第236話 童貞には貫けない厚い壁
リーさんはマーラを呼び出すために、地面に魔法陣を描いている。マーラを呼び出すって字面だけみたらとんでもないよな。だってマーラだぜ? 確かちんちんの邪神がいたような……。
リーさんが魔法陣を描き終わると、魔法陣に魔力を注いでいる。結構な量の魔力を入れてるな、魔法陣が光り始めたぞ?
『出よ、始祖たる精龍人よ!』
魔法陣からピンク色の光が立ち昇り、半透明ななにかが出てくる。
『えっ? ちょ待っ! いきなり召喚とかねえから! インターホン押すか、ノックしろよ! 今ちょっと立て込み中だから!』
めちゃくちゃ突っ込んできた。インタホーン知ってんのかよ。さてはこいつ俺と同じ元地球人だな。
『まじないわあ……あーちょっと着替えてくるから、5分後に呼び出してね』
『あっはい……』
リーさんが魔法陣に魔力を注ぐのを止めると、ピンク色の光が消えて、半透明のマーラが消える。
「リーさん! 従わなくて良くね? 彼奴真正の馬鹿だよ? 5分とか待たなくていいから。しかも元地球人だし」
『なんと! 旦那様と始祖が同類とな!?』
「だからマーラって名前を嫌がってたんだな。まあ元地球人なら、マーラなんて名前嫌だろうな」
待てよ? 嫌なら改名とかできないのか? ステータスとかある世界だと難しいのか?
「なあなあ、リーさん改名とかできないの? 俺の国なら国に申請すればできるんだけど」
『改名? 旦那様のいた世界では、そんな事が出来のるのか? 自分で如何に名を変えたり名乗ろうと、初めに付けた名前は死んでもかわらないが……』
「あーなるほどな。とりあえずマーラ呼ぼうぜ」
『いやしかしまだ対して時間が経っていないが……』
「いいからいいから。大丈夫だから」
『しかし……まあ旦那様がいいと言うなら。出よ始祖たる精龍人!』
あれ? 今度は出てこないな。抵抗してるのか? ピンク色の光は出てるんだが……。
そうだ! 引きずり出してみよう。
「出て来いってーの!」
光の中に手を突っ込むと、なにかの感触がある。
『なっ!』
リーさんがDB張りのリアクションで驚いているが、この際無視だ。
『おわっ! なんで掴めるんだよ! こっちは霊体だぞ? 頭いかれてんのか!』
おお、引きずり出せたな。黒髪に赤い眼、中国の武術家が着るような道着に、赤い尻尾。眉毛太っ! 眉毛太いのイケメンとか腹立つな。
『次代の次に呼び出すとか舐めてんの? って言うかここ龍の巣でもないし、なんでこんな森に呼び出してんの? 呼び出す場所とか考えらんないの? ラスボス前に呼び出すでしょ? 神殿とかで可愛い女神がさあ! なんで次代のEDに呼び出されなきゃいけないんだよ! こっちは風呂入ってたのに!』
出るわ出るわ文句の嵐。
「うるせえ! 龍化について教えやがれ! なんで霊体の癖に風呂入ってんだよ!」
『はあ? 霊体だってお風呂に入りますー! 地球の常識とかまじ寒いんでやめてもらえますう? ここ異世界なんでー』
うっうぜえ! なんだこいつ、めちゃくちゃムカつくぞ。
『異世界なんだから、ゴーストだって歩きますー。リッチだって、自我が芽生えますう。妖国には妖怪だって沢山いますう! だって俺が召喚したんだからー!』
妖国? 召喚? こいつなに言ってんだ?
「は? 妖国の人が召喚獣だって言うのかよ!」
『はあ? 今の世代は知らないけどーオリジナルは俺が召喚したんだよ! こっちに知恵が無い生物だらけだったからな! どうだ崇めたてやがれ!』
こいつが元凶であんな恐ろしい国が産まれたのか!
「くらえ! 必殺 塩アタック!!」
『ぎゃああああ! って清められてない塩で効くか! なにすんだこの野朗!』
「ならば物理だ! 必殺洋一パンチ!」
『効くわけねえおげええええ!』
塩アタックはダメだったが、物理的には戦える様だ。これなら簡単に尋問できそうだな。
「フハハハハ貴様に霊体と言うアドバンテージはないようだな! さあ龍化の方法を吐きやがれ!」
『人を無理やり呼び出して、ぶん殴って質問するとかいかれてんのか? まあ別に良いけど。気合いを入れます、はい終わり』
俺はマーラの頭を鷲掴みにする。
『痛ったたたたたたたたた!!! 離せ!』
「それ以外の方法を教えてくれ」
『だからさっきから人に頼む態度じゃないんだよ! それ以外なんて、童貞でEDの君には無理だよ!』
「なんでだよ! お前もEDだろ!」
『俺は精龍人になる前に済ませてんだよ! 精龍人になったらEDになって……それからは一回もできなかったけどな!』
まっまさかその方法って……
『気付いたようだな! セックスだよセックス! 童貞や処女のまま精龍人になったら、一緒そのままなんだよ! だから龍化もできませーん!』
「あっあああああ!!!」
俺はマーラを乱暴に突き飛ばし、蹲り泣いた。俺は一生童貞でEDと言う消えない呪いを受けてしまった……。
『そっそもそも精龍人になった時点で、精霊魔法や龍魔法使えるんだから、龍化の必要ないだろ? だからなっ? 元気出せよ?』
『あっあのマーラ様、旦那様は魔力が0で……』
『へっ? 魔力0? うわあ……』
「おぎゃあああああああああああ」
俺の泣き声が虚しくこだました。




