第76話 新しい力は難点だらけ
フーシェンとファンキー爺いの話は終わったらしい。ファンキー爺いは俺に話があると言い、手間抜きをしてくる。
「ファンキー爺い話してなんだよ」
『神殿を建て直してくれたのと、フーシェンの手助けをしてくれた事に関しては礼を言おう。だが神殿を吹き飛ばすのはやめるんじゃ』
あーまだ根にもってんのかよ……。さっきより立派な建物になったろーに。
「はいはい。じゃあ話は終わりだな? バイバーイ」
『待たんかい! そこに倒れてる黒狼の男は、邪神の眷属の末端だぞ? 儂が意識と、邪神の加護は、奪ったけどな』
「え? 蘭もリュイも大丈夫だって、言ってたけど……」
『儂や魔王レベルじゃなきゃ気づかない位、小さい物じゃ。それこそ、遺伝子レベルじゃな!』
遺伝子レベルって無理だろ……どうやって気づくんだよ。
『妖狐の次期女王は、気付いていたみたいだがな?』
えっ? アーレイ気付いてたの? だから変な顔でケルトさんを見てたのか。
『そこで、御主に新しい力をあげるのじゃ!』
「のじゃ」はアーレイ枠だからやめろ、気持ち悪い。
「どうせ、邪神レーダー的な感じだろ?」
ファンキー爺いが、びっくりした目で俺を見てる。
『まっ魔王が、ネタバレしよったのか!』
はあ、こんだけ分かりやすい前振りなのに、わからないわけがないだろ。
『邪神レーダーには、もう一つ機能があるんじゃがのー』
「邪神の因子を消す感じの力か?」
『はー、マジ無いわ。空気読めよ、死ねよ、糞が』
口悪っ! 死ねよ、糞がって……。わかりやすいのが悪いんだろ。俺のせいじゃねえーよ。
『方法は尻を5分間弄るしかないからな。因みにこの国の姫様も、邪神の因子が入ってるからな。せいぜいセクハラで不敬罪にならんようにな!』
唾をペッと吐き捨て、ファンキー爺いは消えて行った。ケイナさんの尻を撫でるのか? 最高じゃないか! ファンキー爺いありがとう!
「洋一、ケルトさんに殺されないと良いね」
そう言えばあの子、俺の事めちゃくちゃ嫌いじゃん! どうすれば……無理矢理撫でるか?
俺が頭を悩ませていると、フーシェンが駆け寄ってくる。
「粗チンのお坊ちゃん、蘭様、リュイ様、本当にありがとうございます! ワテクシ、とても嬉しいです! この神殿を生涯ずっと、護っていく次第でございます! それで、あのマスターを起こして貰えますか? ワテクシ回復術ができなくて……」
蘭を見ると
「とっくに起きてるはずだけど?」
「フッフッフ、ワッチは全てを聞いたのじゃ!」
ひゅばっと起き上がるアーレイ。
「聞いたから、どうした?」
別に聞かれて困る話もしていなしな。
「ワッチは確かに聞いた、嫌がる女の尻を弄る力を得たと!」
あー、一番めんどくさい部分を聞いてたのか。しかも、勘違いしてやがるし。
「それで? お前は、なにが言いたいんだ?」
「不埒な真似はやめるのじゃ! 邪神の力なら、ワッチが消すのじゃ!」
邪神の因子が、関係しているところも聞いてたのか。
「どうやって?」
「それはこれから考えるのじゃ!」
代案なし、はい終了ー。
「消さないとヤバイなら消すけど、ほっといて害があるのか? これまで皆んな平気だったんだろ?」
「因子が覚醒したら魔族になるか、死ぬかの二択じゃ!」
えっマジ? 思いっきりヤバいじゃん、尻を弄るしか無いじゃん……。ケイナさんには嫌われているが、死んで欲しいわけじゃないしな。
「じゃあ俺が消すしかないな」
「ムムム!」
アーレイは納得してないが、早いうちに消さないと大変な事になりそうだしな。
「マスターはややこしくなるから、下がっていた方が宜しいかとワテクシ進言します!」
「フーシェンは、此奴らの味方なのじゃな!?」
フーシェンを睨むアーレイ。
「はあ。アーレイ、因子を消さないと死ぬか魔族なら……迷う必要無いでしょ? 消さなきゃいけないのはわかっているんでしょ?」
『ヨーイチに任せとけば、なんとかなるんだから、ヨーイチを信じなさいよ!』
二人に責められ、縮こまるアーレイ。
「なっなら、せめてワッチも一緒に行くのじゃ!」
なんで、そんなにこだわるんだ?
「まあついてくるのは構わないけど」
「うむ! ワッチに任せるのじゃ! ━━魔族にさせては絶対にダメなのじゃ……。父様も母様も……」
風が吹き、アーレイの声を途中からかき消す。
「なんだ? なんか言ったか?」
「なんでもないのじゃ!」
アーレイはそう言うと、ケルトさんに馬乗りになり
「起きるのじゃ! 起きるのじゃ! 早く、早くメイドのとこに行かないと……!」
アーレイが凄く焦ってるが、なんでだ? 別にゆっくり行っても間に合うだろ? 館からそんなに離れてないし。
「おい、やめろって。なにしてんだよ……」
俺は、アーレイをケルトさんから引き剥がし、フーシェンに引き渡す。いきなり気絶した相手を叩くなんて、なにをそんなに、焦ってんだ? とりあえず、蘭にヒールをかけて貰い、ケルトさんを起こす。
「ケルトさん、起きてください。館に戻らないと」
「うっうん? あれ? ヨーイチ君瘴気はどうなってえええ! なんだいこの建物は?」
新しい神殿のインパクトに、ケルトさん目をまん丸にして驚いてるな。
「フーシェンの新しい家であり、神殿です。神様からの贈り物ですよ。今まで一人で神殿を護ってきましたからね」
「そっそんな事が! 僕は何故気絶していたんだ! チックショオオオ!!」
ケルトさんの絶叫が、こだました。




