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第47話 恋する乙女?


『とうっ! 僕とヨーイチ君の、愛を邪魔する下賤な無乳は、何処のどいつだーい!?』


 ゲッ! もう戻ってきやがったのかよ。貧乳女神がぶっ飛ばして星になったと思ったのに。


「おい、エロス! 人聞の悪い事を言うんじゃない。それに貧乳女神にも乳はある。無乳ではない、訂正しろ」


 全くこの阿保神は、貧乳であって無な訳ではない。確かに揉んだりはできないかもしれないが、女性に対して失礼すぎるだろ。


『あんたも、充分失礼なんだよ!』


「いてっ! 俺、フォローしたよな光一!?」


「ノーコメントで」


 ノーコメントってどこぞの芸能人か! 事務所に許可取らなきゃ、なにもできないってか!?


「はあ。洋一ちょっと静かにしてて、あの私達紗香に会いに来たんですが」


「そうだ! 紗香さんに会いに来たんだ! エロス、紗香さんは何処だ!?」


『えっ? ああ、最近そこのアナスタシアの変わりに、神になった子? 今試練の真っ最中じゃない? よく知らないけど』


 こいつ! 鼻をほじりながら適当に答えやがって!


『あんた、興味ない事に適当過ぎるやろ』


 貧乳女神よもっと言ってくれ、この適当モンスターに!


『だってさあ、僕の担当する世界じゃないしいー。まあヨーイチ君の縁者なら調べてもいいけど?』


 きっきもい! ここぞとばかりに、点数稼ぎにきやがった! くねくねしながら指を加えるな! 俺と、目があったら頬を赤くしやがって! 恋する乙女か!


『そう僕は、恋する乙女さ!』


『乙女やなくて男やろ。で? 神になった子に、会いに来てどないするん?』


「本人の意思確認をして、帰りたいなら連れ帰る」


 俺の言葉にエロスと貧乳女神が揃って、頭を抱える。


『一度選ばれたら拒否なんて、できんのや。そもそも神に選ばれるなんて、幸運中の幸運なんやで!』


『創造神様の決めた事は、覆らないしねえ。こればかりは、愛するヨーイチ君の為でもダメダメさ』


「あっそ、まあ紗香さんのところに連れてってくれよ」


『いいよ』


 エロスが、素直に頷いたのを聞いて、貧乳女神がめちゃくちゃびっくりしてる。


『えっ!? あかんやろ! あんたなにキメ顔で返事しとんねん! アホちゃうか!』


「あのエロス様、宜しいんですか?」


『神獣ちゃん、あのねヨーイチ君が家族に会いに行くのを僕が止める訳ないでしょ? 止めたら嫌われちゃうし』


 既に嫌いと言うか、果てしなくキモいんだが、まあ良いここは成り行きに任せよう。


「よし、エロス案内せよ!」


『ハハー!』


『ウチはもう知らんからな、ヨーイチ”金貨次第”や忘れるんやないで!』


 金貨次第? どう言う事だろ? お金で紗香さんを引き取れるのか?


「なんだかわからないけど、了解した!」


 とりあえず、俺は放心状態のアナスタシアを背負う。蘭は俺の肩に乗っている。


「軽っ!」


 アナスタシア、軽すぎだろ。


『じゃあ、ヨーイチ君の家族がいる、試練の間へご案内〜』


 エロスがそう言うと、瞬きする間も無くあたりの景色が切り替わる。


 辺り一面には色とりどりの花が咲いている。小川もあるし小鳥のさえずりすら聞こえてくる。ここが天国か?


「おわっ! なんだここ? 花畑?」


『ここで試練かあ。中々きついなー』


「知っているのかエロス!」


 普通に聞いたつもりが、某ダンボールに隠れるゲームの名言みたいになってしまった。ちょっと恥ずかしいな。


『性欲を持て余す』


 こいつ、知ってやがる! 俺達にダンボールまで、配りだしやがった。エロスは性欲を持て余してないで、むしろ無くして欲しい。切実に願う。


 俺と光一とエロスは、ダンボールを被り移動する。あたり一面の花畑だから、ダンボールがめちゃくちゃ目立つ。


「エロス、ダンボールがめちゃくちゃ浮いてるぞ? 隠れる必要があるのか?」


『特に無いけど、雰囲気だよ。雰囲気』


 俺達は、無言でダンボールを捨てた。


「洋一君? それに蘭ちゃんや光一君まで、どうしたの?」


 聞き慣れない凛とした声。聞いた事がない声の筈なのに、俺には直ぐに誰かわかった。


「紗香さん!」


 声の方へ振り向くと、巫女装束を見に纏い、白髪に赤い目、八重歯特徴的な美少女の紗香さんがそこにいた。


「紗香さん、お元気そうでよかった!」


そう言った光一が、震えながら涙ぐんでいる。


「半年ぶりですよね? 俺ずっと光ながら寝てたみたいで」


 なんだか照れくさい。


「心配したのよ? 試練中は下界の様子が見えないし、貴方は無茶ばかりする子だから」


 そう言って、微笑みながら頭を撫でてくれる紗香さん。ちょっと恥ずかしいが癒される。


 チラッと横目でエロスを見ると、また鼻をほじってやがる。感動の再会が一気に台無しにされよ、ちくしょう。


「洋一君が、背負ってる子は確かアナスタシアちゃんだったかしら?」


「そうなんですよ。エロスやら貧乳女神に会ってから、ずっと気絶してて」


「蘭ちゃん、大丈夫なの?」


心配そうに、蘭に聞いている。多分ヒールが使えるからだな。


「ヒールもかけたし、多分プレッシャー的なものだからそのうち起きるわよ。それより紗香、貴女喋れるようになったの?」


 紗香さんが、喋れるって当たり前だろ……ん? あれそう言えば、文字でのやり取りしかしてなかったような? 光一も、めちゃくちゃびっくりしてる。さては、こいつも気付いてなかったんだな。


「ええ、試練を受ける前に話せる様にして頂いたの」


「えっとおめでとうございますでいいのかな? いいんだよな? よかったー! 紗香さんとちゃんと話ができるなんて!」


「本当ですよ! しかもこんな綺麗な声だなんて素晴らしい!」


 光一と俺は、大はしゃぎだ。俺がはしゃぎ過ぎてアナスタシアを落っことしたのは不可抗力だろう。


「2人ともうるさい。本題なんだけど、紗香は向こうに戻る気はあるの?」


「それは……」



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