第235話 信号機マン現る!
後ろからする声はゾッとする様な色気を孕んでいる。しかし深淵ってなんだ? 邪神系の力はノーサンキューなんだけど。
「あら? どうしてかしら? 深淵が馴染まないわ。うーん、魔力が0だからかしら。……まあ0になにをしても0だもんねえ。どうしたものかしら」
0になにをしても0ってそりゃそうだけど、知らないお姉さんからもディスられるなんて……闘気も霊力もなにも変わった感じがしないしなあ。
「そうねえ、不思議な子。オーラも受け付けないし、受け入れたのが、闘気と霊力だけ……神力はどうかしら?」
「ワスもお前も神力なんてないじゃろ」
「ちょうど女神が2人いるわよ? 男神もいるみたいよ? 男神の方は結界の中にいるから、取り出せないけど」
━━ドサドサッ
「『キャッ!』」
今の悲鳴は、紗香さんとアナスタシアか!?
『ちょっとなんであんたがここにいるのよ! 六華のとこに帰りなさいよ! そろそろ産まれるわよ』
なんで母さんの名前が?
「ひゃっひゃひゃっ。その産まれてくる、孫の世界を護る為に協力しなければならんじゃろ? ワスの孫が戦うなら祖母として力添えしなければな。アナスタシアは相変わらず老けんなあ」
『老けんなあって女神なんだから当たり前でしょ! それよりなんで魔女がいるのよ!』
「私わあ、桜華に着いて来ただけよ。正直世界がどうなろうと、それが天命なら従うまでだしねえ。でもこの子は気に入ったわあ」
頭に柔らかな感触が広がる。俺の神経よ、全ての力を頭に集中するんだ! 感触を忘れない為に! パイの力をオラにホギャッ!
アナスタシアあああ! 動けないからって横腹に蹴りを入れやがったなあああ!
『鼻の下伸ばすんじゃないわよ!』
固定されてんだから伸びるわけねえだろ!
「あっあのそれで、アナスタシア様と私が呼ばれた理由はなんでしょうか?」
「ひゃっひゃひゃっ。新しい女神はアナスタシアと違って物静かじゃな。さあ孫に神力を注ぐんじゃ。深淵の力や魔力やオーラは何故か、孫の器に入らん。こうなったら、神力でも入れてみようかと言う結論に至ってな」
蘭の羽音が聞こえる! 蘭この悪魔の実験をやめさせてくれ! 闘気やら霊力やら深淵やら、お腹いっぱいなんだよ!
「洋一に神力を入れて大丈夫なんですか? なんか本人は嫌がってますけど」
「ひゃっひゃひゃっ! 大丈夫じゃ! 闘気も霊力も受け入れたのじゃ! さあ女神達よ、やれい!」
やれい! じゃないんだよ! なんなんだよこの婆ちゃん、って俺の婆ちゃんなのか……アナスタシア達が来てから孫呼びに変わったし……。色々入れられて、爆発とかしないよな? 混ぜるな危険的な感じで。
『仕方ないわね、紗香やるわよ。世界の為に……』
アナスタシア! なにを言ってるんだ!
「洋一君の力になるなら……やりましょう」
ちょっと紗香さん! やりましょうじゃないよ! なんでどうして止めてくれないの!?
助けて蘭!
「洋一の命は大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃ。魔女もいるし、女神もいるんだからな」
「それならお願いします」
お願いしますじゃなああああい! それならってなんだよ! 命さえ助かればなんでもありかよ!
「『いくわよ!』」
2人の手が背中に添えられ、暖かい力が流れ込んでくる。これは気持ちいい、マッサージを受けてるみたいだ。
『結構入るわね……紗香最大レベルで力を入れるわよ!』
「はい!」
背中が熱くなって来たぞ? 大丈夫なのか? なんか腹がぐるぐるしてきたし……これは便意か? このまま動けないと、主人公が脱糞すると言う非常にヤバイ絵面になるんじゃないのか?
「あの洋一がうんちしたいみたいなんですけど……」
蘭、ありがとう! トイレに行かせてくれえ!
「ほっぽい! これで便意は消えたはずよ?」
おっおお、便意が消えた。流石ボイン魔女!
『もっと力を入れなさい!』
「はい!」
力を入れなさいじゃねえ! また便意がきたあああああ!! ヤバイヤバイヤバイ! なんなんだよおおお!
「またあ? ほっぽい!」
これは精神的にキツいぞ? 便意が消えてはまた出てくる、これを延々と繰り返すのは新手の拷問だぞ?
「おや孫の身体が……」
俺は進化前のポケットの中のモンスターか! って言うか身体がどうなったんだ? 誰か説明をしてくれえええい!
『入れられるだけ詰め込んだわよ……女神2人分の神力をね。身体が崩壊しないだけ凄いわよ』
身体が崩壊しないって、崩壊する恐れがあったのかよ。そうなる前に止めろよ、熱血的な感じで力を入れてたけど。
「よし、拘束を解くぞ?」
ウギっ!
「痛たたたっあっ声が出た。って言うか大丈夫なのか? なんか色々混ぜてたけどさ」
「大丈夫じゃろ生きてるし、とりあえずハッって感じで気合いを入れてみい」
ハッって感じってどんな感じだ? とりあえず力を入れてみるか。
「ふんっ!」
俺の身体から、赤と黄色と青の光が僅かに漏れ出る。
「おっなんか出た」
「洋一、信号機みたいだね」
信号機だと? 確かに赤黄色青の光って……頭が赤、お腹が黄色、足が青……これは完全に信号機だな。
「ひゃっひゃひゃっ。信号機力と名付けよう」
「嫌だよ!」
なんだよ信号機力って、信号機の主人公とかかつてないダサさだろ! そんな主人公見た事ないぞ!
「これで戦えるのか?」
「ひゃっひゃひゃっこれから使いこなす修行が必要じゃ」




