第60話 愛の力
蘭の魔法陣を使い、天界から離れ下界に戻る。俺達の家は何も変わらずそこにあった、よかった━━。
『あれ? もう帰って来たの? ダメだったの?』
リュイが不思議そうな顔で、俺と蘭を見ている。
「ん? ちゃんと加護も貰ったし、紗香さんにも会えたぞ? 紗香さんと光一は、天界で修行だってさ」
『えっ出た瞬間に戻って来たけど……ねえねえ、その、ヨーイチの服を掴んで、涙でぐしゃぐしゃな女の子はアナスタシア様?』
天界とじゃ時間差があるのかな?
「えっああ。アナスタシアが、天界には行く場所も帰る場所も無いからって言うから連れて来た」
アナスタシアは、まだ泣いている。アフロディテ様に、頼まれたから仕方なく連れて来たが、旅には連れてけないよな? ステータスだけで見たら、俺以下だし。
『あれー帰って来たんだ。うわっ魔王の加護が付いてるよ、うわーきったねー』
バーニアが俺を見て、まるでゴキブリを見たような反応をする。この野朗、堺さん呼ぶぞ。
『ヨーイチ強くなったの? 久々にステータス見せてよ』
「そう言えば、しばらく見てないな。蘭ステータス見せてー」
「はいはい。今出すね」
柊洋一
13歳
職業 遊び人
種族 人間? ケダモノ
称号 権力者にだけ強い (神威無効、精霊王覇気無効)
レベル10
体力200
魔力 0
攻撃力100
防御60
素早さ40
運520
スキル
雷耐性小
炎耐性小
精霊視(※精霊に加護を貰えた時のみ、精霊と会話をしたり精霊の姿が見える)
精霊魔術(精霊の力を借りて、魔術を放つ。※ただし精霊との信頼関係が無ければ発動しない)
テイマーLv1 (Lvに応じてテイムできるモンスターが変わる)
加護
雷精霊の加護
炎精霊の加護
女神アナスタシアの加護
女神アマルナの加護(加護を発動すると、攻撃と防御が100上がる。※ただし30分に金貨一枚無くなる)
堺さんの加護(効果不明、封印中 ※堺さんの許可無しには発動しない)
エロスの愛(エロスの愛が詰まっている)
久々にステータス見たら、かなり上がってるじゃないか! 堺さん達から貰ったスキルもあるし!
「ウヒョヒョヒョ!!! 最高だぜえ!」
『ねえ、蘭この堺さんって誰?』
「魔王。私や洋一の恩人です」
『げえっ! 本当に魔王の加護なんだ……』
『なんか、加護の後ろに変なのがついてる。僕、初めて見た』
『ほんとだ! アマルナ様の加護は30分に金貨一枚かかるし、魔王の加護は封印中だし……下の方にあるこれなに? エロスの愛? エロスの愛ってなに?』
「あっほんとだ、加護の項目から外れた場所にエロスの愛って出てるわね」
「なんだよこれ! エロスの愛が詰まってるしか出てないし、最悪だよ! くそお!!」
やられたよ! ちくしょうめ! 加護の項目までしか、見てなかったよ。あいつ、芸が細か過ぎるだろ! 愛が詰まってるってなんだよ!
「流石はエロス様。鋼のストーカー精神だね」
蘭! 感心してる場合じゃない!
「そうだ! リュイ、バーニア、精霊魔術を使いたいんだけど、協力してくれないか?」
『僕はパース』
『アタチは良いよ! そのつもりだったし』
リュイは、相変わらず優しいが、なに利用してるみたいで申し訳なくなるな。バーニアはダメか。まあ元々俺を警戒してるし、魔王の加護に対して、嫌そうにしてたしな。
「リュイ、良いのか?」
『ヨーイチが、倒れた時何も出来なかったし……。神界にも一緒に行けなかったから……今度は、力になりたいの!』
「ヨーイチ帰って来たか、とりあえず工房に来い! お前の装備ができたぞ。お前が、寝とる間に完成したんじゃ。全く、装備も持たんでいなくなってからに」
「うっしゃあー! 新装備!」
♢ エレン工房
「これじゃ、先ずは刀じゃ。レッドドラゴンの爪と牙とミスリルを使って、精錬した豪華な刀だ!」
エレン爺いに手渡されたのは刃渡り50cm、一般的には脇差と呼ばれる長さの刀。今の俺の身長だと、それでも少し長い位だ。パーフェクトボディの地球の俺なら普通の刀でも取り回しがきくのに……!
刃の部分は紅く輝いていて、鍔の部分は卍字の形にして貰った。なんとなく卍字の形にしたが、紅い刃に映える!柄はシンプルに黒にして貰った。柄頭には鳥を彫ってもらっている特注品。
「すげえ……上手いこと言えないけどやべえ! 手になじむ、じつに、じつになじむぞおお!!」
「よしよし。後は鎧だな」
赤と黒色で纏められた鎧、肩は蘭が乗れる用に革になっている。
「うおー!! かっけえ! ヘルムは!? ヘルムは!?」
「あるぞ、ほれ。だがこれ全部装備するのか? 重さ的には大丈夫だが……」
2本の黒い角の装飾を施した、ヘルムが渡された。
「ひゃっはー!! これだ! これだよ! 某ハンターみたいだ!」
『ヨーイチ、角が生えてオーガみたい!』
ふっ! まあ女子供には分かるまい。この装備の素晴らしさがな……!!
「ヨーイチ戻ってるの!? 師匠、ヨーイチに悪趣味なヘルムを被せないでください。もう直ぐ晩ご飯だから片付けしてくださいねー」
そう言うと、レイ先生は、ヘルムを俺から没収し台所に行ってしまった。
「あっああああ!! 俺のヘルムがあああ!」
『無い方がかっこいいよ! ね蘭?』
「あのヘルムを被った洋一には、近づきたくないしね」
あんまりだああああああああああ!




