第42話 邪悪なおっさん
まさかの、紗香神爆誕でアナスタシアがお払い箱に。こうなるとこいつ、他に行くあてあるのか?
「アナスタシア、お前行くあてとかあるの?」
『神界に戻れないとなると━━ないかな……。えへへ』
やっぱり行くあてがなかった。こうなると、神の技すら使えないただの村娘のアナスタシアを放置するわけにはいかなくなってしまう。はあ、面倒だな。
”洋一君ここに置いてあげれないかな?”
紗香神にも言われてしまったし仕方ないか。
「わかりました、そのつもりでしたしね。蘭、とりあえずアナスタシアの家を造って、そこにいて貰おう。とりあえず畑仕事を手伝わせよう」
「アナスタシア様、それでいいですか?」
『住ませて頂けるなら、畑仕事でもなんでもやります!』
蘭に土下座してる、俺が家主だぞ。まあいいか、畑仕事仲間が増えるのは、ありがたいしな。ただレイ先生やエレン爺いに見えないのは、すごく不便だな。
「まー爺いさんが来たらその時は諦めてくれ。あれはどう考えてもアナスタシアが悪いし」
『ひっ、そっそうですよね。そこはもう諦めます、出来たら彼が来たら逃がしてほしいなーなんて』
めちゃくちゃ震えてる、マナーモードかよ。キレた豪爺いとかめちゃくちゃ怖そうだしな。
「話はしてみるが、多分無理だぞ。見つかったら最後だ」
『ですよねー』
アナスタシアが遠い目をしていやがるな。確か殺せるのは神様限定だから、今のアナスタシアは殺せない気がするけど。これは黙っておこう。気づいたら調子に乗るだろうから。
「アナスタシア、邪神とか邪神の眷族のピエロみたいな奴って知ってるか?」
『ピエロって、赤いツケ鼻つけて白塗りで身長180位で金髪で、めちゃくちゃ気持ち悪くてやばい奴?』
「そうそう、いやに具体的だが知ってんの?」
『知っていると言うか、前回の魔王討伐の時に現れて前回の勇者が大分手を焼いていたのよ。時空間を移動するとかで、その時の勇者も倒しきれなくて封印が精一杯だったと思うけど……』
うげ、魔王を倒せた勇者が、倒せない奴かよ。めちゃくちゃ強いじゃねえか。時空間移動ってラスボスかよ。
「そいつ封印解けてるぞ。地球人連れてたし」
『ゲッ、異世界召喚まで出来るなんて……あちゃー』
こいつあちゃーって言いながら目がきょどりだしだぞ、挙動不審ってレベルじゃないくらい目が動いてる。
「とりあえず知ってる情報を話せ」
『多分、旧支配者の誰かの封印が解けちゃったんだなーって。私の神気がなくなっちゃって、それで出てきたのかなーなんて』
「旧支配者?」
確かいあいあがどうとかこうとか、なんとかポテト? みたいな感じの奴だったかな?
「あー洋一。名前は言わなくていいからね。フラグになりそうだし」
『だから私言ったじゃないですかあ、私の力が無くなると世界がやばいって』
確かなんかわーわー言ってた気がするな。
「あれ、マジだったのかよ。もうちょっと真剣に言えよな。で神気を戻す方法は?」
『わかりません……。神界に戻れば探れたけど、戻れないし……。もうどうしていいか、私にもわかりませんよ。とほほ』
とほほじゃねえよ、事態はかなり深刻だよ。魔王よりもピンチだよ、世界がピンチで俺達もピンチだよ。
「邪神の申し子については?」
『申し子ですか? 邪神って子供産むんですか?』
きょとんとした顔で聞き返してきやがった、使えないってレベルじゃねえぞまじで。
「はあ、現状進展無しか。とりあえず、あのピエロは蘭が本気にならなきゃやばいレベルだしなー。うーん、とりあえず畑仕事するか」
「この流れから畑仕事に行こうとする洋一に、私はびっくりだよ」
『私、頑張ります!』
とりあえずアナスタシアもやる気はあるみたいだし、畑仕事を教えよう。
痛っ頭が痛いな……。
「はあ。とりあえず私は、結界の強化とアナスタシア様の家を造りますね」
「おーい、リュイ畑仕事すっぞー! 買ってきた食材もあるけどきっちり収穫しないとな!」
『はーい、お菓子食べたら行くねー』
リュイがお菓子を食べながら適当に返事をする。
「お菓子食うより先に畑仕事! 畑仕事最優先! お菓子没収するぞ!」
『えーひどーい!』
光一は来なかったが、俺は、アナスタシアに畑仕事を教えながらリュイと一緒に収穫していく。
「ヨーイチあの、街での話聞いたけど大丈夫?」
畑仕事をしていると、レイ先生が申し訳なさそうに俺に聞いてきた。
「いやー武器屋はオカマでかなりびっくりしたけど、尻を撫でられた位だし大丈夫ですよ」
「ヨーイチ、そうじゃないでしょ? 同郷の人を助けられなかった事が辛いんでしょ? ちゃんと言わなきゃだめよ?」
レイ先生の言葉が突き刺さる。
「あー。リュイや蘭から、聞いたんですね、正直不甲斐ないばかりです。俺が強ければ、俺が手を掴んでれば助けられたかもしれないって思うとこうきついなーって」
『あれはヨーイチのせいじゃないでしょ! 私やバーニアも動けなかったし』
「一番近くに俺はいたんだよ! 手を伸ばせば届く距離にさ。だから次は絶対助ける! あんなDVピエロ糞野郎の側には置いとけないしね!」
レイ先生は、俺を抱きしめ頭を撫でてくれた。
「ヨーイチは偉いね、だけどあんまり無理しないでね? 皆んながいる事を忘れないでね?」
レイ先生の言葉はいつも暖かく俺の心を包んでくれる。
泣きそうになる、でも今日は鎧なしなので、感触がダイレクトだ。邪悪なおっさんも顔を出してしまう。
「ふひっ」