第49話 青いツナギの良い男
ファンキー爺いさんと俺は睨み合い、見つめ合いやがて恋と愛が……って芽生えねえよ! ホモじゃないんだよ!
『芽生えないの? 残念じゃなー。とりあえずこんなところじゃなんだし、儂の部屋に行くかの』
パチリ
ファンキー爺いさんが、指を鳴らすと、一瞬で、空間が切り替わる。
純和風な部屋、畳や箪笥や掛け軸と懐かしい場所。庭にはししおどしまである。
ん? ここ見覚えがあるぞ?
「おい、ファンキー爺いここはまさか?」
「ここはまるで洋一の師匠の家そのものだね」
なんで師匠の家? ファンキー爺いの部屋じゃないのか?
『ホッホッホまあ、いいじゃろ。とりあえず、座ってお茶を飲もう』
いいじゃろじゃねえよ! こいつ、なんでなにも教えてくれないのに余計な事ばかりするんだよ。理解もツッコミも追いつかねえよ!
「紗香さんやエロスや光一やアナスタシアは、どうした? 連れて来たのは俺達だけか?」
『まあいいじゃろ。アルテミスの話じゃが、魔王、御主も興味あるのかい?』
またまあええじゃろかよ、それに魔王? 堺さんがこっちにいるわけないだろ。
「ん? 堺さんは地球だぞ。堺さんが居るわけないだろ」
『いやー。流石にバレちゃうか』
俺の背後から、背後霊の様に堺さんが現れた。どっかの囲碁漫画の守護霊みたいだ!
『いやー囲碁は難しくて覚えられなかったよ。でもでもオセロなら僕強いよ〜!』
『儂も儂も! オセロなら強いよー!』
オセロを始める二人。
だめだボケが、渋滞している! 処理できない!
『創造神様さー。話を進めないと柊君の頭が、壊れちゃうよ。あっ元から……』
元からって! 堺さん壊れてねえよ! 俺は玩具じゃないんだよ!
『うむうむ、先ずは、地球とアナスタシアが管理していた、イシスカディルの他にも、世界は無数にあるのはわかっているじゃろ?』
「まあ地球と、イシスカディル? がある時点で、他にもあるとは思うが……それに貧乳女神や、エロスの世界もあるんだろ?」
『うむ。だが神の数には限りもある。兼任して管理しとる者もいるんじゃが、色々大変なんじゃよ。だが、アナスタシアはちょっとやり過ぎじゃ、干渉し過ぎて、世界のバランスを崩しかねないレベルじゃからな』
「そんなに干渉してたのか?」
『転生者や転移者に、大き過ぎる力や、装備を与えたり、不用意な神託等━━。まっ御主にも、思い当たるじゃろ?』
ファンキー爺いさんの言葉に、思い当たる節があり過ぎる。
「俺の知ってるだけで、俺を魔王認定した事や、光一の装備、豪爺いや、もう1人のチート爺いさんか?」
知ってるだけで、4件もありやがる。ギルティだな。
『それ以外にも、それはもう色々と沢山あるんじゃよ。だからリストラしたの』
これは擁護ができない、リストラされて当然だ。本来なら訴訟レベルだぞ。
『以前から、ちょくちょくあの女神様は召喚してたからねえ。世界に歪みが、出来るレベルで』
『魔王、御主を倒そうとして、一時期躍起になってたからのー。良く誰を差し向けても倒せないべやーって叫んでたし』
倒せないべやって、どんな訛りだよ。
『ハッハッハッハ! チートスキルを与えられただけのガキンチョに僕が負ける訳ないじゃないか』
快活に笑う堺さん、青いツナギ姿が眩しい。
『御主は、規格外、過ぎるんだよねー。職業魔王のくせに、アナスタシアが、下界に行っていない時にちょくちょく神界に遊びに来るし』
堺さん適当過ぎるだろ。職業魔王って絶対に履歴書に書けないな。
『僕は、強いし自由だからね。たまーに転生者や転移者でチートスキルが厄介な子も居たけど、僕がちゃんと地球の輪廻の輪に戻してたんだから良いじゃないか』
さらっと地球人の殺害を公言したぞ。正当防衛に入るのかこれ?
『途中からさあ……。邪神に、眷族達が振り回されてめんどくさかったけどね』
『あの世界の邪神は、長く神獣が足りなかったから、強くなり過ぎておるからの。アルテミスも手を焼く訳じゃな』
困った様に笑う、ファンキー爺いさん
アルテミスが手を焼くって、それじゃあまるでアルテミスが、邪神全体を管理してる様な言い方じゃないか。
『アルテミスの話は、もうお終い〜。知りたいなら強くなってからだの。今の御主に話しても何の意味もないからの』
「待て! 俺の毛を戻せ!」
『あちゃー。柊君まだ諦めてないんだねえ』
『毛? 御主髪は生えとるじゃろ……。あー元の身体に戻りたいのか? 戻してもいいけど死んじゃうけど良いかな?』
「えっ? 戻ったら死ぬの?」
『やっぱりかー。死んじゃうレベルの呪いだったかー』
堺さんが、外人の様なリアクションで肩を竦めている。
『だから御主は、その身体で生きて行くしかないのじゃ!』
のじゃじゃねえよ! めちゃくちゃ良い笑顔でサムズアップしやがって。 のじゃ爺いは、ただの爺いだろ!
「洋一、毛は置いておいて。地球に帰りたい転移者を帰す事はできないんですか?」
『出来るよー。地球での最後が生きているならね。瀕死ならもちろんそのまま死ぬ』
「やっぱりそうでしたか……」
蘭はその可能性に気づいていたのか。
「マジかよ! どうにもなんねえのかよ!」
『あの方法なら行けるんじゃない? とんでもなく条件が厳しいけど』
『魔王、御主鬼畜じゃの』
嫌な予感がするが確かめなければ
「もしかして、邪神を倒すとか?」
『ハッハッハッハ、大正解!』




