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第43話 〜後編〜 お帰り


『柊君、君の身体は向こうに戻ったらいつもの子供に戻っちゃうけど良いよね?』


 突然、堺さんがとんでもない事を言い出した。


「えっ? 良くないですよ?」


 良いわけないだろ、毛がなくなるんだぞ?


『良くないって言われてもまあ、ここでの話は夢だと思ってよ』


 そっそんな、俺の毛がまた失われてしまうのか……! 酷い、酷過ぎる、あんまりだ! どうにか毛を護らないと! 毛を全力でガードだ!


「堺さん魔王なんですよね?」


『魔王だよ?』


「毛、生やせますよね?」


『かぎりなーく、無理かな』


 かぎりなく無理らしい……。困ったどうにかしないとまたあの毛がない、寂しい人生に戻ってしまう。


「ピエロって強いですよね?」


『本気を出した蘭ちゃんよりは弱いけどね?』


 くっくそお! 蘭で勝てるなら交換条件にならないじゃないか!


「洋一!」


 蘭が急に隣に現れたから、俺はびっくりして尻餅をついてしまった。あっ良かった、オシッコは漏れてない。


『わー、ここまで割り込めたか。蘭ちゃん、凄いチートだな。スキルをフル活用したのかな?』


「貴方は!」


『フッフッフ誰かわかるか「堺さんお久しぶりです、洋一を助けてくれたんですか? ありがとうございます」あっうん、君も驚かないんだね』


「地球にいた時から他の人と違っていましたから」


 あーだからか。蘭が堺さんを警戒してた理由は。


『野生の感的な奴かな? 柊君が毛を生やせって、ごねてて困ってるんだよ』


「堺さんどうにか毛を……」


『スキルと毛ならどっち?』


「毛!」


 スキルなんていらん! 毛だ毛!


『うわあー。蘭ちゃんこれどうしたもんかね?』


「洋一、助けて貰ったのに堺さんを困らせないでよ。それに皆んなも心配してるから帰るよ?」


『蘭ちゃんも、苦労してるんだねえ。柊君、君の力は今はまだ眠っている、いつ発現するかはわからないけど、力にのみ込まれない様にね?』


「いつ起きるかもわからない、寝坊助な力に俺は負けませんよ!」


 辺りが輝き始める。


『後はそうだね、こことあっちじゃ時間の流れがかなーり違うからね。それとピエロや邪神に負けないでね? 負けちゃうと地球もピンチだから宜しくねー!』


「えっちょ! 堺さーん!」



「堺さーん!!!! ぶべっ!」


 痛い! 敵襲か! 頭が割れる!


『いっ痛あああああ!』


 俺の頭に大衝撃を与えたのは、アナスタシアの額だった。


「アナスタシアか? 何でそんな位置に頭を差し出してるんだ? 頭突きされたいのか?」


『貴方から魔の気配がしたからよ! でも大丈夫そうね』


 魔の気配? ああ堺さんの事か?


「それは、堺さんのせいだな」


『サカイさん?』


「現魔王で地球在住で猟師の堺さん。俺の命を二回も救ってくれた優しい人だよ」


『はっ!? まっ魔王!?』


 アナスタシアが驚き過ぎだろ


「まーその話は良いや。今は夜か? 俺どんくらい寝てたんだ?」


『666日』


「へーなるほどか、666日かあ。長かったなあってそんなに!?」


 目を逸らしたな。その感じは嘘確定だ。


『うっそー! ぎゃあああああ! ちょっとしたお茶目よー!』


 無言でアナスタシアにアイアンクローをする。


「で、何日だ?」


『180日です、地球で言えば半年くらいかな?』


「ちょっと堺さーん! 最後の方に時間の流れがどうとか言ってたのはこれかー!」


 堺さんめ、最後の最後でとんでもない爆弾を落としていきやがった。まあ救われた身だから仕方ないけど、半年も寝てた割に全然衰えてないのは何でだ?


「半年寝てた割にはめちゃくちゃ元気なんだけど……なんでだ?」


『知らないわよ。貴方の身体、半年感ずっと光ってたわよ。地球人は光るの?』


「発光してたの!? 覚醒の為になんちゃらって言ってたけどそれかなー。まあわからんし、どうでも良いか」


 蘭が俺の元に飛んできた。


「洋一起きたのね、身体は堺さんが護ってくれてたのよ。直ぐに洋一に会いに行けなかったのも、ガードが固すぎて破れなかったからだし」


「堺さん、なんでもありだな。そのうち堺さんなら仕方ないって言われるレベルだな、蘭、皆んなは元気?」


 蘭は、窓の方へ視線を向ける。バーニアを灯りがわりにしたレイ先生や光一やエレン爺いが覗いている。バーニアがいれば懐中電灯いらずだな。


「皆んなお久ー! 俺的には、さっきぶりなんだけど」


 ガシャン


 レイ先生が窓を突き破り部屋に突入してきた。ドアから入ればいいのに。ガラスで怪我してないかな?


「ヨーイチ! 良かった起きたのね……もう心配させて」


 涙目のレイ先生に抱きしめられた。


『ふぎゃ』


 レイ先生と俺の間からカエルを潰したような声がする。


『ヨーイチ! アタチを待たすなんて! 寂しかったじゃない! うえええん!』


 俺の胸ポケットから出てきたリュイが、抱きつき泣いている。


「ごっごめんな? えっとあのただいま?」


 レイ先生が、さっと身を離し部屋の隅に行く


『ヨーイチのばかあああああ!!』


「あぎゃあああああああああああああ!」


 リュイの電撃の威力はましましだった。


「光一も元気してたか?」


「あははは、相変わらず洋一君は凄いね。僕は元気だよ、レイさんに最近は鍛えて貰ってるんだ」


「まじかよ! 畑仕事は!?」


「ちゃんとやってるから大丈夫だよ」


 レイ先生の特訓を受けながら畑仕事までしてるのかよ、光一ってすげえな。


「光るのはもう終わりか? 光ってる間は夜も鍛治ができて便利だったのに」


「エレン爺い、俺を電球の様に使ってたのか?」


「でんきゅう? それは知らんが明るかったし、蘭から許可は貰ってたからな」


 この爺い、悪ビレもなく俺をライト扱いしてやがった。


「蘭も蘭だよ、許可すんなよ」


「あはは、蘭さんは洋一君が倒れてからずっと心配してたんだよ? 助けられる方法がわかるまで鬼気迫るいきっあべひゃ」


 光一が蘭にぶっ飛ばされて、ドアから飛んでった。光一生きてるかな?


「蘭、ありがとうな。だけど光一は、回復してあげてね?」


 蘭は、照れてそっぽを向いている。あれは蘭が嬉しい時だ。初めて害獣駆除が成功して、俺が褒めた時もああしてそっぽを向いてたっけな。


 なんだか、懐かしいな。

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