ら神が悪戯に邪神の力を振り撒いたから! ワッチの両親は死んだのじゃ! 許さないのじゃ!」
アーレイは、ファンキー爺い達の戦いが原因で、邪神の因子が撒き散らかされたと思ってんのか。これは逆恨みじゃないかな。
「アーレイ、ファンキー爺い達が邪神の因子を撒いたわけじゃないと思うぞ」
「粗チンは知らんのじゃ? 此奴らが神魔対戦を始め、それが原因で、邪神の力や加護が人にばら撒かれたのを━━」
神魔対戦って、なんかゲームにありそうだな。堺さんもファンキー爺いも、神界じゃそんな話はしてなかったけど。
「へ? 神魔対戦? 初耳なんですけど、ウホニアさんやケルトさんは知ってるんですか?」
二人は同時に首を横に振り
「いや、初耳だけど」
「僕も知らないなあ。そもそも古代史に興味が無いし、僕が興味あるのは未来だけさ!」
二人とも知らないじゃねえか!
全員の視線が、ファンキー爺いに集まる。
『見つめちゃいやん』
ファンキー爺いが、ポールダンサーの様にクネクネしだした。まじで気持ち悪い、吐きそうだ……。
『神魔対戦ってまた……古い話を持ち出すのう。はっきり言うが時代が違うわ。先ず邪神の加護が遍く人々にばら撒かれたのは、魔王が、戦う気が無さ過ぎたからじゃ。それにテューポンが加護を与えた眷属達を初代勇者と魔王が狩りまくったからの。その事にキレたテューポーンが、初代勇者や魔王がいなくなったこの世界に因子をばら撒いたんじゃよ』
急に真面目に語り出したが、これは後で堺さんに真偽を聞かなければならない。こいつの話は、今一信用出来ないからな。
「なら神は関係ないと言うのじゃ? ふざけるな! 初代勇者や魔王なんて……そんな話、信じられないのじゃ!」
激昂するアーレイ。
『そんな事言われても知らんの。儂は、嘘つかないしー。多分邪神の眷属が、妖族の歴史を歪めたんじゃろーな。妖族は、昔から強かった故に利用されたんじゃろ』
そんなアーレイを意に返さず、扇子を広げるファンキー爺い。その扇子には、思いっきり日本語で秘事って書いてあるんだが……あれ、読めるの俺と蘭だけだよな。
「ぐぬぬぬ!」
相変わらず人の神経を逆撫でするのが、うまい爺いさんだ。
「まあ歴史を歪めた云々は、俺にはわかんねーけど。堺さんと初代勇者の戦いの部分が、ごっそり抜けてるだけなんじゃねえか? 確か堺さんもいきなり邪神の加護が降り注いで来たから、加護付きの奴らを裏から間引いてたって、言ってたし」
邪神の因子を消す仕事って堺さんの尻拭いでもあるのか……なら、気合い入れてやらなきゃだな。
「━━粗チン、今、魔王の事をサカイサンと言ったな? サカイサンの話を聞いたと言ったのは、間違いないのじゃな?」
今までと打って変わって、冷静な声のアーレイ。
「ああ、堺さんは魔王で恩人だからな」
「恩人? 助けられたのじゃな?」
「そうだけど? 今は地球って言う別の世界にいるぞ」
俺の言葉を聞くと、アーレイが急に大人しくなる。
『ウホニアだったかの? 妖族と仲良くしろよ? 元を辿れば同じ獣人じゃからな。もし戦争なんてしたら儂、天罰下しちゃうかもしれないからの』
「この命に変えても、戦争はさせません!」
ウホニアさんとケルトさんが、ファンキー爺いに跪いている。元々戦争なんてする気はなかったろうに、大人だからファンキー爺いに合わせたんだな。
『御主も精進しろよ?』
「うるせーよ! 早くアーレイを解放しろ! ぐったりしてんじゃねえか!」
『ほんとに良いのかの? まあええか、儂は知らんからな』
アーレイは、その場にへたり込み動かない。
「創造神様は、その洋一の力の事で来たんですか?」
『━━鋭いのう、封印の掛け直しに来たんじゃよ。本来なら必要ないはずなんじゃがのう』
ファンキー爺いの手が光り、その光が俺の心臓部を貫く
「グハッ!」
耐え難い痛みに俺は思わず膝をつく。
「痛えええ!」
痛みが身体中を支配する。
「洋一! 創造神様なにを!」
『封印じゃよ、今回は前回より更に強くうったからの。だが神獣ちゃんよ、此奴が憎しみに呑まれたら力は際限なく増大し、容易く封印を破るだろう。夢夢忘れるでないぞ』




