第35話 憧れの城下町へレッツゴー
探検には先ずは王城からだな。王城の中にはお宝があるのが相場だし、案外伝説の武器とか隠してるかも知れん。けしからんから頂いておこう。
「じゃあ桜さん、案内宜しくお願いします。俺や蘭やリュイは、この城の事をなにも知らないから思いついた場所を言うんで、行ける場所なら連れてってください!」
「(なんでその態度を王様の前でしないんだか……)」
蘭、うるさいよ! 案内して貰うんだから当たり前でしょ!
『ヨーイチ先ずは何処行くの?』
「先ずは罪人がいる牢獄だろ? 後は爺いさんの部屋、大臣の部屋、姫の部屋、後は宝物庫だな!」
『なんで、大臣やあのお爺いちゃんの部屋に行くの?』
「大臣の部屋には不正の証拠があるはずだし、爺いさんの部屋はきっとレアアイテムがあるはずだからな!」
『なるほどね!』
「あのー全部ダメでござるよ?」
「『えー!!』」
まじかよ、お城のイベント全部ダメって酷過ぎる。ゲームとかならツボ割りまくれるのに。
「じゃじゃあせめて、囚われの姫がいる塔には行けますよね?」
「誰も、囚われてないでござる。それに罪人は即奴隷に落とし、鉱山送りが鉄則。重罪人は直ぐに首を跳ねられるからいないでござるよ。因みに姫様も病死してるでござる」
牢獄も無いのかよ、免罪だったらどうすんだ?
「仲間加入に、ハーレムイベントもなしかあ。そしたら見所は城にはないな」
「(ヨーイチ、桜を困らせないの。街には、探索者ギルドや武器屋とか薬屋とか色々あるでしょ)」
「おー! じゃあスラム街は?」
「貴族街と平民街が分かれてるだけで、スラム街は無いでござる」
「腹空かしたガキがいないならよし……」
俺は小さい声で呟いた。蘭やリュイは、一瞬目線をこちらに向けたが気づかないふりをしてくれた、良い仲間だよお前らは。
「あっ桜さん質問、質問。奴隷はいるんだよね? 犯罪者だけ? 免罪とかないの?」
「罪を裁く魔道具、まあ嘘発見期があるでござるよ。だから免罪は無いでござる。犯罪者以外の奴隷は、この国にはいないでござる。裏ではどうかわからないけど」
「子供が犯した罪でも奴隷になるの?」
「罪状によるでござる。窃盗や殺人は鉱山奴隷いきでござる。年齢は関係ないでござる」
やっぱりか……。子供に更生するチャンスもないのか、やっぱ異世界はクソだな。
「(洋一、他の話をしたら?)」
そうだよな。今考えても俺には、なにもできないしな。
「桜さん、王都にはどんな人種がいるの? 今んとこ人しか見てないんだけど」
「この国にはエルフもドワーフも獣人もいるよ。お爺いちゃんの側近の人は、狼の獣人のラウルさんとエルフのセリムさんだし」
「あれ? その2人俺見てないけど」
『ずっと、アタチを値踏みするように見てた失礼なエルフと、天井から蘭を警戒してた獣人ね』
「うげ、まじかよ。全然知らんかった」
天井から見てたって、見ようによっては敵前逃亡一歩手前じゃないのか? 野生動物は、強者が分かると不用意に近付かなくなるのと同じなのかな?
「リュイを値踏みしてたのは、リュイが可愛いからだな」
『ばっバカ! ヨーイチのアホ! くらえ!』
「あぎゃああああああああ!!」
なんで電撃を撃ってくるんだよ。せっかく褒めたのに。兵士さん方が何事かと集まって来たじゃないか
「あーなんでもないですから、お気になさらず」
俺が直ぐに起き上がり手を振ると、「雷が効かないなんて奴は化け物?」「ゾンビ?」「変態?」「マゾ?」等、失礼な会話が聞こえてくる。
「あー!!」
ゾンビの真似をして声を出したら、兵士達がクモの子散らす様に逃げていった。
「ぎゃー!!」 「くさーい!」 「きもーい!」「マゾやろー!!」
臭いキモいって、それは流石に失礼だろ。
♢アスベルク王国 城下町
城下町の地面は、石畳で舗装されていて、家はレンガ作りの壁、典型的なRPGに出てきそうな感じだった。見た事がない模様の看板の店、多種多様な人種。俺とリュイは、キョロキョロと辺りを見回している。田舎者丸出しだが気にしない! だってゲームの世界みたいなんだもん!
「すげーなんか映画のセットやゲームの中みたいだ」
「そうでござるな、私も初めて見た時は感動したでござる」
蘭はおすましモードだな。
『ねえねえ、アポがある! あそこの果物屋に行こう!』
リュイがはしゃいでいる。でもいきなりアホってなあ……。アホな店って、大丈夫なのか?
「あほ? あほな果物屋があるのか?」
『アポだってば! ヨーイチ知らないの?』
「この世界の食い物なんてほぼ知らねー。色々食ってみるしかないな!」
魔物は食った事あるが、野菜系は蘭が作った日本産の奴だしな。
「蘭ちゃんも大変でござるな」
「桜、大変なのはこれからよ……。あの2人のテンションが、徐々に上がってるわ。トラブルを起こさないように見張らないと」
2人が保護者目線で語っているが、それよりも異世界の果物だ!
「おばちゃん! アホ、アホくれ!」
蘭が、大きくため息をついている。
「人を指差してアホとはなんじゃ!」
何故か頭を引っ叩かれた、なんでだ?
『ヨーイチアポよアポ、おばちゃん指差してアホアホってそりゃ怒るわよ、普通に失礼じゃない』
「すっすみません。あのアポが欲しくて」
俺は、慌てておばちゃんに謝罪をする。リュイめアホって言ってたじゃないか。
「お金は持ってるのかい?」
おばちゃんに優しく聞かれて、気づいた。俺はウサギ大臣なだけで換金をしていなかった。だからこの世界のお金は持っていなかった。
「お金? 桜さんヘールプミー! お小遣いが無いと遊べない! 後で角払いするから!」
「あっあはは……これは大変でござるな……」