第234話 謎の婆ちゃんはノリが良い
封印系も回復系もスキルもダメ。こうなりゃスーパー精龍人とかになれないのかな? 金髪になって周りからバチバチしたりとか、霊力を撃ったりとか……あっ!
「なあなあ、魔力以外の力ってないのか? 霊力とかオーラとか気とかさ!」
『あんたねえ……オーラってなに? 気ってなに? 霊力はまあなんとなくわかるけど、あんた霊力なんてあるの? 霊力あったら幽霊とか見える筈だけど』
「はい! 霊力はいりません! ちょっと外行ってくるわ」
『あっちょっと! 待ちなさいよ!』
うーんアナスタシアも煩いし、ちょっと外に出て考えるか。皆んなには魔力やスキルがあったり、弛まぬ修行をして得た力や技がある。だけど俺には鷹匠としての修行しかしてないからなあ、武道なんて習った事ないしな。
フラフラと考えながら歩いていたら、結界の端まで来てしまった。思いつかん、なんかないかなあ……。バトルもんなら覚醒イベントがあるけど、俺の覚醒イベントって……邪神になりかけたり、ダメだろくな事がない。
「もし、そこの悩める少年よ。御主力が欲しいか?」
俺は願うみんなを護れる力が欲しいと
「ああ……神に負けない力が欲しい」
「ならばくれてやる!」
「これが新しい力って……! なにやらすんだよ婆ちゃん! って婆ちゃん誰!?」
いつのまにか目の前に現れた婆ちゃんは、白髪で、びんぞこ眼鏡に柔道着の様な服、木の杖を持つ仙人スタイル。結界があるはずだよな? なんで入ってきてんだ?
「およよ? 力が欲しいんじゃないのかえ?」
およよってアラレちゃんかよ!
「神と戦うんじゃろ? ならこのキャサリンの技が役に立つぞい?」
「キャサリン? こんな和風テイストな婆ちゃんなのに、名前がキャサリン? パツ金グラマーじゃないキャサリンは、ノーサンキューだけど」
婆ちゃんが俺の前から消える。いつの間にか、俺の後ろに立っている、魔眼でも追いきれないスピードって化け物か?
「早っ! 人間か!?」
「あひゃひゃひゃ。人間だよ、正真正銘な。さあ修行をしよう」
修行? 痛っ! 背中に激痛が……なんなんだ!?
「あひゃっひゃひゃっ痛かったかの? 先ずは少年の力の淀みを解消した。次はのう、これ見えるか?」
婆ちゃんが杖を目の前に突きつけてくるが、杖が見えるだけでなにも……あっハエだ。
ハエが杖の先に近付いた瞬間、溶けて消え去ってしまう。
「ハエが溶けた!?」
「あひゃっひゃひゃっ。力は見えないか……ならば、せいっ!」
杖を頭に押し付けられると、押し当てられた場所がじんわりと暖かくなる。
「なんか暖かいような感じがする。ちょっちょっと婆ちゃん……さっきのハエみたいに溶けるんじゃ!」
「溶けはしないよ、あのハエならほれそこに」
ハエが杖から出てきたのか? 正直ハエだと区別はつかないんだが。
「まあハエの話はいい、少年は集中力が足りんなあ。闘気の暖かさを感じられるなら、見込みはあるぞ。さあ修行をしよう」
修行? ってなにするんだ?
「先ず禅を組むんじゃ」
禅ってなんで知ってるんだ? とりあえず言われた通りにしてみるか。なんか、この人には逆らっちゃいけない気がするんだよな。
「そうじゃそのまま動けない様に、少年のツボを突く」
動けない様にって痛ええええ! まじで動けないぞ! トイレとかどうすんだこれえ! また声がでねえ! 俺の喉になんか怨みでもあるのかよ!
「次にワスの闘気を少年の身体に入れる」
闘気を入れるって、ツボ押しだけでも痛かったのに大丈夫なのか!?
「微動だにせんとは……既に死をも覚悟していると……なんと言う気概! 流石じゃい!」
微動だにせんって! お前がツボ押したからだろーが! 俺は動きたいんだよ! 逃げたいんだよ! 反論したいんだよ!
「死の話をされても、声も出さないとは……これはワス以上の大物になるな」
関心してる場合じゃねええ!
「行くぞ!」
やめてえええええええええ
俺、心の準備ができてないからああああ!
「こりゃすごい……! ワスの闘気がどんどん入っていく!」
どんどん入っていくってなに? どんどん入ってきてるの? そんな感じしないけど、大丈夫なんだよ?
「まだまだ入るだと……!?」
いやなんだと? みたいに驚いているけど、こっちは全然なんともないぞ。そもそもなんで俺に闘気を入れてるんだ?
「こりゃ凄い……。よし闘気の他にもどんどん詰め込もう」
えっ……?
「闘気の次はワスのありったけの霊力じゃ!」
それってアナスタシアが言ってた幽霊が見えると言う……いっいやだ! それはいれないで!
「これも沢山入るのおー」
あたりに黄色や白い光の玉が溢れていく。あっこれ、テレビでカメラを通すと映るオーブとか言う奴じゃないか? 待ってくれ、俺お祓いとかできないから、俺に助けを求められてもなにもできないから!
「ワスの霊力、ありったけもってけえええ! きええ!!」
目ん玉ひん剥いてんじゃないよ! 目の前で老婆が目ん玉ひん剥いてみろよ、ホラー映画よりもお化け屋敷よりも怖いぞ。
「はあ……はあ。凄い器じゃ……後はそうじゃのう。魔女よなにかないか?」
「ふふふふふ。この子にも深淵の導きをあげるわ」
深淵の導きってなに? 後ろから知らない人の声がするんだけど、幽霊か? 幽霊なのかああ!?




